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先週ひさしぶりにセックスをしたら、裸でいたせいか翌日に鼻水をたらし、慣れない運動をしたせいか二日後に両ふくらはぎが筋肉痛になりました。

私は、放っておくと何年もセックスをしないひとです。二丁目に来てこのコラムを書くようになってから、なぜか意識的にセックスをしなければいけないような気になってしまい、日々の生活にセックスを取り入れようとするのですが、それでも半年に一度くらいの体たらくです。

世の中には週に何度かセックスをしているような人もいるような気がしますが、そういう人と私は基本的な意識と体質が違うのではないか、と思ったりします。そうした生活習慣の違いからか、私が興味を示さないからか、私の周囲には、「よくセックスをします!」という人が少ないので、その辺りを追求する機会もあまりありません。

世の中の人は、こんなに大変なことを、まあ、よくも何回も・・、とセックスをするたびに思います。

今年の始めに初めて、ハッテン場なる、ゲイ男子のセックス社交場へ行って、自分の体の鈍さを知り、そのあとはバイブを少し揃えて、この苦痛を快楽に変えなくちゃ、と開発に意気込んでいた時期もありましたが、それは一瞬で過ぎ(飽き)、そのバイブもいまや机の上で埃をかぶっています。

けれど今回セックスをしたら、思っていた以上に気持ちよく体が反応しました。ツマミ程度のセックス修行でしたが、少しは効果があったのかと嬉しくなりました。相手の男性が十歳年上でいろいろ慣れていた人だったからかもしれません。
またこの人とするのかしら、したいのかしら、という現在です。

そんな折、今日は職場で売っている「週刊朝日」を手に取りました。表紙に「性の氷河期?」というタイトルを見つけたからです。「~?」を読んだのはずいぶん前のことのような気がします。信憑性があるかどうか判断しにくい記事なので、雰囲気だけをかいつまんでお届けします。

「セックスはめんどくさい、気持ち悪い」と、セックスを拒絶する二十代が急増中!
が第一弾で、今回は、
「あまりしたくないけど、相手に求められたら、アダルトビデオのようなセックスをとりあえずしとく(男女比半々)」「中折れするので勃起増強剤を塗るという若い男の客が増えている」(薬局のオヤジ)「愛がないセックスはしない」(純愛に帰る女子高生)「情報の刺激が現実のセックスより勝ってしまってセックスではイケない」「オナニーの刺激の方が強くて、膣内射精障害を起こす男子が増えている」(記者・女子)

といった感じの内容で、このままでいいのか、この先の日本はどうなっていくのであろうか、と不安そうなまとめ方をしていました。
どこの誰だかわかりませんが、そうした二十代の雰囲気を読みながら、気持ちわかるわー、と思いました。勝手な読みですが、そこには「セックスをしなければいけないもの」として捉えている二十代の意識とそれに対する不満があるように見受けました。
というか、私の中にそうした意識と不満があるだけの話かもしれません。

好きな人に出会ったらセックスをするのが当たり前、となると、セックスをする前から、それが重圧となってのしかかってくるイメージが私にもあります。それは、「うまくできるかしら、楽しめるかしら」といった期待のこもった不安ではなくて、「なんでしなくちゃいけないんだろう」と自棄になる感じです。その抑圧はたしかに二十代の頃からあったような気がします。部屋の中で性の情報をたくさん集めてしまうタイプの人が陥りやすいのでしょうか。

記事によると、「彼氏や彼女が出来たら、礼儀として、アダルトビデオのようなセックスをする」らしいです。
セックスの情報が溢れて細分化されているなかで、オナニーをするときはその中から自分の欲望に近いものを選ぶことができますが、じっさいのセックスの場面では、なにかしら一般的とされている(と思い込んでいる)セックスをする、ということでしょうか。
「その人とは一緒にいたいと思うから、それはそれ」みたいな・・

「大きな思い込み」というか、こうであるべき、といった感覚が平板化してしまったことを「氷河期」とは思いませんが、なんだかそれはそれで寂しい感じです。

ひさしぶりにセックスをした私にとって今回は(って、まだ一回しかしていませんが)、相手の男性とセックスするまでのシチュエー
ションは、それこそ「大きな思い込み」で、タイプの女を自分の所有物にしたい男と、そんな男からの承認に依存している女の、歌謡曲のようでした。

じっさいのセックスはほとんど体の反応だけに集中していました。逆に「アダルトビデオのようなセックス」になっていたら醒めていたかもしれません。

けっきょくそういう関係を求めているのか、この先続けていくとなにが壊れてなにが出てくるのか、まだわかりません。
しばらくしてゲイの友達に、「なんだか気持ち悪い余裕がうまれているよ」と指摘されました。なんだかんだ言って、私にも、セックスをしてなんぼ、という考えが内面化されているようです。セックスのおかげで、変な自信がうまれたのでしょうか。
自分がどんなセックスが好きなのか、どういうセックスが嫌なのか、今したいのかしたくないのか・・私にとってセックスは、体だけではなく頭も使っていないと、すぐになにかに憑かれて、行きたくなかった場所へ行ってしまうような行為でもあるようです。

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茶屋ひろし

茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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