仕事中に、ここのところ一段とグラビアが増えた「バディ」(ゲイ雑誌)を見ていたら、今月号では、いつものようにゲイ男子たちのヌードグラビアに加えて、ノンケ男子だと思われる現役のプロレスラーが二人で下着モデルを勤めていました。
最近では、「新宿二丁目プロレス」と銘うって、ゲイの観客に向けたちょっとエロい興行を開催している人たちです。
体つきはゲイもノンケも鍛えられていて大差ないのですが、何かが違う、とページを行ったりきたりしながら見比べました。ほどなく、違いは目つきだ、ということがわかりました。ゲイ男子はなんだか色っぽい目つきで、プロレスラーたちは眉間に皺を寄せて睨みつけています。挑発の意味が違うようです。
そういえば、先日クラブイベントに行って、「ゴーゴーボーイズ」というゲイダンサーたちの踊りを初めて間近で見たときにも、記号的にはマッチョな男性が、しかし、女性的な流し目をしている、と、その腰のくねらせ方と一緒に目に焼き付けておいたのでした。
それとも、あの流し目は女性的なのではなくて、エロを目的とした挑発的な流し目の場合は男女差がなくなる、という証明なのか、とも思いました。プロレスラーたちの挑発の仕方は、明らかに喧嘩を売るときのほうで、「オレ強い、すなわちカッコいい」の意味合いかと思われます。ゲイの中には、むしろそっちの方が好き、という人もいるだろうな、ということは、サッカー観戦が本田選手観戦になっているゲイバーでの会話を聞いていると容易に推測できます。
そんななか、この人は普段からその流し目をしているわ、と私が感じている、色気がもれたゲイ男子と二丁目で飲み歩きました。何度か確認をしあったことがありますが、お互いにはまったくエロを感じていません。流し目の種類が基本的に一緒だからなのかもしれませんが、私はそんなに垂れ流していないわ、と思っています。
ちゃんと飲んだのは初めてでしたが、彼の大トラぶりに、ちゃんとは飲めませんでした(「ちゃんと飲む」って何)。お互いにエロを感じていないことは確かですが、大トラは酔うと、キス魔を通り越して、猛犬でした。私の首から上を嘗め回し、肩に噛み付き、強力なハグをねだってきます。猛犬の攻撃を避けようと、首の辺りをつかんで抵抗しました。気持ちよくないし痛い。途中で抜け出して、いつもの店へ逃げ込んで、トイレで唾臭くなった顔と首まわりを洗いました。そのあと一人で一杯飲んで、大トラを探しに行くと、道端でひっくりかえって寝ています。やだ、どうしよう、と今飲んでいた店に電話して、マスター(大柄)と店子(屈強)に来てもらって、ついでに偶然その場に居合わせた知り合いの若い男子(マッチョ)に、トラ子をお店まで運んでもらいました。私はもちろん、鞄持ちのチアガールです。お店のソファですやすやと眠りについたトラ子を横目にカラオケを五曲ほど歌ったところで、トラ子が目覚めました。ニコニコしています。もう歩けて喋れるようです。
後日そのマスターから、私は復活したトラ子に説教をしていた、と聞きました。それはよく覚えていません。おそらくそこから、今度は私が酔い始めたのだと思われます。
けれど、流し目の垂れ流しはやっぱりよくないんじゃないか、と思いました。効く人にだけ効けばいい、と風邪薬のように思っていたら、以前、「茶屋さんにやられたい(セックスの意味で)」と言ってきたノンケ男子に、先ほどの店でひさしぶりに再会しました(やってませんが)。「茶屋さん」の部分には、「女装した男性」や「羊(動物の)」もあてはまるという少し変わった性癖の持ち主です。その日は、その店の周年パーティで、イベントの一つとして「下着飲み」をやっていました。パンいちになったら500円安くなるシステムで、28歳の羊男もトランクス一枚になりました。ところがこれがちっともエロくありません。他のパンいちのゲイ客の姿と見比べます。体が鍛えられてないからか、パンツがトランクスだからか、なんだか実の兄弟が家でテレビでも見ているような色気のなさです。
そのあと一旦店を出て戻ってみると、なぜそれをチョイスしたのか、羊男はへそまで隠れる赤いブルマーに履き替えていました。その格好で椅子に座らされて、全身ゲイのエロ親父三人に取り囲まれて、どうすればエロくなるか、とブルマーをビキニやTバックの形にされたりしています。私はブルマーごしに羊男のチンコを触って勃たせたりして遊びました。「すぐ勃つねー」と言うと、「だってうまいんだもん」の台詞を頂きました。なぜか任務完了の気分になりました。
ノンケといえども「女装した男性」が好き、ということは、羊男は二丁目のゲイバーに、そういう、なんだかよくわかりませんが、「男のエロい挑発」を求めて遊びにきているのかもしれません。
それなら、ということでもありませんが、今度は老舗のゲイバーで、知らない70歳の男性の相手をしてみました。
私が飲んでいるとふらりと入ってきた一見さんで、すぐにビールをおごってくれて、もれなく私の肩にもたれかかってきたので、この人はゲイだとわかりました。一緒に歌いながら飲み始めると、私の股間を触ってきます。「僕とセックスしてみない? あ、でも僕はこんな年だし、できるかな?」と嬉しそうに自分の股間も触っています。終了です。効きすぎました。
翌週には同じ店で、ノンケで60歳の男性と出会いました。私は初対面でしたが、店では常連のようです。入ってくるなり、「俺は右翼だ!」と連呼します。ママに向かって「俺はオカマじゃねぇ」と言います。私とママを見比べて「お前らできてるのかー」と言います。やんわり否定する私たちに、さらに機嫌が良くなり石原裕次郎を歌い始めました。
いてこましてやる(関西弁です)、と思いました。言葉は通じなさそうなので、八代亜紀の「なみだ恋」で返歌しました。すると、ニコニコしながらべらべら話し始めました。
「俺は男より女がいいんだけど、なんだ、お前、うまいなー(触ってもいないし、歌のことでもありません)、ちょっと俺とセックスしてみるか? あ、でも俺、60だからな、勃つかなー」 終了です。しかもオチが70歳のゲイ男性と同じでした。
なんだ、まだ私もイケるかも(証明は羊と70歳と右翼ですが・・)、と勘違いしてゲイバーで飲み友達に一切を報告したら、「まんま、スナックのママだね」とまとめられました。「微妙なゲイ(男)の色気」なんかではなかったようです。