わたしの周りの女性たち
この連載も今回で最終回になりました。
短い間でしたがご愛読ありがとうございました。
最後に、私の周りにいるトルコ人女性について語ってみたいと思います。
一番近いのが下の階に住んでいるおばちゃんです。
小さいときに亡くなったお姉さんのIDカードをそのまま使っているということで正確な歳はわかりませんが、多分80歳近いはずです。
私が今の家に引っ越してきた10年前にはすでにご主人は亡くなっていていませんでした。二人子供がいて、上の女の子は障害児でした。おばちゃんいわく、「2歳のときまで普通だったけど、親指をドアに挟んで無くしてから、ショックでおかしくなった」ということでした。
自分も昔目の病気で片目が見えないのに、おばちゃんは献身的に彼女の面倒をみていました。数日おきに近くの公園に連れて行きました。指を無くしたときのトラウマなのか、絶対に爪を切らせようとしない彼女の固く握られたこぶしを開いて、爪を切るのを私も何度も手伝いました。
一度外で転んで大腿骨骨折をしたのに、娘のために復活しました。
それなのにこの娘さんは彼女が40歳のときに風邪であっけなく亡くなってしまいました。もしかしてあの頃流行っていた豚インフルエンザだったかもしれません。
もちろんおばちゃんは悲嘆に暮れましたが、すこしサバサバした感じがしていたのも無理もないことだったと思います。
「私が死んだあと、この子の面倒を誰が見るのか」と、いつも心配していましたから。
娘さんを亡くしてからは、おばちゃんはいろいろ出歩くようになりました。なかなか行かれなかった遠くの親せきのところへ泊りに行ったり、夏はリゾート地にいる知り合いのところに行きっぱなしです。
楽しくやっている矢先、下の息子が結婚すると言い出しました。もう40過ぎていたし、定職がないのでもう結婚は無理じゃないかなと思っていましたが、それでも嫁が見つかったんです。でもお金がないから同居したいと言い張っています。おばちゃんは一番広い部屋を使って快適に暮らしているのに、嫁と同居なんてまっぴらごめんです。だいたい嫁の荷物を置くとこなんかありません。
結婚してもおばちゃんにはいいこと何にもなさそうです。
いつも苦労しっぱなしだったおばちゃんにいいことがありますように!