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告白します。2004年当時、私も自己責任論者でした。

2018.10.30

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玖保樹です。この「玖保樹です」が「ヒロシです」のオマージュ(ヒロシを若干リスペクトしてるので、決してパクリではない)だということを、一体誰が気づくというのでしょうか。

 そんなことはどうでも良くて。10月23日深夜、政府は緊急会見を開いてシリアで3年4カ月もの間拘束されていた、ジャーナリストの安田純平さんが解放されたことを伝えました。

 安田さんの拘束時の映像はたびたびメディアで取り上げられていたので、私は素直に「ああ、よかった」とほっとしました。しかし解放されて以降、安田さんはすさまじい自己責任論や「謝罪しろ」論に晒されています。政治学者やお笑い芸人、政治家までが加わり「失敗して帰ってきたらヒーローじゃない」「極端な話、わざと人質になって、身代金を折半しようやってやつが出てくることも限らない」「結局、テロ組織にお金が渡った」「謝罪をしなかったら人としておかしい」などなど、全部拾ってたらそれだけでこのコラムが埋まる勢いです。お帰りなさいと迎えた人は別にヒーローだなんて思ってなくて、命があったことを喜んでると思うのですが……?

 でも実は何を隠そう、って隠す気はないのでこうして書きますが。私も2004年の頃までは、絵に描いたような自己責任論者だったのです。

 2004年4月、イラクで3人の日本人が誘拐されました。3人は約1週間後に解放されましたが、日本に向けて必死に助けを求める映像が流れたことや、イラクには渡航の自粛と退避勧告が出ていたことなどから、帰国後に猛烈なバッシングを受けました。そのバッシングに、私も乗っかっていたのです。当時書いたブログを戒めのために探したけれど見つからないので、記憶を頼りに再現すると

・危ないと言われているイラクに好きで行ったのだから、「助けてくれ」はお門違い。自力でなんとかすべきだった
・そもそも、そんなところに行くこと自体おかしい
・助けられた際の映像を見てると「疲れた~」と口にするなど、態度が横柄で腹立たしい
・あんたらのおかげで一体いくら税金が使われたかわかってるのか

……どこでも目にすることができる、こんなオリジナリティの欠片もない文章を書いてた気がします。しかも結構な人が、私の意見に賛同してたんですよねえ。
 なぜこんなことを鼻息荒く語っていたのか。よくわかりませんが今思えば、自分で意識しないとカンタンに自己責任論に持って行かれがちな空気に、私も感染していたのかもしれません。

 常に周りを見回して決して他人に迷惑をかけず、「相手に悪いから」という理由で言葉を飲み込み、いつもニコニコ誰とでも仲良く。こういう人が「いい人」で、いい人でいないと社会では認められない。こんな風に考えている御仁は、実は多いのではないでしょうか。私もずっとそうでした。だから小学生の頃、クラスにいた問題児が騒ぎを起こす度に始まる、糾弾大会に積極的に参加してました。大人になってからも迷惑をかけてきそうな人とは距離を取る一方、常に「いい人」でいるように心がけてきました。「いい人=人に迷惑をかけない人」こそが正解だと信じていたので、誰かが失敗しようものなら「自業自得」「自分で何とかすれば?」なんてことを、平気で思ってました。

 でも人間、どう気を付けてももらい事故みたいなことは起こるし、うっかり他人に被害を与えてしまうこともある。それはもう避けようがない。私だって気を付けまくって「自己責任です!」と覚悟していても、予想外の展開に巻き込まれたり誰かに迷惑をかけることはありまくりでした。でもそんな時、怒るどころか「大丈夫だった?」「手伝うからね」と言ってくれた人が周りにたくさんいたのです。もちろん「お前の責任だ!」「お前の失敗はお前がなんとかしろ!」と責め立てる人も多くいましたが。

 2004年以降に急激にドジを踏んだわけではないので、突然考えが変わったわけではない。けれど長い時間をかけて、「私が失敗しても責めたり、自己責任と突き放す人ばかりではない」と実感できたことで、私も他者の行動をジャッジして一方的に責めたり、「迷惑かけるな!」という発言がお門違いだということに気付いていけました。そして世の中で「自己責任」と言われているものの多くが、当人だけに責任がある訳ではないこともわかるようになりました(まあそれでも人の好き嫌いはあるので、嫌いな人は責めることもありますが)。

 私はリアルの友人知人により気付けたけれど、ネットだけ見ていたら自己責任論者の意見ばかりを拾い集めた挙句、今もバッシングに嬉々として参加していたかもしれません。まさにエコーチェンバー現象(同じような言説ばかりを眺め、あたかもそれが真実だと錯覚してしまうこと)の餌食になっていたかもしれません。それを思うと本当に、周りには感謝しかありません。

 ただ2004年と今回で、大きく違うことがあります。それはダルビッシュ有投手や本田圭佑選手など、世界の実情を知るアスリートをはじめ多くの人が安田さんの解放を喜び、自己責任論を批判していることです。なんとZOZOの前澤友作社長までもが、身代金批判に対して「いくら払ってでも人命第一」と言っているほどです。

 どの意見を聞いて何を言おうともその人の自由ですが、私は有名無名知り合いnot知り合い関係なく、解放を喜んだ人たちの言葉を聞いていきたい。逆に自己責任論や人名より金を優先する声を発した主には、今後近づきたくない。もちろんかつての私のように変わる可能性もあるし、対話の機会があればテーブルにはつきますが。

 安田さんの解放を通して試されているのは安田さんご本人ではなく、それを受けとめる1人1人なのでしょう。さて、あなたはどう思いましたか?

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