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冷却水が減っているっ! という報道が流れたとき、一緒にテレビを見ていた母は言った。
「海水入れればいいのに」
あははっ! 私たちは笑った。そんなアホな。だって、原発よ? 素人にはわからない高度な技術で動いてるんじゃないの?
だから、海水こそがアンサーだ! と知った時、私たちはのけぞった。
「そんな・・・ばかな・・・」
「そんな・・・ばかな・・・」
母も驚いていた。
そのうち、海水を入れようにも方法が定まらないっ! と報道が流れたとき、また母は言った。
「ヘリコプターで上から入れればいいのよ」
あははっ! と私たちは笑った。まさか! きっと凄い方法があるはずよ。だって、原発よ?
だから、赤いバケツを持ったヘリコプターがヨロヨロ飛んできた時は、本当にのけぞった。
もしかしたら、今、やっていることって、高度な科学技術なんかではなく、破裂しそうな圧力釜を前に逃げようか、それとも水かけようか、どうしようかとあたふたしている状況と何ら変わりがないんではないか。天ぷら油がやばいことになっている、やべやべやべ、って青ざめてる状況とあまりかわりがないんではないか。つまりは、起きている現象にとりあえず対処するしか、ない。と、気がつき始めた時、私は原発のことを本気で勉強しようと思った。思ったより簡単に理解できそうな気がした。
案の定、原発のシステムは全く簡単なものだった。物理が苦手、という意識が原発を理解しようとする気力を萎えさせてきたのだけど、原子力格納容庫をつくった方たちの話等をメモりながら、私は311以前と以後、まるで人が変わったかのように原発について詳しくなった。世界の発電事情なども、勉強したよ。人に教えられるほど身についている、とは言えないかもしれないけど、でも、放射線とか原発とかが、私の頭の中では立体感を伴って見えるようになってきた。これは、私の40年の人生の中でもかなりスピードのある進化論です。
で、やっぱり。原発や放射線について知れば知るほど、「不安だ」という気持ちは高まるものである。「風評被害をやめろ」という言葉の薄っぺらさが、ますます不気味に感じるものである。チェルノブイリ級の大事故だという報道と「風評被害をやめよう」という報道が同じ重さで流れてくる。気が狂いそうになる。誰かが「風評被害ではなく東電被害なのに」と言っていた。根拠のある不安まで否定するメディアの圧力は、誰を何から救おうとしているのだろう。
最近、友だち数人から「原発について彼氏(夫・家族・友人と置き換えてもOK)とケンカになった」と言う声をたくさん聞くようになった。原発について不安だと訴えると、一年間に浴びていい量を言ってきたり、ヨーロッパ往復するくらいの放射線だからと笑ったり、CTスキャン1回分にも満たないんだぜと鼻の穴を膨らませたり、日本経済をどうするんだと議論してきたり、水道水ガブガブ飲み始めたり、じゃぁ病院でレントゲン撮ったことないのか!? と怒り出したり、日本の技術は凄いんだと自慢しはじめたり、進化に犠牲はつきものだと言い始めたり、歩いていて隕石にあたって死ぬような確率のことが起きたんだと意味不明なことを話しはじめたりする・・・人が多いんだそうな。彼氏が原発より不気味・・・と笑った女友だちもいた。
原発事故に不安に感じる=シーベルトの簡単な計算もできない無知な人間がパニックになり風評被害を広めている、と捉える人がいることに驚く。実際私の友だちに「私は女だから、感情的に考えてしまうのかもしれないけど・・・」と言ってた人がいたんだけど、私からしてみれば、放射脳数値を情感的に捉えているのはあんたの彼の方だよ、である。その彼は、「自然界にも放射線はあるんだぜ」と言い「影響あるレベルじゃないよ」と水道水を飲むんだそうな。その一方で彼は彼女のように、放射線量や風向きを毎日チェックしているわけではない。ただただヨーロッパに行ったつもり、ラドン温泉に入ったつもり、宇宙旅行に出かけたつもり、と貯めなくていい放射能のつもり貯金でもしているみたい。おまえはポリアンヌか(ポリアンヌのことはよく知らないけど、どんな時でも、物事の良い面を見つけ、つもり貯金をいっぱいしてそうなイメージです)、な優しい人が一番怖い気がしてくる今日この頃です。
というわけで、4月27日(水曜日)午後3時~、今の原発事故について、もっと知りたい、もっと言葉を共有したい、不安だという気持ちを否定されてばかりいるが私は気が狂ってしまっているのか、風評被害と言われてもどうしても野菜を食べられない・・・という私は非国民なのか、と自分を責めてしまうような気持ちになっている人たちと語り合いたいと思っています。女性限定でラブピースクラブで。仕事中の方も多いと思いますが、15時から1時間程度。今一番不安を感じていられるのは、子育て中のママかもしれない。もちろん、子連れOKです。ラブピースクラブで行おうと思っていますが、予約申し込み次第では会場を借りるつもりです。講師もお招きします。講師は、岩波書店「世界」編集部の中本直子さん。原発の専門家ではありませんが、原発の専門家にたくさん取材してきた方。今起きていること、そして「抱えるべき不安」について話していただきます。
要予約でお願いします。こちらまで。件名に「原発事故を話す会」と必ずお書き下さい(メールが大変多いので紛れてしまわないため)。お名前と連絡先をお書き添えの上お申し込み下さい。女性限定です。
※4月20日、本日で締め切りました。たくさんのご応募をありがとうございました。