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嵐の松本潤とHey! Say! JUMPの伊野尾慧に見る、「ノンケの姫」現象について

高山真2015.12.14

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 体調を崩して入院がちなここ数カ月なのですが、それにしたってコラムの更新の感覚の開きっぷりたるや…。推定4人の読者のみなさま、本当に申し訳ありません。自分なりに今後も頑張っていきますので、ひとつ何とぞ…。

 さて、あたくしの周りにはさまざまなセクシュアリティの友人たちがいまして、ノンケのオトコ友達も当然います。入院中もあれやこれやと差し入れてくれたり、外出許可が出たときはお蕎麦だったりお魚だったり、体にやさしい食事を出してくれるお店を押さえてくれたりします。ゲイの友達やオンナ友達とは割り勘のほうが心地いいあたくしなのですが、オトコ友達との食事では、彼らに全部まかせっきり。一度「あたくしも払うわよ」と言ったのですが、彼らは彼らで「姫はいいから」と、それを許しません。

 ここまで読んで不思議に思った方もいるでしょう。薬で代謝が狂った影響とは言え、座ると洋梨のような体型になる40代のオカマをつかまえて「姫」…。言うほうも言うほうですが、受け入れるほうも受け入れるほうです。まあ、出会ったとき彼らは20代で、30を少し超えるくらいだったあたくしも今よりも20キロ痩せていた、という部分もありますし、最初に「姫」呼ばわりされたときから、それはすでに「ギャグ」として機能していた部分も大きかった、と言い訳はさせていただきましょう。彼らが言う「姫」がギャグになっていなかったのは、あたくしのパートナーが突然死してしばらくの間、彼らが本気であたくしのことをケアしようとしてくれていた時期のみです。

 まあ、当然ですが、ノンケのオトコ友達の中にもあたくしを「姫」呼ばわりしない人たちはおりまして、彼らは「姐さん」呼ばわりが主流です。「姫グループ」と「姐さんグループ」の違いは何か、と考えてみましたが、「姫グループ」の人間たちは、贔屓目に見ても相当ルックスがいい。彼ら自身が(自慢話ではなく単純に経験談として)話す、オンナたちとの恋愛遍歴もかなりのものです。

「姫グループ」も「姐さんグループ」も、あたくしのことを別に「美人なオンナ」として認識しているふうでもない(繰り返しますが、あたくしはラ・フランス体型の非女装です)。あたくしのほうも、「姫グループ」の誰かと肉体関係があったわけでもありません。「姫グループ」の人間たちとあたくしの間に、セクシュアルなものは存在していないのです。

「姫グループ」の人間たちは、同じグループにいるはずの人間の中から『姫』的な存在を選びたがる。ホモセクシュアルな場ではなく、ホモソーシャルな場においての「姫」。これは、あたくしの周囲だけで起こる現象なのだろうか…と思っていたら、さすがはジャニーズ、あたくしの周りなどよりも何億倍もハイクオリティな形で存在していました。嵐の松本潤です。

 3年くらい前、『嵐にしやがれ』で、マツコ・デラックスが「松潤問題」を提起しかけたことがありました。「ほかのメンバーには、極端な話、すれ違いざまにズボンの前をペロンとさわることができるけど、この人(松潤)にはできないのよね…。それをやっても(松潤が)怒らないだろうってのは知ってるんだけど。この感覚はなんなんだろうと思って」みたいな感じでマツコが話し、しかしそれは解明されないまま次の話題に進んでしまったのですが、今となってあたくしは、「見目麗しいノンケの中には、『王子』ではなく『姫』的な意味でのアンタッチャブル感を備える人が出てくるものなのかしら」という思いに至った、と言いますか。

 知り合いでもなんでもないのですが、小栗旬も相当モテてきたことは、さまざまな分野からあたくしのところにも漏れ聞こえています。その小栗旬も、どうも見た感じ、松潤には「超仲のいいノンケの友人」からもう一段、ソフィスティケートな扱いをしているような。

