10月24日14時38分、アイスランドの女性たちは仕事を止めた。男女の賃金格差に抗議するための大規模行動だ。呼びかけたのはフェミニスト諸団体。アイスランドの男女賃金格差は14%だ。男性が17時まで働いて得ている給与を元に考えると、女性は14時38分以降は無給で働いていることになる(1日8時間勤務)というデモンストレーションなのだ。
10月24日という日付が選ばれたのは、1975年に大規模な「女性の休日」デモが行われた記念日だからだ。実に、女性労働者の10人中9人が参加したという!
その後、アイスランド女性は2005年に14時08分、2008年に14時25分に仕事を止めるデモを行っている。緩やかに時刻が遅くなっているのは、男女賃金格差が少しずつ縮まっていることを示している。とはいえ、2005年から2016年の11年で、延びた労働時間は30分、まだまだ男女の賃金差は問題なのだ。
このニュースに想を得て、フランスの新聞社Liberation(リベラシオン)は、最近のOECDの統計を元に、もし世界中の女性が同じ行動を起こすとしたら、何時に席を立つべきか、主立った国を中心に割り出した。男女賃金格差が大きければ大きいだけ、早い時間に仕事を止めることになる。
フランス女性は14時38分。オーストラリア女性の14時37分、スウェーデン女性の14時35分とほぼ横並びだ(アイスランドも統計のとり方に違いがあるため、リベラシオンが同じ方法で計算し直すと、14時35分になるということだ)。以下、ポルトガル14時44分、アイルランド14時49分、ギリシャ14時57分と少しずつ時間が遅くなる。
比較的遅くまで給料が払われている計算になるのは、スペイン女性の15時59分まで(男女賃金格差6%)。ハンガリーの15時55分、ニュージーランドの15時51分、ベルギー15時49分、ポーランド15時47分などがこれに次ぐ。イタリア(15時07分)、メキシコ(15時02分)、デンマーク(15時01分)などもかろうじて15時台だ。
一方、カナダは13時50分まで、アメリカとフィンランドは13時48分まで、オーストリアは13時46分まで、イギリスは13時45分まで、トルコは13時37分まで、イスラエルは13時30分までしか給料が払われていないという計算になる。
そして、気になる日本は、なんと12時09分! しんがりに控える韓国の10時48分とともに、各国と大きく水を開けられている。
日本女性がアイスランド女性と同じデモンストレーションを行うとしたら、12時09分には「これ以降はただ働きをしていることになりますから」と席を立たねばならないということになる。
男女賃金格差を目に見える形に翻訳する計算方法は別にもある。ヨーロッパ委員会は、一年のうち、11月2日以降は、ヨーロッパ女性は「ただ働き」になると発表している。この計算、日本に当てはめるといつになるのだろう。ざっと計算すると、9月24日以降くらいか(男女賃金格差が27%。ただ、私は厳密な計算をしていないのであくまで目安)。
男女賃金格差に関しては別のデータもある。ダボス会議で知られる世界経済フォーラムが26日に発表した報告によれば、男女賃金格差が縮まるスピードがこれ以上速くならない場合、完全に平等になるには2186年、つまり後170年待たなければならないことになるそうだ。
この世界経済フォーラムの報告では、賃金格差のみならず教育水準や管理職の数などグローバルに男女平等の度合いを比較したランキングで、日本は144カ国中111位、前年の145カ国中101位から大きく順位を下げたという点が日本でも大きく報道されている。ちなみにフランスは17位。冒頭に挙げたアイスランドは世界一位である。
男女平等が最も進んだ国でも男女賃金格差を目指してまだ闘わなければならない状況と言うべきか。1975年以来、女性労働者が実力行使して勝取って来た男女平等と言うべきか。
日本女性は12時09分に仕事を止めて不平等を訴えることができるだろうか。フェミニストの呼びかけに応えて女性がストライキを実施し、実力行使で賃金を上げさせるなどということは、なんだか絵空事のようだけれど、そんな光景を見てみたい気がする。