18歳で初めてニューヨークに行ってから20年。私は年に1回のペースで海外旅行に出掛けている。私が旅行でもっとも困ること、それは飛行機だ。私は乗り物にめっぽう弱い。もしひどく酔ったりでもしたら、旅の間中胃のあたりがムカムカして慣れない食事に箸をつけられないという最悪の事態を巻き起こすことになる。だから私は万全の準備で飛行機に乗り込むことに決めている。
まずは服装。これが意外に大事だと知ったのは、海外旅行3回目くらいの香港の旅だったろうか。
『旅の始まりはクリーニングに出したてのピシッ!としたおしゃれ着で』
と、張り切っていた私は、タオルを手放せないほどに酔いまくった。もともとカラダへの圧迫、例えばきつめのパンツ、ピチピチしたTシャツといったものが苦手な私が、ネクタイと細身のパンツで長時間のフライトに挑んだのがそもそもの間違いだったのだ。あの旅から私は着替えを持って飛行機に乗り込むことに決めた。キレイで一番おしゃれな服で旅に出るという心意気は捨てがたい。そこで機中でパジャマに着替えることにしたのである。これがなんとも心地よい。パジャマは私の旅の第一の友だ。
第二の友との出会いは偶然だった。長時間のフライトとなったヨーロッパ旅行で足がひどくむくみ、おまけに中耳炎にもなった私はさらなる快適グッズを求め、Yahooを開いた。
“快適 機中 グッズ” 検索クリック!
テンピュール製の枕やスリッパ、そして足のむくみを解消するマッサージ器具などが出てくる中で見慣れぬ形の物体が目に止まった。
“これであなたもビジネスクラス!”
それはエコノミークラスをビジネスクラスに変えてしまうという驚きの商品だった。
『これだ!』
興奮を抑えきれずマウスを商品写真に合わた。カチッ。
私は衝撃の商品説明に驚嘆し購入を決めた。それはエコノミークラスとビジネスクラスの差の一つである、シートの奥行きに目を着けた商品だった。仕組みはいたってシンプル。長方形の形をしたビニール製の物体に空気を入れて膨らませる。これだけでOK!それを座布団のように座席に敷くと、座布団はエコニミークラスの座席からはみ出してビジネスクラスの奥行きを紡ぎ出すといったものなのだ。しかも腰の部分と膝裏に当たる部分は、他の所より大きく膨らみ座席の凹凸に曲線を描く。これがまたすばらしい。私はエコノミークラスでありながらビジネスクラスを手にしたのだ。しかし、第二の友との別れはある日突然やってきた。あれはタイに旅行に行った時だった。偶然手に入れた初のビジネスクラス体験。あの時の衝撃を私は忘れやしない。第二の友は私を裏切っていたのだ。ビジネスクラスのなんと快適なこと。夢のようなノンストレスな時間が、第二の友が謳ったビジネスクラス気分の時間が嘘だったことを教えてくれた。
あの日から2年。私は今、外国にいる。久しぶりに第二の友と一緒の旅を過ごしている。ビジネスクラスにはならないけれど、一生懸命私の足を支えてくれる友。出発前の機中で『ごめん』とつぶやきながら私は第二の友に空気を入れた。そう和解したのだ。日本はとても寒いという。そんな機内ニュースを見ながら私の心はなんだか少し温かかった。
後記
私は今、セックスエキスポ訳してセキスポで沸くラスベガスに来ています。セクスポの様子、そしてアメリカで感じたことを“苺事件”をちょっとブレイクして次週も書いていきたいと思います。またこのセキスポの模様は、坂井恵理さんによってマンガ化されている、ぶんか社発行の「本当にあった笑える話」の「うで毛放浪記」次回号でも取り上げる予定です。よろしかったらお付き合い下さい。