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私がそれを手に入れるまで その2

北原みのり2009.07.10

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「レンタルお姉さん」。
ひきこもりの若者を支援するNPO法人が商標登録していた名前が、ピンク映画のタイトルに使われた。題して、「レンタルお姉さん 欲情家政婦」。NPO法人は映画上映の配給差し留めを要求している。
 
それにしても。レンタルお姉さん。
誰が何と言おうと、「レンタルお姉さん」は、わいせつな香りがするよ。レンタル、という言葉に、お姉さん、がついたら、もうお終いだっ、ってくらいに。
 
「お姉さん」が職業名の一部になっている代表格に、「お天気お姉さん」がある。古典的お姉さんである。硬いニュースは読まない。男のスポーツは論じない。番組の最後に、いろいろなニュースあったけれど、明日もがんばろうね! と笑顔でお天気を報道し、茶の間のオヤジを癒す役割。天気オジサンはいてもお天気オバサンがいないこの国にとって、お天気お姉さんは若い女の総称であり、昭和のニッポンが女に求めてきた働き方の象徴だ。いくらプロフェッショナルになっても、男にとって脅威にはならない存在。それが職業的「お姉さん」。
 
だから、なんだか私、引きこもりを支援するNPOの人たちに、ちっとも共感できないんだよね。記者会見の様子、涙ながら・・・っていう感じだったけれど、「レンタルお姉さん」の響きが放つ”ショッキング性”に気が付かないようにできる鈍感さにショッキング。善意ってここまで人を鈍くさせられるの? ひきこもり支援の内容云々はわからないし、きっと立派なことなんでしょう、って思う。ただ自らを「レンタルお姉さんです!」と名乗れる鈍さと、ピンク映画を嫌悪し反応するナイーブさって、表裏一体なんだな。私には、ピンク映画「レンタルお姉さん 欲情家政婦」の方が筋が通っているように思う。
 
さて。前回の続き。正に、こんな「レンタルお姉さん」的な世界が税関ではまかり通っているように思う。
チンコの写真が商品パッケージに載っているから、チンコ写真を削れ、と言われて税関まで出向いた私だが、いったいリアルチンコが載っていることで生じる不都合というものが、本当にあるのだったら、どうか箇条書きにして教えてくれ、と思う。
少なくとも、山積みにされたリアルチンコがプリントされた商品(36個)を、男三人が取り囲み、それこそ指さし点検しそうな勢いで商品を数え、書類をチェックし、「それでは、はじめて下さい」と内一人が冷静な口調で私に命令を下し(それはまるで外科手術が始まるような緊張感である)、私が「はい」と神妙な顔で自ら持参したカッターでチンコ部分を少しずつ削りはじめ(私は外科医の気分である)、一つ削り終えれば検査官に確認を求め、検査官はさも重大な事柄を扱っているのだ、という真面目な顔でリアルチンコがプリントされた商品パッケージを手に取り、上下斜めと箱をひっくり返しながらギザギザに削られたパッケージのどこか隙間から「リアルチンコ」を彷彿されるような、そんな兆しが残っていないか、を念入りに確認する・・・っていうこの一連の作業の方が、よっぽど、頭がねじれそうなくらいに不条理で不合理で無茶苦茶で人の精神を破壊される行為じゃないか。
 
ちなみに。私はリアルチンコの写真をカッターで削る前に、こう頼んだ。
「削るより、箱だけ、捨ててもらえませんか?」
 
すると通関業者の男がこう言う。
「捨てることとなると、破棄処分という書類が必要になります。それは別料金がかかります。そして、今日は、そういうサービスをやっていません」
意味が不明である。別料金がかかってもいいから、明日でもいいから、やってもらえないか? と食い下がってみたが、明日も明後日も忙しいのでやっていない、と言い張る。面倒くさくなるので、わかりました、それでは塗りつぶします! と私はこれも持参した油性ペンでチンコをガチャガチャと塗りつぶしはじめたのである。
 
しかし。これが問題だった。
 
チンコを塗りつぶした商品パッケージを手にした検査官が、重々しく、こう言うのである。
「恐らく、除光液などをつけると、インクが剥がれてしまう可能性があるでしょう。紙ヤスリで削って下さい」
油性ペンですけど・・・・。しかも、除光液をつけてまで観たいと思う人がいるんでしょうか。というか、除光液つけたら、チンコだって熔けるだろうよ。と思う言葉は飲み込み、紙ヤスリもないので、なんとかカッターで削る、という方向で許してもらってカッターでチンコチンコチンコを削りはじめた。こうやって、人は無気力になっていくのだ・・・と、チンコを丁寧に削り始めたのだが・・・。
 
もう一回だけ続きます。
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北原みのり

北原みのり

ラブピースクラブ代表
1996年、日本で初めてフェミニストが経営する女性向けのプレジャートイショップ「ラブピースクラブ」を始める。2021年シスターフッド出版社アジュマブックス設立。
著書に「はちみつバイブレーション」(河出書房新社1998年)・「男はときどきいればいい」(祥伝社1999年)・「フェミの嫌われ方」(新水社)・「メロスのようには走らない」(KKベストセラーズ)・「アンアンのセックスできれいになれた?」(朝日新聞出版)・「毒婦」(朝日新聞出版)・佐藤優氏との対談「性と国家」(河出書房新社)・香山リカ氏との対談「フェミニストとオタクはなぜ相性が悪いのか」(イーストプレス社)など。

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