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一見ただしそうな主張にすり替えていることが恐ろしい

栗林デバ子2016.03.30

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 最近、ある大手企業がてがけたオフィスビルの上棟式に行くことがありました。
 企業の幹部が集まり、神官のもと儀式が執り行われているのを、ちょっと離れたところからぼんやり見ていたんですけど、座っているのは見事なほどダークスーツを着た白髪、年配の男ばかり。参列者、数十人のなかで、女はうしろの方に若い女性が1人座っていただけでした。
 別にこの光景、目新しいわけじゃない。デバ子が社会人になった十数年前の入社式でも壇上に並んでいたのは、みんな男ばっかりでした。でも当時は、男女雇用機会均等法が施行されて20年余り。今は女性幹部も少ないけど、女性社員の採用も増えていくし、世の中はこれからどんどん変わっていくんだろう、なんて思ってましたが、そんなことはないんですね。
 1986年の施行から今年で30年、80年代に企業に入った現在50代にさしかかったと思われる女性たちは今いったいどこにいるんでしょうか。
最近では、さすがに「女のくせに!」とか「女性は男に比べて能力が劣るから」なんてことをいう男はいなくなりましたが、こういう何げない光景にじわじわ心をむしばまれることが増えている気がしています。

 3月25日付の産経新聞に、東京都が韓国人学校を増設するため、韓国政府に約6千平方メートルの都有地を貸そうとしていることに対し、3千人が反対デモを行ったという記事が出ていました。反対する人たちは都庁前で「外交よりも都民にカネを使え」「保育所をつくれ」と訴えたそうです。
 そう怒鳴る人たちの根底にあるのは、これまでも繰り返されてきたヘイトスピーチと同じ感情なんだろうっていうのはすぐに感じました。

 でも、なんだろう。この気持ち悪さ。不気味さ。なぜこういう時に保育所の問題を引き合いに出すんだろうか。

 抗議デモを行った保守系市民団体「頑張れ日本!全国行動委員会」のHPを見ると、そのトップページにあるのは、「南京大虐殺の歴史をただす」とか「朝日新聞捏造」「尖閣諸島で魚を釣ろう」とかそんな訴えばかり。これまで、保育所不足とか待機児童のことなんて1ミリも考えたことなさそうです。

 東京都の舛添知事は「撤回する考えはない」と明言した上で、土地を貸与する背景について、こう説明しています。

・ソウルとは姉妹都市にあり、日本人学校の建て替えにソウル市が協力してくれた経緯がある。

・学校は教育の問題である。東京にいる韓国の子どもたちは将来の日韓が友好関係を結ぶ上で重要だ。

 他にも北区にあるフランス人学校の存在や、貸与を検討している高校跡地がそもそも保育所をつくるのにふさわしいとは思えないと言ってます。

 デバ子もその通りだと思う。
 そもそも、この土地を保育所をしたくらいでは全然解決にはならないのは冷静になればわかる。子育てにおける母親への加重な負担、保育士の低賃金、その背景にあるケア労働への蔑視、さまざまな問題が絡み合って起きている。
 言うのもバカバカしいけど、保育所が足りないのは韓国のせいじゃないでしょ。

「日本人より外国人を優先するな」っていう主張を真に受けていたら、高齢化に国の借金、少子高齢化・・・国内の問題をすべて片付けてからじゃなければ、外国と付き合うことはできないですよね。もはや日本が日本国内だけで完結することはないんだから、鎖国したら生きていけないですよ?
 にもかかわらず、簡単に敵をつくり、一見ただしそうな主張にすり替えていることが恐ろしい。
「外交より保育所を」、「なぜ保育所をつくれないのか」とか、真剣に考えたこともないくせに、苦しむ親の怒りを排外主義に利用しようとする浅ましさに憤りがこみ上げてくる。

 この問題が起きてから、都に寄せられた批判(土地を韓国に貸与するな、側の人たちです)のメールは2500通、電話は700件を超えたそうです。
このニュース、産経以外の全国紙は取りあげていないのですが、本当にそれでいいのかなとも思うんです。
 まともに取り扱うべき話題じゃない、と判断しているんだろうとも思うけど、ネットを見る限り、産経の記事をコピペしたり、ほぼなぞるような形のウェブニュースでどんどん拡散されている。その証拠に、舛添知事も質問を受けて答弁をする事態に至っているわけで。

 在日特権という言葉が実在するかのように浸透していったことを考えると、無視できないような気がするんですよね、本当に悲しいけど。

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