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「まんが道」

茶屋ひろし2015.03.24

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毎日いそがしくて読むひまないわ、と思いながら、つい買ってしまう本やマンガですが、そこだけメンタルが充実しているような気がします。
先日ふいにその時が来たかのように、電話で『まんが道』を全巻注文してしまいました。
文庫で買うのはねぇ、と店にある豪華本を眺めながら、一冊1800円掛ける10巻か、とこの半年くらい決めかねていました。
私が子どもの頃、この店で一日中床に座り込んで読んでいたのは、「藤子不二雄ランド」というB6サイズのシリーズでした。それが復刊ドットコムという出版社から復刊されていることは知っていました。けれどそれも10年前の話、電話をすると、1巻だけ在庫がないといわれました。
まあいいわ! と勢いで残りの22冊を頼んだ後に、豪華本をセットで買うのとそんなに値段が変わらなかったことに気がつきました。
こういう出費を、なぜか給料日前にしてしまうのはよくあることです。
読み始めたら、台詞の8割にびっくりマークがついていることに驚きました(!)。
あと、ちょいちょい挟み込んでくる美女は、うわさのしずかちゃん現象でしょうか。ぽ、ぽぽー、と顔を赤らめる主人公たちに笑いました。
それにしても絵がうつくしい。ずっと私は、藤子不二雄でいえばFさんの絵がきれいで、Aさんはちょっときたない、と思っていました。
「まんが道」の、人物や情景描写のぐいぐい伝わってくる様子に、私は何もわかってなかったわ・・、と事務所の机で突っ伏しました。うつくしさとは熱量であった・・、なんて。
最近では、吉野朔美さんの見開き(90年代の作品です)にもやられましたが、やっぱりマンガはすごい、漫画家になりたかったなんて嘘でももういえない・・と、今後は粛々と買い続けることにしました。
ちなみにいまは弓月光の『瞬きのソーニャ』(集英社)にはまってます。主人公のソーニャは、何がそうなのかよくわかっていませんが、「逆」しずかちゃんだと思います
かように、漫画界は昔も今も変わらずお祭り状態なのに、ウチの店では売り上げが落ち続けています。当店では、一般書籍とは別の階でコミック専門店と称して70坪ほどのフロアーを展開しています。
私が小学生の頃は、基本的に漫画とエロ本は置かない主義でした。メインが共産党と教育書だったせいかもしれません。
けれど、『はだしのゲン』の中沢啓治と、ちばてつやと、藤子不二雄と手塚治虫の全集は、レジの下の棚に並んでいました。『ばるぼら』がエロくて気になって読むものの、意味がわからなくて棚に戻して『エスパー魔美』にする、ということ繰り返していたわ、と思い出します。
そのラインナップは延々と座り込んで何回読んでも飽きませんでした。
私が高校生になって店に行かなくなったころ、落ちてきた売り上げに、背に腹はかえられぬ、ということで、エロ本を店頭に並べて、同じビルのテナントを借りてコミック店にしてしまう、という運びとなったようです。
堕落した、などと党員のお客から今でもお叱りを受けますが、党員の男性が綱領と一緒にエロ本を買うことも少なくありません。ちょうどよかったんじゃないの、なんて思います。
某エヴァンゲリオンからキャッチコピーをぱくった「コミック補完計画」を掲げて、天井まで隙間なくマンガを敷き詰める展開で一世を風靡した(のか)時代は過ぎ去りました。
私が入った頃には、そのころの名残か、蛍光灯で焼けて白くなってしまった背表紙があまりにも多く、古本屋でももっと綺麗だよ、という有様でした。
すぐにでも入れ替えてしまいたい、とむずむずしましたが、コミックの商品知識がほとんどないことと、初めての人間関係への遠慮もあって、フロアーが違うこともいいことに、それを横目に過ごしてきました。
年末からようやく社長も危機感を覚えて、私も店舗改造に介入していくことになりました。男女で分けすぎていた棚の大幅なレイアウトの見直しと、在庫過多もあって、大量の返品作業をいま行っています。実は半年くらい前から、焼けた商品の入れ替えを少しずつしていたようですが、それでもまだ目に付く古本(じゃないけど)が多い。
どちらかといえばそんな状態でも「置いておきたい」男性スタッフと、売れなくなったものはさっさと返す、「自分んちやないねんから」というドライな女性スタッフの違いを目の当たりにします。
むずむずしていたのは私だけではなかったようで、知識の豊富なスタッフの女の子の意見を事前に聞いておいて、男の責任者をせっつくという、嫌がらせのようなことをしながら作業をすすめています。
嫌がられるといえば、順番にとってもらう昼休みに、「あの人とはいっしょになりたくない」という問題が発生しています。外食はお金がかかるので、休憩室でつくってきたお弁当や買ってきたカップ麺などを食べる人が多いのですが、たいてい2人か3人で同じテーブルにつくことになります。
しゃべりたくないときは、そこは本屋なので、休憩室においてあるマンガや、自分で買ったマンガを読むか、あるいはスマホでゲームをやることで、一人の空間を保つことができます。
「あの人」問題には、性格の不一致というより、男女間あるあるも含まれていて、なんとかしなくちゃね、と思いながら妙案が思い浮かばないので、とりあえず休憩室に、こっちの世界に逃げてみて、という意味で、ウチの20代には馴染みのない『ガラスの仮面』を置いてみることにしました。
新たな嫌がらせかもしれません。

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茶屋ひろし

茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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