私、数年前、妊婦でした。今はもう、中の人は出てきています。
この季節が来ると、妊婦感ピークだった頃のこと、思い出します。暑かったなあ、重かったなあ、怖かったなあ、もっと優しくされたかったなあ……って。苦しい思い出ばっかり。自ら望んで妊娠したはずだったのに、妊娠って何であんなに苦しかったんだろう。「聞いてなかった!」ってことばっかりだった。
ただでさえ、生きていてストレスフルなこの世の中。気軽にストレス発散出来るものって、毎日のちょっとした嗜好品。コーヒー、スイーツ、ジャンクフード、お酒、煙草だったり。そんな、ささやかな幸せも奪われる妊婦。
自分で納得して控えるならいいけど、夫や義理母・実母から強制的「禁止令」出される人も、多数。
「お母さん」なのに「夜出歩いている」とか、「あんなミニスカートはいて!」っていう「母なのに」縛りが、妊婦の時から既に始まるしね。
禁止とか縛る圧力が、妊婦へのいたわりとか優しさ目線とのセットだったら、もっと頑張れるのになあ、って感じ。
残念ながら流産してしまったら一方的に女のせいになったり、子どもがアレルギーとか病気だったら、妊娠中に女が食べていたもののせいにされ、女の体の特性のせいにされる。「うちは、こんな病気の家系じゃないのに」とまで言われたりね……。
最近だと、妊婦マーク付けていると、なぜか標的にされてお腹を「攻撃」されるとか……。どんな社会なんだ?でも、これっていまだに、女の世界のあるあるです。
妊婦になって、常に「オンナ」として見られる緊張感、消費される存在としての息苦しさと怖さから解放されるメリットがあるかと言うと、全然、そうでもなかった。
日本のAVには「妊婦マニア」ってゆうジャンルがあるらしく、妊娠してるだけで、そういう男たちからしたら性的対象のストライクゾーンになるそうです。
気になって検索すると、「妊婦もの」の男性向けAVの多いこと、多いこと。どう考えても、異常じゃない?見てたら、吐き気もよおします。くれぐれも、妊娠中の方は、リアルタイムで検索しないで!
妹が臨月の時、クリニックへ検診に行った中目黒駅前の交差点で、「今から、どっか行かない?」って男から声をかけられた。初め、道でも聞かれたのかな、と思って振り向いたけど、明らかなナンパ。まさに、「妊婦ナンパ」です。
本人も帰宅後、笑いに転化してショックをごまかそうとしてたけど、信じられないって思いでいっぱいだったよう。妹の夫も怒り狂ってた。
帰宅時間の遅い妊娠中のワーママの友人も、「夜道怖い。でも妊婦だから走れない」って言ってる。ほんと、怖いよね、走れないってことは、逃げられないってことだもんね。妊婦でも安心して歩けない世の中って、ほんと、どうなのよ?
妊婦のレイプ被害、実はありそう。そういう統計とか無いのかな?妊娠中って、避妊なしのセックスでも新たには妊娠しない。だから「安全」だと思われてそう。変な男達って、自分に都合の良い情報ばっかり持ってるよね。
私も、妊娠中の恐怖体験、もってます。妊婦中に、大好きな『sex&the city』の映画版が公開!ってことで、うきうきと近所のシネコンへ。心身ともにトラブル続発で不調な妊娠期ですが、体調の良い時間帯だった朝の第一回目(確か9時後半とか10時台)を狙って行きました。
公開から少し経過している平日の1回目の劇場、当然、ガラガラなわけ。あーのんびり楽しもう!中の人が出てきたら映画館なんてしばらく来れないしね、と思って、ドアを開ける。
「あれ?」どう見ても40~50代のオヤジが4人、先に座ってる。女子はゼロ。
「部屋、間違えたか?」と思って看板を見に部屋の入り口戻ったんだけど、確実にここなの。
え?……『sex& the city』って、こんなオヤジたちが見る映画だっけ?……あんな層のファンいる?女たちのガールズトーク映画でしょ?それか、丸山啓太(ケイタマルヤマのデザイナー)とかオシャレ男子推しの映画だったよね、確実に……。
重いお腹と妊婦ゆえの貧血で回らない頭で一生懸命考えてみたけど、多分、絶対、このオヤジたちはファンじゃないと思った!題名に「SEX」ってつくから、何か体のいいポルノ映画、グラマラス美女しか出てこないオトコ目線でしか作られてないハリウッド映画だと思って入ってきちゃった暇なオヤジたちに違いない!!それ以外、考えられない!
そう結論づけた私は、ほんとーに残念だけど、オトコの欲望目的のオヤジが4人、オンナ且つ妊婦の私が1人のこの現状では、完全に、リラックスして、楽しめるわけないって思った。
だって、映画館って、結構、「痴漢天国」じゃない?(これも「映画館内における痴漢被害統計」とかないのか?)。これも、おんなのあるあるだよね。女ならみんな見てる景色。知ってる事実。私も、何回か危ない目にあってきたよ、映画館痴漢被害。痴漢どころか、ポルノ専門映画館じゃない一般の劇場でも上映中にオナニー始める男もいるわけで、それ考えただけでも気持ち悪いし、ほんと、ほんとーに悔しいけど、暗い劇場で、大音量のシーンで変な気起こしたオヤジが結託して襲ってきても、こんな体の私、逃げられないし、そうなったらもう、あたし、PTSDで大好きな映画を一生見に来れなくなる!……最悪のことが頭の中ぐるぐるぐるぐる……。
場内が暗くなって、予告が始まりだす。
ごめんね、キャリー、ビッグと幸せになってね。久しぶりに会いたかったのに、サマンサ!私は、今日は泣く泣く退陣するよ。DVDで会おうね~バイバイ~(号泣)。
と、半泣き且つ断腸の思いで劇場を後にする決心をして立ち上がったところで、7人くらいのパワフルな推定年齢アラフィフ女性たちが8人、「あ~ここ、ここ!間に合った!」などなど、ぺちゃくちゃしゃべりながら怒濤のように押し寄せ、ほんと、安心して、無事に、観ることが出来ました。
という、私からすれば、かなりの恐怖体験だったのですが、当時のパートナー(夫ポジションにいた男)に話したら、「被害妄想じゃない?」、「男を全員痴漢だと思うな」だって。
今、振り返っても、妊婦であることのデメリットはいくつも思いつくのに、ほんと、メリットは頑張って考えても、全く思いつかない。
出産時の達成感?まあ、それはあったと言えばあったけど、子どもが無事に産まれてくるかとか、そもそも、自分が死なないかとか、不安も大きいしね。だから、それは結果的に、プラマイ、マイナス。
うーん……あ、あった、あった!
やっぱり、女が一方的につらい状況である妊婦の時にこそ、その時のパートナーの本質が見抜けるってこと。
女の苦しみとか女の人生に共感してくれるかっていうことが、明確にジャッジできることは、その後の人生で、かなりのメリットだったかもね。
映画館痴漢の恐怖をパートナーに訴えた私のその後ですが、共感ゼロの彼への愛は一気に冷め、結果、産後クライシスを招いたのは言うまでもありません。