フランス女性は太らない。80歳でも恋をする。フランス女性に学ぶエレガンス。フランス女性はセクシー。歳を重ねるほどに輝きを増す。人生を美しく生きる女は、服の下から美しい。フランス女性に学ぶ大人のランジェリーのすべて…
アマゾンのサイトで「フランス女性」と検索すると、こんな言葉を散りばめたタイトルの本がこれでもかとヒットしてくる。いまさら言うまでもないが、雑誌や本の世界では、フランス女性はセクシーでエレガントでスタイルが良くて、歳をとっても恋をしている。
これは日本だけの話ではない。「フランス女性」本の多くがアメリカ発の翻訳であることからも分かるように、そもそもの発信地はアメリカのようだ。そしてアメリカ、日本にとどまらず、全世界がフランス女性に憧れの眼差しを向けていると言っても過言ではないかもしれない。
このような状況は、当のフランス女性たちにとって不愉快ではないものの、やはり時々、現実とかけ離れているのではないかと感じるらしく、定期的に「外国におけるフランス女性のイメージ」が雑誌の紙面を賑わす。
今日はちょっと趣向を変えて、そんな記事をもとに、私がフランス女性に聞いたという形で架空のインタビュー記事を書いてみようと思う。
N(NakajimaあるいはNihon人):フランス女性はダイエットもしないのに太らないと言われています(ミレイユ・ジュリアーノ著『フランス女性は太らない』)が本当でしょうか?
F(France女性): もちろんダイエットするなんて言いませんよ。ただ、「ちょっと気をつけている」と言うんです。どこが違うって? それはそちらで考えて下さい。
まあ、フランス女性が太らない理由は煙草を吸うからという話もあります。実際、喫煙者の45 %が女という国ですから。煙草って、間食の代わりになるんですよ。
N:アメリカ人は、フランス女性は年齢を重ねても皺ひとつないと言ってその秘密を探っています。あるベストセラーの著者によれば、それは毎朝飲むフレッシュ・レモンジュースのおかげで、肌つやの良さはよく眠るからだそうです。
F:本当は違うけど、フランス女は美容の秘密は口が裂けても言いませんからね。正直言ってフランスの女は、毎朝レモンジュースを飲むなんてコツコツやるタイプではないです。よく眠るっていうのも… たしかに睡眠薬の使用率は高いですよ。
ほんとはね、25歳のときから使っているアンチエイジングのクリームの効果じゃないかな。アンチエイジングクリームがヨーロッパで一番売れているのがフランスだそうですよ。でなきゃ美容整形。
N: アメリカの本には、フランス女性は美容整形に反対ではないが、むしろ、人生経験を刻んだ顔のなかに美を見ると書いてありますよ。なんだかさっき言ったことと矛盾していますが…
F: 単にアメリカよりは美容整形が少ないってことじゃないですか?
N: 私の印象では、率直に言って、フランス人が老けないようには見えません。ただ、皺があっても、年齢の刻印がある顔でも美しい、きれいな女性が多いという印象はたしかにあります。見習いたいものですが、その秘訣は「恋をすること」と言われてしまうと、少々、ハードル高いですね…。ジェイミー・キャットキャランは、「フランス女性はひとりで寝ない」(『セクシーに生きる フランス女性がいつまでたっても若々しく美しいい18の秘密』の原著タイトル)と言っていますが?
F: ええ、自信に満ちて、狙った男は必ず落とす。その武器は下着だって言うんでしょう? 美しい上下のアンサンブル。でも、フランスの女がみんなレースの下着を持っているかというと… ちょっと古いデータですけど、2012年にフランス女性は平均で、下着には97ユーロしか割いていなかったんです。一番売れている下着が、プチ・バトーの100%コットンのショーツというのでは…その点、どうなんでしょうね。
N:「フランス女性が男性を誘惑するのに用いる10の洗練された態度」という記事によれば、 フランス女性は他人に見られるために外を歩く。恋人候補といっしょに歩いているとき、他の男が二人を見るのを見て、彼のライバル意識に火が点くそうですが?
