自分、玖保樹であります(誰だよ!)。
実は玖保樹、今ちょっとしたことで通院しています。別に命に別状もなく日常生活に支障をきたさない病気ではありますが……。
ただその症状が少し特殊なので、どこの病院でもいい訳ではなく。ので知り合いのツテをたどってある個人病院に行きついたのですが、ここでとんでもないことに巻き込まれました。
先生は当初、「この症状だったら僕が治すから!」と使命感に燃えていました。そして採算度外視で長時間かけて診察と治療をしてくれたことから、玖保樹は「なんて素晴らしいお方なのかしら……」と、すっかり安心しきって頼りきっておりました。しかし2週間経ち、3週間経った頃からなにやら不穏な感じになったのです。というのもそれなりに治療に時間がかかりその間暇なので、一方的に世間話や仕事の話、自分の話などをしていたら「玖保樹さんって面白い人だね」「かわいい人なんだね」と、よくわからない褒めモードになってきたのです。ひえー! 自慢じゃないけど玖保樹は身長150センチ体重150キロのやわらか戦車状態(半分嘘)で、見た目はお世辞にも美人とは言えない……。こ、この人大丈夫か?
いわく先生氏はバツ3で、今までは自分に言い寄ってきた女性と付き合ってきたけれど、初めて自分から人を好きになったのだそうな。いや~ずいぶん特殊な趣味ですねえ、って他人事のように言ってみたけど、以降全然安心できなくなりました。さすがにもうウブなネンネ(BY高橋留美子)ではないので、「初めて好きになった」云々(でんでん、ではありませんよ!)は鵜呑みにはしないものの、非常に混乱しますよねえ。病院でこんなこと言われたら。
いわく「キミは何もしてくれなくてもいい。僕の気持ちを受け入れてくれればいい」とのこと。玖保樹は独身なので、好意を受け取ろうと努力はしてみたものの、やっぱり私にも意思や選ぶ権利はある。だから恋愛感情を持てない相手を受け入れることは、とても難しく無理だった。20代のヤングギャルなら「とりあえず付き合ってみるか」ができたかもしれませんが、アラフォーにもなるとそう簡単に自分を曲げられない。「なんだよ! モテ自慢かよ!」と思われるかもしれませんがモテ自慢じゃないのでどうぞお許しを。
モヤモヤしながらも治療に通っていたある日、事件は起きました。先生氏、誰も見てないスキに玖保樹に抱きついてきたのです! でも「イヤーッ!」と振り払って逃げることもできず、なんとなく「ああ、フリーハグってこんな感じなのかなあ」とか思いながら両手をだらりと下げたまま、ひたすら固まってしまったのです。挙句の果てには「もうこのままでいいかもなあ……」とすら思ってしまった自分がいました。
なんでそんな風に思ってしまったのか。それは私が生まれながらのビッチだから? そういえば前にもこんな風に、一方的に好意を持たれた相手にはっきりNOを言えず、結果的に恨まれたこともあったしなあとか考えながら、その日はとぼとぼと帰りました。でもその夜、何の気なしにネットを見ていたら「凍り付き症候群」について書かれたページに行き着いたのです。
それは人が突然重大なストレスに直面した時、頭の中が真っ白になり心身が凍り付いたように活動を停止してしまう状態のことで、ほとんどの人がそうなってしまうのだとか。とくに性被害に遭った時に泣きわめいて抵抗する人は1割もいなくて、メンタルの問題ではなく心身のレベルで起こる「すくみ反応」なのだそう。さらに犯人に対して非常に従順に振る舞って生存率を最大化し,何とか相手を懐柔して被害を最小化しようとするものだとありました。
(出典:公益社団法人 被害者サポートセンターおかやま (VSCO)「性犯罪被害者の心理」講演論文 )
私が生来のビッチなのではなくこれはただのセクハラで、明確に抵抗できなかったのは「普通の反応」でしかなかった。しかも相手が有利な立場にいるから、なおさら抵抗できるわけもなかった。
さんざんこの場や別の場で「性犯罪の被害者に落ち度などない」と言い続けてきた玖保樹ですが、いざ自分が被害に遭った時は自分を責めてしまった。日頃偉そうなことを言ってわかっていたようで、やっぱりわかってなかった。悲しいやら悔しいやらです。っていうかプロならプロに徹しろよ! 患者にセクハラするんじゃないよ! そんなの当たり前の話でしょ? でもいるんだね、こういうのが……。
その後病院は変えました。例の先生氏は確かに腕はよかったので、他院では同じレベルの治療は得られていないけれど、それでもセクハラで心を破壊されるよりよほどいい。
セクハラの被害者になってみて尚更、被害者に落ち度がないことを言い続けたいと決意することができた玖保樹でありました。皆さま、どうかこんな私の治癒をお祈りくださいまし~!