 ホモソーシャルな空間(つまり、セクシュアルな欲望をまったく混ぜ込まない空間ということです)で、同性の「美」を素直に称賛するのは、恋愛強者だったノンケオトコたちのほうが圧倒的に多い。これは断言してもいいと思います。恋愛弱者だったオトコたちでそれができるのは、非常に頭がいい人間に限られるのではないかと思います。「知」が「嫉妬」を超えるほどの地頭のよさ。「人間って大なり小なりアンドロジュノスかもしれない。人によって割合が違うだけで。マコトくん見てるとそう思う」とアタシに言ったのは、驚くべきことにゲイでもオンナ友達でもなく、ノンケのオトコでした。ただし、「クリエイティブな分野で大成功していて、その忙しさと人見知りな性格ゆえに独身。しかしそんな自分自身の境遇に対しては、ルサンチマンを抱くでもなく、超フラット」という、「ゲイ」とか「さばけたオンナ」といった「ザクザクいる人たち」などよりも非常に希少種なオトコではありますが。

 嵐のメンバーは5人が5人ともまったく違うキャラクターで、それがファンの間でも割ときちんと5等分な人気になっているのが非常に面白いのですが、ほかのメンバーのファンをやってる人たちも「嵐の中に『姫』を置くなら、松潤」ということには同意していただけるのではないか、と。

で、「松潤はノンケの姫」的な意味で、「誰がその地位を継ぐのか」という問いを出されたら、間違いなくHey! Say! JUMPの伊野尾慧だと思います。あの子は逸材中の逸材です。

 数か月前、千原ジュニアが『にけつッ!』という番組の中で、ある収録で一緒になった伊野尾慧のことを、「共演した人の中に女の人もおったけど、群を抜いて可愛かった」「家賃払ってあげたい」「美味しいものを食べさせてあげたい」「ひかんといてね。ちょっとゴチョゴチョしたい」と話していたのを見たことがあります。千原ジュニアは「若いころからの根っからの恋愛強者」ではなかったことが容易にうかがえるルックスです。モテるようになったのは、たぶん仕事がある程度うまくいって使えるお金ができてから(社会的・経済的な強者になってから)だろう、とあたくしはふんでいます。「ちょっとゴチョゴチョしたい」というコメントは、「恋愛強者としてのキャリアが浅い分、この感情が湧き出ている源が、ホモセクシュアルなものなのかホモソーシャルなものなのかが、いまいち自覚しきれていない」ことによるものでは、と勝手に推測していたりするのです。

 ジャニーズ事務所のタレントが恋愛強者であるかどうかは知りません。職業柄、一般人ほどには恋愛を謳歌できていなかっただろうし。ただし、恋愛強者たる必須条件の「ルックス」は十二分に備えて生まれてきた子たちばかりです。そんな美形たちが百人単位で、「ジャニーズ事務所」という、日本の芸能界の中で圧倒的にホモソーシャルな空間(「ホモセクシュアルな空間」ではありませんよ。この違いは大変重要です)に籍を置いている。なかなか凄いもんだと思いますが、そんな子たちの間でも、伊野尾慧の「姫ポテンシャル」は飛びぬけているようにあたくしには見える。たぶん、ジャニーズ事務所のタレントたちの間では、千原ジュニアのような「ゴチョゴチョしたい」という勘違い抜きで、伊野尾を愛でている動きがあるんじゃないかしら。

…なんて言いながらも、あたくしは正直言って、ジャニーズの若い子たちは「テレビでちょっと見るくらい」の知識しかありません。「いやいや、すでにジャニ内部では○○××くんが『姫』になっている」という事実をご存じのジャニオタの方がいらしたら、ぜひ教えていただきたい。お勉強させていただきます。

 最近のあたくしの個人的生活に端を発した「ノンケの姫」問題。こうして考えてみると、あたくしの周りにいるルックスのいいノンケたちが、ちょっと可哀想にも思えてきます。洋梨体型の40代ゲイを『姫』として扱わざるをえない。「いい災難」というほかに何が言えるでしょう。「アンタたちのいままでの人生で、きっちり見目麗しいオトコがいたらねえ…」なんて同情は、死んでもいたしませんが。ほほほ。

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