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(タイトルは美川憲一さんの歌から拝借しました)

あるお金持ちの話を聞きました。
彼は無職の資産家です。生まれたときからお金に不自由をしたことがない、どころかあまりにもお金がありすぎてその使い道に困るような人生を五十余年送っています。

数年前に、行きつけのキャバクラで働いていた女の子と結婚をして、三ヶ月足らずで離婚。彼女に言われるままに数千万円の慰謝料を払いました。

彼曰く、「金額はイタくなかったが、悲しかった」

その、金額はイタくなかった、という部分にリアリティーを感じることは無理ですが、悲しかっただろうな、とは思いました。同時に、彼女のサバイバルに、(不謹慎ですが)ちょっと胸が躍りました。

金額のランクが大きく下がって、最近、出会い系サイトで知り合った年下の男子に三十万貸したら逃げられた、というゲイの話を聞きました。

初対面でお金を無心されて貸したそうです。相手の住所も本名も知りません。それ以来連絡がないので、お金を返してもらおうとメールを送っても返事が来ません。

以前にも彼は同じ失敗をしています。なぜお金を貸すのかと尋ねると、好きになったから、と答えたそうです。
バカじゃないの、と思いましたが、その切羽詰ったお金の貸し方にせつなくなりました。好きになったらすぐに現金を渡してしまうということでしょうか。可愛いと思った年下の男子にご飯をおごるとか何かを買ってあげるといった行為も、お金を使うという意味で底は同じだと思いますが、そちらはまだ同じ時間を共有するというオプションがあります。しかも彼の場合は会ったときにセックスもできなかったようで、とすると、それはちょっと高いウリ専にもならなくて詐欺に近い気がします。また会いたいという期待を込めて貸したのだとしても、次回からは借金取りの立場になってしまうので、それもどうかと思いました。

けれど、「どうせ私なんてお金を貸してあげることしかできないのよ」というスタンスで、「お金を返してもらいたいわけじゃない、もう一度会いたいだけなの」という展開になるとしたら、それはバカと一言で済ませられない状況なのかもしれません。彼は無垢な被害者ではなく、そういうふうにお金を使って生きている人、になってしまうように思うからです。そう考えると、三十万を奪って逃げた男子と奪われた彼の、どちらが確信犯だったのかよくわからなくなります。

以上の話はどちらも又聞きで、私の直接知っている人たちではないので、少し適当に書いている部分もあります。

そんな人から聞いた話を思い出したのは、大阪の女友達からのメールが原因でした。
「彼氏の友達に騙されて六百万貸した。返ってこない。どうしたらいい?」
彼女とは頻繁に連絡を取り合う仲ではありません。去年、一年ぶりに出会ったときは、彼氏に三百万貸して戻ってこない、という近況を聞きました。
あれから状況が悪化しています。
三百万のときに彼女は、お金は諦める、彼とは別れる、という決意をしました。
けれど関係はその後も続き、今年に入ってさらに倍のお金を、今度は彼氏以外の人にも貸してしまったようです。
三百万は、その彼氏が独立して料理の店を出すための資金として提供した金額でした。けれど計画は頓挫して借金が残りました。今回の六百万も同じような流れだったのでしょうか。
何度かメールが来ますが、具体的なことは書いてありません。
彼氏の目に闇を見た、地獄だ、終わりにしたい、警察へ行く、といった言葉が並びます。電話をかけてみてもつながらないので、どうしたものか、と携帯のメールだけで会話を続けました。
その六百万はどうしても返してもらわなければいけない、といいます。彼女だけのお金ではないからだそうです。
話を聞けば聞くほど、なぜ貸してしまったの? となぜか憤りに近い疑問が浮かびますが、言えません。けれどそれは、彼と別れたくなかったからだ、と思いました。
三百万のときにもう、彼には返済能力も独立を形にする気力もなくなっていたはずです。さらにそこへお金をつぎ込めば、なんにもしない人になってしまう可能性もありました。今まさにそんな様子です。

メールのやりとりの結果、彼女は知人の警察官と相談のうえ、被害届を出すことになりました。
「好きだったから、応援したかったから、お金を貸したのに裏切られた」という意味での被害は当然だと思いますが、「私のことを好きでいて欲しかったから、離れたくなかったから、お金を貸したのに逃げられた」という意味での被害だとしたら、そちらの方が地獄のような気がします。
彼女の彼との関係に、相手を思いやるという気持ちを超えて、彼女の業のようなもので繋がっている部分を大きく感じて、そこが胸につかえます。お金が戻ってくるかどうかではなくて、お金だけでも清算しようという意志が、好機になればいいと願っています。

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茶屋ひろし

茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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