F: 街を歩くだけで男性をその気にさせられるなら苦労しません。パートナーが見つからなくて悩んでいる女性も多いです。美人で賢くて素敵な女性にパートナーができないというケースもけっこうあるし、離婚後新しい相手を見つけるのも男性の方が多いですけどね。
N:フランス女性は性的に解放されていると言われますが?
F:それはブリジット・バルドーとかフランソワーズ・サガンとかシモーヌ・ド・ボーヴォワールとか、有名な女性のために生まれた伝説のイメージで、実際の多くのフランス女性はそれほど解放されてはいないです。セックス医によれば、冷感症がけっこう問題らしいですし。ただ、フランス人は猥談好きというか、会話の中でセックスを仄めかす話し方をしますよね。それは女でもタブーじゃなくて、そういうところが外国人と違うかもしれません。
N:これは日本ではあまり言われていないのですが、アメリカ人のパメラ・ドリュッカーマンは、『フランスの子どもは食べ物を祖末にしない』というベストセラーを書いていて、「フランスの子どもはおとなしくよく眠り、自立していて礼儀正しく、辛抱強く、わがままでなく、なんでも食べる」と言っています。その理由は、アメリカ女性と違ってフランス女性は子どもに干渉し過ぎないからだそうです。
F:やっても無駄だと諦めたからでしょう。子どもにあまりかまわないというのはそうかもしれません。それで躾が良くなっているなら素晴らしいことですけど…
N:フランス女性は料理が上手とも言われていますよね。
F:私たちのおばあちゃんの世代は本当に料理が上手だったんです。でも、現代女性は完璧にこの伝統を失ってしまいました。家では冷凍食品を電子レンジでチン。仕事から帰って来て料理する時間がないので便利ですものね。昔ながらの牛肉のブルゴーニュ煮や子牛のクリーム煮は、パリのビストロでいただきます。
N:なんといってもフランス女性はシックの代表。ファッションの先端を行っていますね?
F:誰もがイネス・ド・ラ・フレサンジュやシャルロット・ゲンズブールになれるわけではないですよ。これでも毎日、「着るものがな〜い」と言って、どうやって流行を追うか必死でやっているんです。
N:あら、フランス女性は流行を馬鹿にして、自分に似合うものしか着ないと言いますけど。
F: そんなことはないと思いますね。ただ流行だから着るのではなくて流行しているものの中で自分に合うものを選ぶようにしているのでしょう。
実際のところ、パリの女性のファッションは60年代にはまだ最先端だったかもしれませんが、今ではすっかりミラノなどに抜かれています。
N:でも、街を歩いていて、変な格好をしている人は東京より少ない感じがします。
F:フランスには、ブルジョワの「良い趣味」の伝統があって、それに従っていればそれほど外れた格好になりません。しかもフランス人は、たしかに色々なスタイルを組み合わせる才能はあって、コーディネートは上手だと思います。ただ、伝統は諸刃の剣で、黒と紺を合わせられない、赤とボルドーを合わせられないなど縛りにもなってイマジネーションを阻害するところもあるんです。
N: でも、小物や小さな工夫で他の誰にもできないオシャレをするというイメージがありますよね。
F: とにかくなんでもやってみて、それらしい顔をしていると、「ミステリアス」とか言ってもらえるんですよ。フランスの女はね、格好をつけることがとても上手いの。それが外国人との違いと言えば違いなのかも。
N:「若いフランス女性はシンプルだけれどシック、自然体だが決してだらしなくはなく勇気があって頑張り屋、だけど同時に軽みを忘れない」と1937年にすでにMarie Claireの創刊号に書かれています。「フランス女性」のイメージは一種の文化遺産なのでしょうね。そういうものを持っているフランス女性だけは、「ミラノの女性のように」とかいう風にモデルを外に探したりしません。そのこと自体がとても独自なのかもしれませんね。今日はどうもありがとうございました。
出典:
Peffy Frey, La femme française, « an American dream », Madame Firaro août 2013
Cathrine Durand, Qui est la femme française ? Marie Claire 2014
Marine Durand, La femme française en sept cliché, Grazia 2015
Aurélia Perreau, Tout ce qu’on dit sur les françaises : cliché ou réalité ? Marie France 2014