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『マレフィセント』 ―君は、天翔るアンジェリーナの勇姿を見たかー

高橋フミコ2014.08.25

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 呪いの妖精、その名はマレフィセント。おとぎ話界における典型的な「悪い魔女」です。いたいけなベイビー・プリンセスの誕生祝いに死の呪いをプレゼント。恐るべき化け物です。彼女がスクリーンに登場した瞬間、ゾワーっと身の毛が総立ちました。今までどの映画でも感じた事のない、ゾクっとする快感が脳天を貫いていきました。長年にわたり数々のアクションを生み出してきた、進化し続ける美貌のアンジェリーナ・ジョリーの、これは、一つの頂点に違いありません。マレフィセントの大きな翼にすべてを委ねるようにして、わたしの魂はファンタジー世界にスルスルと滑り出していきました。この映画のキモは単純骨太なストーリーと、アンジーの美貌と、アンジーの強さと、そしてアンジーの悦楽です。
 ところで最近、ディズニー・プリンセスの周りが喧しいですね。「アナと雪の女王」興行収入が日本国内歴代三位、DVD売り上げ5週連続トップとか。「ありの~ままで~♪」のフレーズがファンの心を鷲掴みにし、映画と一緒に歌える上映という新しい楽しみ方をも生み出しました。まるで、この言葉こそが、日本中の女子(ばかりでもないようですが)のリアル呪いを解く秘密の鍵だったかのようです。しかも、レズビアニティ溢れる真実の愛、王子様のキス不要、という前代未聞の展開。革命と言っていいと思います。
 で、驚かされたのは、アナ雪を好きになれなかった人たちの過剰反応です。太田伊集院ダブル光が「ブスはありのままじゃダメだろ」とか「毒にも薬にもならないストーリー」とか、何か虚勢を張ったようなことを言っていました。更に、自称ゲンロン人3氏が、「クリストフはなぜ業者扱いなのか?」というテーマで苦言を呈し、男性視線の何たるかを披露しました。その場違い感たるや、哀れみを感じてしまうくらいです。何もわたしの解釈が特別に意地悪なわけではありません。ご本人達が、「家庭に居場所のない日本の中年男を表現」していると言い、自らを哀れんでいます。プリンセス物のような主人公中心主義の物語を解釈するのに、男性だからと男性キャラクターに自己を重ね、意味を持たせ過ぎたところから、そのギロンすでにして失敗、見当外れとなっているように思いますが、皆さんはどう思われますかね。先に挙げたキーワードで検索すれば、ギロンの抜粋など目にすることができると思われます。
 さて、「マレフィセント」に戻りましょう。アナ雪で開かれた、レズビアニティ溢れる真実の愛、王子様のキス不要という革命、「マレフィセント」はその系譜を引き継ぎました。不安定で一辺倒だったエルサの魔力は、マレフィセントで制御され、力を増し、多様に進化しています。魔力ゆえに閉じ込められていたエルサは、魔力あればこそ自由に空を飛び回るマレフィセントに取って代わっています。アナ雪ではアナとエルサが最後に合体することでお互いに自らを取り戻す、という設定になっていて、アナとエルサを元々一人の女性の別側面として観ることができますが、マレフィセントは最初からすでにマレフィセントとして完成しています。ついでに、ストーリーの中の男たちは、マレフィセントにおいては更に影が薄いです。これはもう呪いの解けた女の子たちが、自分の力を楽しむ為の物語と言っていいと思うのです。ああ、マレフィセントになりたい。と言うか、アンジェリーナ・ジョリーになりたいな。皆さん周知のように、彼女は本業以外にも国連難民高等弁務官の大使を勤め、産んだ子以外にも養子を育て、誰もが隠しておきたいであろう遺伝性の病気の可能性を告白し、世界のフェムアイコンでありながら乳房切除手術という決断をした、当代きっての大した女です。彼女が演じる事で、架空の存在であるマレフィセントの存在感はハイパーリアルなものになったと思うのです。
 もう一人の主人公、眠りの森のオーロラ姫。この両者の関係は、母親と娘でしょうか。特に自分の才能(翼)をクローゼットに仕舞い込んで子育てに専念したゆえに毒母となった魔女と、トラウマ抱えた娘との和解、みたいなことでしょうか。しかしながら、その辺は決めつけないで、それぞれ楽しんでいただければと思うのです。と言いながら、余計なイメージ付けるようで恐縮ですが、わたしの中のマレフィセント、それは戦うフェミニスト大将。やがて次世代のオーロラたちがすくすくと屈託のない人生を全うできることを願って、嫌われても、恐れられても、遠ざけられても、誤解されても、気高く強く美しく。ええ、マレフィセント、というかアンジェリーナ・ジョリー、今日からわたしの自己イメージとさせて頂きます、悪しからず。

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高橋フミコ

高橋フミコ(たかはし・ふみこ)

60年しし座の生まれ
美大出てパフォーマンスアートなどぼちぼち
2003年乳がんに罹患
同年から約2年半ラブピースクラブWebsiteで『半社会的おっぱい』連載
2006年『ぽっかり穴の空いた胸で考えた』バジリコ(株)より出版(ラブピのコラムが本になりました)
都内で愛猫3匹と集団生活
 
2019年11月21日に永眠されました。
ラブピースクラブの最も長く、深い理解者であり大切な友人でした。
高橋フミコさんのコラムはここに永久保存したく「今のコラムニスト」として表示し続けます。
 

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