なんとなく、「ユノに会いたい」ってよく口走ってしまう。そりゃ、「会う」ってことは実際そもそもないんだけど。軍隊でユノはどうして過ごしているんだろうか、元気だろうか、辛い思いをしてるんだろうか、してないんだろうか、そもそもどんな日々を過ごすんだろう軍隊ってとこでは。いろいろなハテナがあって、ただ思いをはせる、てことしか今のわたしにはできない。
とは言え、実は思ったよりも、彼の姿は露出していて、それにもわたしはすごく戸惑った。すごく戸惑う。彼は軍隊で「軍楽隊」に所属していて、各地の小さなイベント会場などでステージに立ち、歌ったり、踊ったり、司会をしてみたり、芸能人のユノとしての姿を、軍隊の一員として披露することがあり、インターネットにはその写真や動画が出回る。
一応、彼の元気な姿、彼の歌い踊る姿を、がんばる姿を、わたしたちは垣間みることができる。あくまで軍人として、がんばる彼の姿。しかも、例えば小さな田舎街の、小さなステージに立つユノの姿を、現地に行けば驚くほど近い位置で見ることが出来るようで。芸能人だけど事務所の保護のない、軍人としてのユノの姿は、ある意味とても無防備にさらされている。
東方神起であるユノと個人としてのユノ、それを分けるのはとてもむずかしいと思う。軍隊に勤めるユノは、韓国の一国民としての、個人としてのチョンユンホだけど、その「東方神起のユノ」としてのスキルや知名度は、彼の軍隊での役割にだいぶ大きな影響を及ぼしているようだ。そんなのは本人や韓国の人たちにとっては当たり前に想像できてたことなのかも知れないけど、わたしは最初すごく度肝を抜かれた、びっくりした。そして、すんごいショックだった。初めて軍人としてユノがステージに立つのを見たとき。ユノが所属する部隊のある地方都市の、とある公園の小さな野外ステージのようなところで、ユノが文字通り、歌い踊らされているのを見たとき。胸が締め付けられて、思わず目をそらしたくなった。なにこれ。彼がこれまで必死に命すらかけて築き上げて来たものが、こんな風に簡単にお粗末に、軍隊に、国家に消費されてしまうの?そんなことあっていいの?軍隊に属するってこういうことも起こるものなの?
そんなことまで思いが及んでなかった・・。恐ろしい。「国家」って恐ろしい。「権力」って恐ろしい。もちろん、彼のスキルが正当に評価されて、それが軍隊の仕事として役立てられるってことなんだろう。けどそれはなんのためかって言ったら、お国のため。彼の歌やダンスは、何十万って人々を幸せにするものであって、軍隊のイメージアップや正当化のためのものでは決してない。ユノや、ユノの歌やダンスが国家に所有されるなんて、ほんと耐えられない。そんな安いもんじゃない。やめてー、って叫びたかった。頭を丸めた姿を初めて見たときや、軍人である彼の姿を見たとき、それに輪をかけてさらにもっと悲しくて辛いことだと思った。
実際、毎日軍隊の訓練をするだけではなく、軍楽隊として音楽に触れていることができ、時には軍隊としてであってもステージに立ってお客さんを喜ばせると言う仕事をするのは、彼にとって悪いことじゃない。そして、軍隊がどうしてもやらなくてはならないことであると考えれば、その機会を、自分の経験のひとつとして前向きに捉えて、学べることは貪欲に学ぶ、とか、あるいはそこでユノの歌に癒される人もいるだろうし、新しいファン層が増えるかも、とか、そんな風にもちろんメリットもあるんだろう。
だけど、どうしても、軍人としてステージに立つ彼を、それも意味のあることだとか、わたしは思いたくない。やっぱり、軍人であるユノの姿を見ることが悲しい、ってことに変わりはないし、軍隊経験も意味があるなんてことは、絶対にほんとは違う。命令であれば、東方神起の曲を披露することも、そして、敵を攻撃することもするのが軍隊でしょ?そんなもの理解したくない。軍隊を肯定するようなことは絶対したくない。健気にがんばる彼らをもちろんいつも応援してるけど、彼らが一生懸命であればあるほど、それが今は軍隊に属するものとしてである限り、その全ては国家に絡めとられる状態にあるってことが悲しい。
軍人としてステージに立つユノ、敬礼するユノの姿をわたしは、嫌だけどちゃんと見て、心に刻んで行こうと思う。もちろんかっこいいから、じゃない。たしかにあんな風に頭を丸めて変な制服を着てても、ユノがきれいな人であることに変わりはないかも知れないけど、強制的に軍隊に肉体も精神も時間も奪われているユノの姿を、この世界がいかに暴力的なのかを、わたしもユノと同じようにきちんと見つめないと。戦争や武器なんていらない世界を、平和な世界をって、願うだけじゃなくて、それはわたしたちの毎日が、わたしたちのひとつひとつの選択が作り出すのだってことを自覚しながら。そして、もっともっと心からの笑顔を見せてくれる、わたしたちファンのためにステージに立つユノに再び会えるのをとにかく待つ。