年末、見慣れない番号が着信に残っていた。大晦日の前日、この年の暮れにどんな急用かと留守電を聞いてみると、それは高校時代を共にくらしたSからの電話だった。
「Uがイタリアから帰ってくるので急きょ、1月6日に同窓会を開くことになりました。担任のR先生もくるので是非来て下さい。」
高校を卒業して20年。私は1度も同窓会に出たことがない。
あの頃と変わりなくオンナが好きな私。胸がなくなり、声が低くなり、髭がはえている私。でもあの頃と変わらずまだ私は自分のセクシャリティを言い切ることができない。そしてそんな私の登場ををどうやら同級生たちは期待をしているらしいく、その声は年々高まっている。
「アンティル?!今度こそ来てよね。」「みんなでずーっとアンティルの話をしていたました。」
私がどんな風貌になっているのか、どんな風に生きているのか、残された留守電越しに好奇心が伝わってくる。さて私は行くべきか、行かないべきか?
みんなどんな生き方をしているのか、どんな顔になったのか、そして私を見る反応がどんなものか。とても見てみたい気もするのだが、どうしても決心がつかない。私は何者として登場すればいいのだろう。
「ジャジャーン! 性同一性障害のアンティル登場!」
それがたぶん平和な登場の仕方なのだと思う。わたしも髭なんか思いっきりはやしちゃったり、「よっ!」とかなんかいっちゃったりして、そんな風にできたら迷わず参加していただろう。しかし今の私にはそれができない。
この2,3年でまた私は自分の呼び名を失っている。
そうそれは20年前の私と同じ。
2007年、私のスタートは同窓会を考えることから始まった。
「私はアンティル」今年も宜しくお願いします。