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現代フランス女性を落とすには

中島さおり2015.08.28

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フランス人は恋愛の達人のようなイメージがあるが、実態はどうなのだろうか。
 最近、”#drageur – ce que veulent (vraiment) les Françaises”(#ナンパ師 —フランスの女が(本当に)望んでいること―)という本が出て、密かに話題になっているのだが、この本や寄せられた感想を見ていると、フランスの男女も人並みに苦労しているようだ。

著者はカリーヌ・ジャイヤルドンというマーケンティングの専門家の女性で、これを書くにも社会学的リサーチの方法を踏まえて、多くの男女にインタビュー調査したという。
 面白いので、ちょっとご紹介しよう。

 まず、「恋愛においては、どこの国の男であろうと、すべての男は以下のどれかに入り、痛い目をみる。
–シャイな男たちは「いくじなし」とみなされ相手にされない。
–シャイなところがまったくない男も、女をリスペクトしない傲慢な男として退けられる。
–共感してくれる男も捨てられる。女に合わせるところが男の魅力と映らず、フレンドゾーンに沈んでしまう。
–そして遊び人は、逆説的なことに、ずっと恋人ができない。

 うーむ、これではフランス女性との恋愛はなかなか簡単ではなさそうだ。
 しかし男性諸君に朗報もある。フランス女性とつきあうためにはイケメンである必要はないらしい。
「パートナーに求めるもの」というアンケートが1939年から定期的に行われていて、その資料によれば、たとえば1946年以降、フランス男は女性に処女性を求めなくなったということが分かっている。
「初回のアンケートの時から、女性は男性の外見にあまり重きを置いていない。が、2003年以降になるとますます下位に追いやっている」
 これには異論のあるフランス女性もいるようだが、私はなんとなく納得できる。現代の俳優の顔を思い浮かべても、フランス男はアメリカ俳優よりずっとイケメンが少ない。イケメンがいないわけではないのだから、要するに彼らがそれほどもてはやされないということなのだろう。

 「今日の恋愛」を語ろうとするこの本で、恋愛ツールとして俎上に上がるのが携帯メールである。
「多くのサイトやブログが男性に恋愛に成功するメール術を伝授している」と始める著者は、これを完膚なきまでに否定している。

「携帯メールで女は釣れない」
曰く
「美しいフレーズを作るのは、私たちのおじいちゃんたちにとっては切り札だった。が、現代の女たちが求めているのは、言葉で表された男の価値ではなく、関係だ。関係とは、あなたと彼女とのあいだに作られる空間、彼女が居心地良く感じ、あなたを快いと感じる空間のことである」
というわけで、
「シャイなあなた、液晶画面の後ろに隠れるのはおやめなさい。弁舌さわやかなあなた、ただただ言葉の能力に頼るのをおやめなさい。
文学的なあなた、あなたの文章力にばかり頼るのをおやめなさい。そしてその他のすべてのあなた、携帯メールが誘惑の手段になると思うのをやめなさい」と手厳しい。しかしこれを読むかぎりではフランスの男たちはずいぶん立派な口説き文句をメールで並べるようだ。読んでみたい気がしないでもない。

 笑ってしまうのは、
「ほとんどの男は、女の子をものにするには熟成させる必要があると思っている。デートをした後、最初のメールを送るのに3日置くという法則の理由はそれだ。しかし私は断言する。そんなことをしたらおしまいだ。女の子はハムのように熟成させるわけにはいかない。メッセージは翌日には送らなければならない。どんなに遅くても」
 そりゃそうだ。さすがに「3日の法則」というのは日本では聞かないだろう。フランスの男たちはずいぶん変な法則を信じているものだ。ひょっとしてスタンダールの「恋愛論」の結晶作用でも信じた結果なんだろうか?

 この本の白眉は、私が思うには「彼女があなたを恋人になる可能性のある男と見るのをやめる決定的な瞬間」つまり「フレンドゾーン」についての考察なのだが、残念ながらここで指数が尽きた。「フレンドゾーン」については機会があったらまた書くことにして、今回はここで終わりにさせていただく。

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中島さおり

中島さおり(なかじま・さおり)

エッセイスト・翻訳家
パリ第三大学比較文学科博士準備課程修了
パリ近郊在住 フランス人の夫と子ども二人
著書 『パリの女は産んでいる』(ポプラ社)『パリママの24時間』(集英社)『なぜフランスでは子どもが増えるのか』(講談社現代新書)
訳書 『ナタリー』ダヴィド・フェンキノス(早川書房)、『郊外少年マリク』マブルーク・ラシュディ(集英社)『私の欲しいものリスト』グレゴワール・ドラクール(早川書房)など
最近の趣味 ピアノ(子どものころ習ったピアノを三年前に再開。私立のコンセルヴァトワールで真面目にレッスンを受けている。)
PHOTO:Manabu Matsunaga

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