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アニメ『BANANA FISH』もいいけど『吉祥天女』もね。って、このフレーズの響きを懐かしむ昭和臭…

高山真2017.12.25

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 その作品に全幅の信頼を置いている漫画家のひとり、吉田秋生の『BANANA FISH』が、2018年にテレビアニメ化されるとのこと。来年の楽しみがひとつ増えました。願わくば、ワンクール(3ヶ月)で終わってしまうのではなく、9~12か月くらいは放送してほしいものです。

 現在、吉田秋生が連載を続けている『海街diary』をこよなく愛していることは、たぶん以前にも書いたことがありますが、私にとって吉田秋生作品、特に『BANANA FISH』は特別。この間おしゃべりした20代の知人が『BANANA FISH』を知らなかったので、「アニメから入ってみるのも素敵ね。原作にも興味が出てくるんじゃないかしら」と、軽めにオススメしてみたり。

『BANANA FISH』の連載がスタートしたのは30年以上前だから、いまのお若い方々が知らないのも無理はない。私だって自分が10代とか20代前半のときは、自分が生まれる前の作品に関しては、「あまり読んでいない」と断言できるような状況だったし。私にとってマンガは、映画や小説とくらべてはるかに「同時代性」みたいものが好みに影響してしまう分野のものでもありました。「リアルタイムで流行っているものの中から『マイベスト』を見つけるのが自然」なものだったわけです。

ま、そうは言っても、おばあちゃま(私は最近20代のゲイの子たちにこう呼ばせています)のお節介がきっかけで、「自分が生まれる前のマンガにも、こんなに面白いものがあるのか」と思う若い人が数%でもいたら、それはそれで嬉しい。そのくらいの熱量でリコメンドするのが、さじ加減としてはいちばんいいかしら…と。もう「オルグ」の時代じゃないしね。

 そんなわけで、人生で何度目かの「吉田秋生強化月間」に突入している私。『BANANA FISH』だけでなく、手元に置いてある吉田秋生の作品を再読することに熱中しています。その中で「やはりこれは永遠に残しておきたい名作ね」との思いを新たにしているのが『吉祥天女』。未読の方がいらしたら、ぜひお手に取っていただきたい。

 単行本なら全4巻、文庫本としては上下巻の短い作品だから、内容をかいつまんで言うのは難しい。かいつまむまでもなく、ほぼほぼすべてを言ってしまいそうだから。

ただ、ひとつだけ言うならば、私は『吉祥天女』も『BANANA FISH』も大好きなのですが、『吉祥天女』のほうが、より「哀しみ」を感じてしまうのです。

『BANANA FISH』の主人公(のひとり)であるアッシュという少年、そして『吉祥天女』の主人公である小夜子には、共通点があります。それは「子ども時代、美しすぎるほど美しかったゆえに、性的に傷つけられ続けていた」こと。そして、「人を殺し続けている」こと。

そして相違点は…。読んでいる私にバイアスがかかっている可能性も大いにあると認めますが、小夜子の周りで起こる殺人(あるいは人の死)のほうが、背すじに冷たいものがより走るのです。「殺した人数であれば、はるかにアッシュのほうが多い(小夜子は、実は直接的に手を下していないパターンも多い)」にも関わらず。

もう1点、相違点を挙げるとするならば、「アッシュは、心から信頼できる対等な相手である英二と出会えたけれど、小夜子は最後までそういう相手に出会えたようには思えなかった」こと。小夜子に影のように従っている雪政は、なんというか「バディ」ではありません。加えて言えば、誰よりも小夜子の「理解者」になりえただろう遠野涼は、物語のラストで死を迎えます。

 小夜子のほうが、より「怖い」(あるいは底知れぬ)存在として描かれつつ、同時に、「孤独」な存在として描かれている。もちろん、『吉祥天女』のラストにもカタルシスはあるのですが…。

 って、ここまでで私ったら、物語の内容を「かいつまんで」どころではない勢いで話してしまいました…。相変わらずダメな書き手です。ここからは、ぜひ読んでお確かめいただきたいなと。

『BANANA FISH』も『吉祥天女』も、マンガ史に残すべき傑作であり、アッシュも小夜子も、マンガ史に残る傑出したキャラクターだと私は思っています。吉田秋生という傑出した書き手から生まれた、魂の双子のようなふたりのキャラクターを味わいつつ、2018年の訪れを待っている私です。

みなさま、どうぞよいお年を。

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