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毎年、夏、陸上自衛隊が開く国内最大級の実弾をつかった射撃演習はまぎれもない戦争のシュミレーション……「俺が守る お前を守る」の「美しい仮面」をつけた世界でした。

栗林デバ子2014.08.28

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みなさん、「富士総合火力演習」って知っていますか?
通称「総火演」。毎年夏に、陸上自衛隊が開いている国内最大級の実弾をつかった射撃演習を見せるイベントです。射撃演習といっても、戦車あり、戦闘機ありのかなり大がかりなもの。デバ子は初めて知ったんですけど、同行者によれば、チケットは無料で抽選制なのですが、20数倍の高競争率で、すごい人気なんだとか。
集団的自衛権の行使は容認され、安倍首相はこんな財政状況なのに、防衛にあてる予算だけは大幅に増やそうとしています。自衛隊の今ってどんなもんなのかな、そんな気軽な気持ちで見に行ってきました。


7月24日、朝7時に静岡県御殿場市にある東富士演習場に着くと、10時からの開幕にもかかわらず、すでにすごい数の人が並んでいます。ぎゅうぎゅう詰めでなかなか前に進めず、駐車場から席(といっても、ゴザに座るだけ)につくまでに50分。簡易トイレの前にはすでに長蛇の列ができていて、日差しも強いし、到着早々、「帰りたい」という気持ちになりました。
トイレへの不安を抱えながらも、あまりの暑さにかき氷を買ったのですが、その隣の自衛隊グッズの屋台の幟には、「俺が守る お前を守る」と書かれた幟がデカデカと立っていて、予想はしていたけど、期待を裏切らない狂ったセンスに、「自衛隊は女性隊員もいるだろうに・・・」とどんよりした気持ちになりました。


他にも、演習が始まるまで、2台の巨大モニターで自衛隊についての説明ビデオを延々流していたのですが、もっともらしい口調で「日本を取り巻く安全保障環境は、年々厳しさを増しています」とか説明されていて、え?!そうだっけ?どこの国のことよ?とか、
演習終了後に披露された予行富士学校音楽隊に勇ましい演奏の曲目が、AKB48の「ラブラドール・レトリバー」だったり、突っ込みどころは満載。


でも、結論をいうと「総火演」は「カッコ良かった」です。
デバ子も18歳だったら入隊を考えちゃったかも、っていうくらい。
(そういうシンプルな考えの若者を狙ってか、会場にはリクルートの幟を持った自衛官が何人も立ってました)
自衛隊員や戦車の迅速でキビキビした動き、最新鋭の戦車数台がシンメトリーに入ってきては同時に砲弾を放つ。地面に着弾すると、煙から数秒おくれて、ものすごい爆音が上がる。地面が揺れ、爆風や衝撃波も体感できる。

 

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敵に侵入された島を自衛隊が奪還する、というシナリオの想定訓練も披露されたのですが、
次から次へと攻撃用ヘリが飛んできて、ミサイルを撃つたびに「隠れていた敵を制圧しました!」という勇ましい解説が入る。ナレーションは低めの男性の声で、なんともいえず揺るぎない印象を醸し出しています。
F2戦闘機による空爆が披露され、しかも、煙の向こうには青い空と富士山。
デバ子だけでなく、周りの人たちも、爆音に「きゃーっ」「おおーっ」と爆音に耳を塞ぎながらも、その迫力と臨場感に目をキラキラ輝かせて、笑っていました。
フィナーレは、数十台のヘリコプターによる低空飛行と地上での一斉爆発。美しくて、迫力があって、鳥肌が立ちました。


そして同時に怖くなりました。
それは、まぎれもなく戦争のシュミレーションだったから。ショーとはいえ、爆撃で制圧した「敵」は人間です。そして、それを見て、テンションが上がっている自分。ニュースで、北朝鮮や中国の一糸乱れぬ軍事パレードを見ていた時は、他人事にしか感じなかったけど、目前にすると、一糸乱れぬもの、規律のとれたものを「美しい」と感じてしまったこと。特攻隊が潔く散る桜の花に例えられたり、国のために命を捧げる自己犠牲の精神が美しいとたたえられたり、戦争は「美しい仮面」をつけてやってくるんだと実感しました。


8月15日は終戦記念日でしたよね。
安倍首相は全国戦没者追悼式典で、「祖国を思い、家族を案じつつ、戦場に倒れられた御霊、戦禍に遭われ、あるいは戦後、遠い異郷に亡くなられた御霊、いまその御前にあって、御霊安かれと、心より、お祈り申し上げます。戦没者の皆様の、貴い犠牲の上に、いま、私たちが享受する平和と、繁栄があります。そのことを、片時たりとも忘れません」とスピーチしました。日本の加害責任についてはまったく触れずに。


「家族を案じつつ倒れた御霊」、「貴い犠牲」 その通りだと思うし、明確に否定できないのだけど、なんかもやもやするのは、その美しい言葉とは逆の残虐でむごい現実があったことにまったく触れられていないからだと思う。
日本が加害者としてやったこと、被害者として受けたことが、あいまいで美しい言葉で置き換えられていく。
第2次世界大戦が「感動を呼ぶ映画」や「必ず泣ける小説」として、消費されていく空気のなか、「正しい」歴史認識や、「美しい」日本を訴える人たちに、自分はどう抗ったらいいのか。そんなことを考えさせられました。

 

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