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#Me Tooできない被害者を、どうか無視しないで

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 自身が受けたセクハラや性暴力について語り、経験をシェアするハッシュタグ「#Me Too」ムーブメントが、盛り上がりを見せています。お元気ですか玖保樹です。

 12月17日には作家でブロガーのはあちゅうさんが、2009年に入社した電通にて、先輩で著名なクリエイターから深夜に自宅に呼び出されたり、暴言を浴びたことなどを告白しました。しかし広告業界の人ってよほど時間の使い方がアレなのか、玖保樹もかつて、深夜の2時3時に何度あちこちのバーに呼び出されたことか。行った私もどうかしてるよ、って話がそれました。すいません。

 このことに対して、認定NPO法人フローレンスの代表理事である駒崎弘樹氏がツイッター上で「はあちゅうさんや、町田さんのように、女性はセクハラ体験を #MeToo タグと共に実企業名付きでスピークアウトしていってほしい。 」
( https://twitter.com/hiroki_komazaki/status/942284919530651648 )
 とつぶやきました。それに私は、強い違和感を感じました。なぜなら、誰もがスピークアウトできる状況にいるわけではないからです。

 玖保樹は現在、ある会社で起きたセクハラ事件の取材をしています。酷い目に遭った被害女性によると、信頼する女性上司に相談したところ「あなたの将来のためにならないから、告発とかはやめた方がいい」と言われたそうで、それが一番悔しくて情けなかったと語っていました。
 勇気を振り絞ったのに「やめろ」と言われたのでは、その勇気はくじけてしまいますよね。こうしたムーブメントが起きると自分のことも言いやすくなりますが、この「やめろ」や、さまざまな理由で告発をためらう女性は多いのではないでしょうか。なぜなら、私がそうだからです。
 以前私は自分が受けたセクハラについて書きましたが、密室での出来事で記録もないため、刑事告訴をあきらめました。その時私は固まって抵抗できなかったので、「合意だった」と言われる可能性もある。そのことにも怯えていましたし。

 今まで性暴力について取材して、その構造をよくわかっているつもりでした。でも同時に私は「私は被害に遭っていない」と思い込み、自分事として考えていなかった。たくさんの声を聞くにつけ、「♯Me Too」をはじめ色々な被害を知るにつけ、自分もこれまで、いくつものセクハラ被害に遭っていたことにやっと気づきました。

 大学時代のバイト先の学習塾では、中学生を教えていた講師に初体験の内容や相手をしきりに聞かれました。ライターになってからはある編集部での作業帰り、方向が同じだからと乗り合わせたタクシーの中で、編集者に「ホテルに行こう」「手を握らせてほしい」などと言われました。ある時は企画会議中、デスクに「昨晩俺はお前をネタに抜いた!」と笑いながら言われたりしました。取材がてら飲んだ際に、相手に大声で「やらせろ」と言われたこともあります。

 そんな時私はきまって笑ってごまかすか、スルーして物わかりのいいふりをしていました。酔っぱらった相手にいきなりキスされた時も、首をべろんべろん舐められた時も、笑ってごまかしました。しきりに「好きだ好きだ」「やらせろやらせろ」と言われて思考停止になり、そのまましたこともあります。そういうのは大抵酩酊しているタイミングなので、何も考えないし考えられないし考えないようにして、相手に理解まで示すようにしていました。そうやって私は、男社会を渡り歩いてきたのです。

 そして私は、これらの加害者を、実名をあげて語ることを未だに悩んでいます。なぜなら加害者は

・自分より力も地位もあるので、こちらの落ち度をついて潰される可能性がある
・「オレはやってない! あの女も抵抗しなかった!」と騒ぐだけでなくそこに下劣なデマをてんこ盛りにして、報復してくることが明白なカス

 のいずれだからです。まあカスだから女性をモノ扱いしてきたのでしょうけど。私はフリーランスなので社内での立場等は関係ありませんが、相手が上司だったりして、なおさら言えない人はたくさんいると思います。

 今はもうこれらのことに気づいたので、セクハラを受けてもスルーしたりごまかしたり、屈服することはありません。まだ告発しないのは、時期を読んでいるに過ぎませんし。さんざん痛い思いをした傷と向き合ってきたので、もう同じ轍は踏みません。でもずいぶん、人を信用できなくはなりましたね。今までが無邪気過ぎたのかもしれませんが。

 だから「♯Me Too」に共感する皆さんは勇気ある女性を持ち上げ、「もっと告発しろ!」と言う前に、その陰にはたくさんの女性が辛い思いをひとりで抱えながら、毎日吐きそうになりながら生きてることに気づいて欲しい。おかしいのはごまかしたり、媚びることしか切り抜ける術がない女性ではなく、社会構造そのものだということにも気づいてほしい。

 私たち女性だって仕事したいです。やりたいことがたくさんあります。それをつかむために性的な何かを差し出させようとするこの社会に、怒りの声をあげてください。「どんな被害に遭ったか教えろ~」と、女性に迫る前に。

 そして少なくとも私は、勇気ある方を称賛するのは他の人にお任せして、力や名前がないからと声をあげられずにこらえている人の傍にいたいし、その小さな声をこれからも聞いていきたい。そうすることで、過去の私も救えると思っているからです。

 AV出演強要問題の続きを書く予定でしたが、今どうしても言いたいことだったので急遽内容を変えました。こんな感じでゆるくやってますが、どうぞ2018年もよろしくお願いします。皆さんにとって、ステキな1年になりますように。

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