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品の問題?

北原みのり2009.10.19

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「ダム中止を一時棚上げにするべきだと思うんです。」(by KENSAKU)
 
森田健作、石原慎太郎に埼玉県知事の仲良し三人組が、八ツ場ダム建設中止反対を表明したというニュース。
森田健作は、全く意味不明な発言(冒頭)を意気揚々と指を大きく天に向けながらキッパリと言い切っていた。棚上げにして、どうするんですか、反対ですか賛成でか。これって、「ダム建設を一時棚上げにするべきだと思うんです」っていうのと、どう違うの?
どっちにでも取れるようなことをキッパリ。自民党ですか、反自民党ですか、どっちにでも取れるようなことをキッパリと言い切りながら当選したのと同じ様子。
さらに石原慎太郎は、環境保護を言うには容易く耳に優しいが、という前置きで、「必要なコンクリートもある」と。あんた・・・・東京オリンピックは環境を目玉にしてたんじゃなかったのか・・・。
 
それにしても、政権交代して改めて浮き彫りになるのは、東京をはじめとする関東圏のトップにいる男たちの時代遅れぶり。政策が時代遅れというよりは、なんというか、他人の話に耳を傾けないことが自分らしさ(男らしさ)だと思ってそうなところが時代遅れ。大げさな物言いで言い切りリーダーシップを発揮していそうだが、その割に「本当は」小粒で「本当は」狡いような気が(なぜか)してしまうところが、昔ながらの男臭。自分に反論する人に真っ赤になって怒りそうなところが、時代遅れな政治家。自分は運がいい、とか、神風が吹くとか、本気で信じていそうなところが日本男子。
 
と、実際にお会いしたわけでもないので、勝手な想像をするだけだが、森田健作と石原慎太郎は、とてもよく似ている。兄弟のようである。
 
森田健作ほど苛つく男はなかなかいない。一月ほど前に千葉県で役人が税金を使い込んでいることが明らかになったが、あの時の嬉しそうな顔ったらなかった。意気揚々と、誇り高く、千葉県民に謝罪していた。自分がやったことじゃないからな。自分がやったことじゃないのに責任を取る俺、な感じの謝罪はそれは誇らしいであろう。と、意地悪な気持ちになるほど、いやらしい謝罪であった。
 
それにしても、人間の「品」というものは、いったい何なのであろう。品格、という言葉は馴染まないし使いたくはないが、ある人間にはあり、ある人間にはない「品」というものは、どのように培われ、または、どのように目減りしていくものなのであろう。森田健作をみると、品というものについて、どうしたって考えてしまう。
 
そして東京都知事。オリンピック誘致のために東京のセックス産業を厳しく取締り(厳しいっす!)、莫大な税金を使ったあげく(余談だがオリンピック招致演説で東京代表が15歳の無名少女、というのも伝統的な男性の発想のように感じる。“少女”パワーが通じるのは、ロリコン王国日本ならでは、ではないのか。)、全く反省の気配無し。太すぎる態度、ずるそうに見える目や口元。私が探そうとしている「品」がどういうものなのか、わからないが、この人にはない。
 
一週間、ヨーロッパにいた。帰りの飛行機で、椅子の上の棚がいっぱいだったので、隣の席の上の棚に自分の荷物を入れた。すると、後から来たその席の人が、「誰、この荷物」と厳しい口調で独り言っぽく言うので、「私のです」と言うと、「あなたがここに入れたら、私が別の所に入れなくちゃいけないでしょう。そうしたら、そこの人が可哀想じゃない?」と言う。自分が”かわいそうだ”、って言えばいいのに、と思ったが「あいている所に、入れていいんですよ」と言った(実際、その会話の最中、機内アナウンスで ”棚は共有です。空いいる所をお使いください” と流れた)。しかし、それから11時間後(!)、飛行機が着陸して私が荷物を取ろうとしたら、彼女(そう、女性でした。同じ年くらいの日本人)が私を邪魔するように立ちはだかり、さらに私の背中をボンと押してきた。え、嘘、と思い振り返ったが、今度は乱暴にコートをはおい、腕を私の頭にあてた。まるまるの悪意、100%の悪意を、泥で被ったような思い。ヒンヤリ、心が冷たくなった。さらに、私の荷物をガタガタと振り、邪魔だよこの荷物、というアピールまでしていた。キュンキュン、ドキドキ。これは品じゃなくて心の余裕の問題か。しかし、たった飛行機の棚(みんなで使う棚なのに!)で、ここまで心が狭くなるようなマインドって、日本にいると海外にいる時よりも感じることが多いんですけど、どういうわけだ。
 
政治家には品を。飛行機の中では心の余裕を。それにしても、品とは何だ、余裕とは、どこから生まれるのだ。
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北原みのり

北原みのり

ラブピースクラブ代表
1996年、日本で初めてフェミニストが経営する女性向けのプレジャートイショップ「ラブピースクラブ」を始める。2021年シスターフッド出版社アジュマブックス設立。
著書に「はちみつバイブレーション」(河出書房新社1998年)・「男はときどきいればいい」(祥伝社1999年)・「フェミの嫌われ方」(新水社)・「メロスのようには走らない」(KKベストセラーズ)・「アンアンのセックスできれいになれた?」(朝日新聞出版)・「毒婦」(朝日新聞出版)・佐藤優氏との対談「性と国家」(河出書房新社)・香山リカ氏との対談「フェミニストとオタクはなぜ相性が悪いのか」(イーストプレス社)など。

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