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話題の旭化成「共働き研究所」の「妻の家事ハラ」ムービーからも見えるこの国の「ハラスメント」という言葉の耐えられないほどの軽さ。

栗林デバ子2014.08.04

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みなさんは、もう見ましたか?旭化成「共働き家族研究所」のドラマ風ムービー

がっかりっていうか、笑っちゃいます。

 

エプロン姿で丁寧にお皿を洗う男性。「よーし、終わった」と達成感を感じた瞬間、妻らしき女性がやってきて一言。
「お皿洗いありがとう。一応もう一度洗っておくね」
がっかりしたのか、とたんに暗い表情になる男性。
「その一言が俺を『食器洗い』から遠ざけた」

 

スクリーンショット 2014-08-04 16.46.26.png

はぁ?!皿洗いしないための言い訳にしても、もっと気の利いたヤツ考えてほしいわ。


旭化成のホームページに上がったドラマ風ムービーはこんな調子で、たどたどしい様子で料理をする男性に妻が一言

「かくし味とかいらないかね」→「その一言が俺を『料理』から遠ざけた」。
掃除を終えた男性に妻が一言「早く終わったね。ちゃんとやった?」→「その一言が俺を『掃除』から遠ざけた」篇と延々続いていきます。

 

すべて、けなげに家事を「手伝う」男性が妻の「心ない一言」で家事から距離を置く、って設計。で、そういう一言を旭化成では「家事ハラ」と呼ぶらしいです。
まあ、皿洗いや料理から距離を置いて生きていければ良いんでしょうけど、残念ながら生活ってそんなわけにいかないんでねー。

 

0804.debako.png

どういう発想からこんな動画が出来たのか。それは共働き家族研究所が実施した「イマドキ共働き夫婦の家事分担の実績と、意識について」という調査からの考察だそうです。


その調査によれば、最近の夫婦はスクラム体制で、家庭と仕事を両立させるケースが増えている。ただ、「その中でもっと妻を助けたいと考えながらも家事に自信がないあまり家事に関与できない夫(チョイカジパパ)が主流」になってきているんだとか。


だから、「彼らの家事参加意欲を後押しし、共働き夫婦を応援するための暮らしと住まいの提案」をするんですって。


おーい!!「もっと妻を助けたいチョイカジパパ」って、「家事参加意欲を後押し」って何すか?結局、いまだに家事は女がやるもの、最近のステキな夫は手伝ったりもするよ、ってこと?で、そんな男性陣のやる気をそがないためにも、妻は心を砕いて「上手、上手」と褒めて育てていってね♪って。そんなのが結論なの?
子どもじゃあるまいし、何で女が育ててあげなきゃいけないのか。
こんな不平等で女にばかり負担のかかる非道な体制を「スクラム体制」と呼ぶって、この調査を考察したメンバーには女性はどのくらいいたんでしょうか。

 

kajihara0804.jpg

もともとの「家事ハラ」という言葉の提案者は、『家事労働ハラスメント 生きづらさの根にあるもの』(岩波新書)を書いたジャーナリストの竹信三恵子さんです。介護とか育児とか家事とか、これまで主に女性が担ってきた労働がいかに軽視され、過小に評価され安い賃金しか支払われてこなかったか。そこに依拠する差別や人権侵害を告発した本でした。


男性が家事や育児に参画できないのは、ジェンダー的な理由に加え、日本型企業の長時間労働常態化社会のなかで、時間が奪われていること。結婚して子どもができれば、必然的に女性が仕事を辞めたり、非正規になったりしなければ、家庭が維持できないからですよね。デバ子の会社でも、数日(たった数日ですよ!)の育児休暇をとる男性でさえ、まだまだ珍しいし、残念ながら、それでも「まったくとらないよりはマシか・・」みたいな雰囲気があります。
男女雇用機会均等法ができて30年近くたつのに、多くの女性が出産のタイミングで離職しなければならない原因はそこにあるはず。そんな大きな社会問題を、「女性の気遣い」とかいう見当違いなことに回収するなんて。


この旭化成の結論を見て、「そうなんだよぉ」とか、思うのは企業社会でのさばっているオッサンと、労働時間減という施策なしに、女をもっと働かせようとしている安倍総理だけではないでしょうか。


そしてもうひとつ。ため息が出ちゃうのは、日本での「ハラスメント」という言葉の耐えられないほどの軽さ。
都議会でのセクハラやじ発言の時も思ったけど、ハラスメントが「言われたら、ちょっと傷ついちゃう一言」みたいなニュアンスで受け止められてますよね。セクハラもマタハラも、ハラスメントは個人の尊厳を傷つける立派な人権侵害なのに。
脱法ハーブも恐ろしさが伝わらないということで「危険ドラッグ」に改名しましたが、「ハラスメント」も、「尊厳抹殺行為」とかもっとおどろおどろしい名前に変えないとダメなんでしょうか。

 

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【栗林デバ子・くりばやしでばこ】

週刊誌記者。事件や裁判、犬とK-POPをこよなく愛するおひつじ座。シンガポールの動物園でハダカデバネズミを見てから、その怪しい魅力にハマっている。
ひっそり土の中から世の中にキバをむくデバ子・・・。

 

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