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「医療という名の恒常的性暴力」(1)内診のカーテン撤廃へ向けて

早乙女智子2016.01.13

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明けましておめでとうございます。目出度いのかどうかわかりませんが、日々を重ねることは素敵なことです。今年も良い年になりますように。

さて、前のシリーズでも書きましたが、なんといっても日本にしかない「内診室のカーテン」撤廃。どうしてこれが国民的運動にならないかが不思議です。講演の度に、会場に問いかけます。内診室のカーテンは何のため?すると、ほとんどの女性は、そういうものだと思っていた、恥ずかしいから?、開けていいですか、なんて言えない!と質問の意味すら意に介さないようです。カーテンは日本にしかない、と聞いても特段驚かない。誇らしくも恥ずかしくもない、思考停止状態なのです。

女性が「女性」として最も重要なライフイベントはセックスもさることながら、経験するなら妊娠・出産ではないでしょうか。その大事なライフイベントの導入となる婦人科の診察そのものが、最初の性被害的なものだとしたら・・・・考えるだけでおぞましいことです。しかしながら、その在り方について問うことも、問われて考えることもできないとしたら、その根幹にあるのは女性の自己否定に他なりません。そういうものだと思っていた、「そういうもの」でいいのでしょうか。ましてこれからことあるごとに健康管理としても、トラブルの解決としても受診するであろう婦人科に、そういうものだと人生を委ねて大丈夫なのか・・・他人事ながら心配になります。

勝手に「内診室のカーテン撤廃委員会」会長を名乗っていますが、今までに会員はたったの3名。今後は「カーテン撤廃党」にして、選挙に出ようかしら。

私がカーテンを開けて診察を始めたのは、かれこれ20年前、患者さんの方から、カーテン開けていいですか、何されるか知りたいので、と言われて、初めてのことでどぎまぎしたのを覚えています。別ににやにやするわけでもないのに、どんな顔して診察したらいいのか、きっと表情が強張っていたと思います。ところが、やってみたらなんということはない。それもそのはず、陣痛室や分娩室ではカーテンなどなく、普通に診察しているのですから。外来だけ物々しくカーテンをする、その愚を全国の大学教授が気づかないことがもはや滑稽です。それもかつては、断りなしにカーテンの向こうで研修医や学生が何人も変わるがわるお股を覗き込んでいた時代もありますから、少しはましになったかも知れません。

恥かしいどころか、お互いの顔が見えて、タイミングを図ることもできリラックスします。どこを見て欲しいのか、コミュニケーションも図れます。診察をする側のストレスも減るのです。たまに、何かのプレイと勘違いして、顔を手で覆っている人を見かけますが、診察する方は真剣にお股をのぞき込んで位いるので、その顔を見られないのはラッキーかも知れません。性交経験がなかったり少ない場合は、SSからSSSの可能な限り小さな器械を使用します。超音波検査も腹部エコーで代用したり、肛門から挿入したりします。人によっては、出産経験があっても性交も内診も苦手という女性もいるのです。そうした個人のニーズに合わせて診察すべきです。

医療なら何をしても許される時代ではありません。様々なシーンで加害や暴力に関心が高まるなか、この業界に身をおいて30年、なくなるどころかエスカレートしそうな領域にあえて苦言を呈します。これを変えて行くことができるのは、自浄作用ももちろんですが、被害に遭っている女性からのアクションです。

産婦人科医不足といわれる中ですが、医師のやる気を削ぐなどと言わせないで、国鉄からJRに変わった公共交通機関のように、優しい医療への更なる変容を促していきましょう。

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早乙女智子

早乙女智子(さおとめ・ともこ)

神奈川県医師会神奈川県立汐見台病院産科副科長 産婦人科専門医 「性と健康を考える女性専門家の会」会長 日本性科学会認定セックスセラピスト 家族計画国際協力財団(ジョイセフ)理事

1986 筑波大学医学専門学群卒
1986-1991 国立国際医療センター産婦人科研修医・レジデント終了臨床薬理学教室在籍
1991-2000 東京都職員共済組合青山病院産婦人科
2000-2003 NTT東日本関東病院産婦人科
2003-2006 ふれあい横浜ホスピタル産婦人科医長
2006- 神奈川県医師会 神奈川県立汐見台病院産科副科長
専門:人口問題、家族計画、セクシュアルヘルス
2009~神奈川県立衛生看護専門学校非常勤講師
2009~明治学院大学非常勤講師 
  2011~家族計画国際協力財団(JOICFP)理事
2012~性と健康を考える女性専門家の会会長
【所属学会】
日本産科婦人科学会(専門医)、日本女医会、日本不妊学会、日本人口学会、日本性感染症学会(専門医・評議員)、日本生命倫理学会(研究開発委員)、日本母性衛生学会、日本性科学会(認定セックスセラピスト)神奈川STD学会幹事
【著書】『避妊』(主婦の友社1999)『13歳からの恋とからだノート』(新講社2005) 『ガールズセックス』(共同通信社2003)他多数 

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