こんにちは。弁護士の打越さく良です。(本サイトフェミニズムカテゴリーで毎月、コラム連載中です。http://www.lovepiececlub.com/feminism/uchikoshi)
6月18日、都議会で塩村文夏議員が女性の妊娠・出産をめぐる都の支援対策を質問していたさなか、「自分が早く結婚すればいい」「まずは自分が産めよ」「子どもを産めないのか」とのヤジが飛ばされたことが、各紙で報道された。
いや、まず塩村都議が自身のTwitterで投稿したところ、リツイートが広がり、それで報道各紙が後追いで取り上げるに至ったのである。
署名サイト「チェンジ・ドット・オーグ」上のヤジを非難し発言者の処分を求めるオンライン署名は、23日夜までに何と9万人を超えた。
国政も地方も、残念ながら、セクハラヤジは珍しくない。法案審議を傍聴していたときに、同じ趣旨の質問をしていても、男性議員よりも女性議員への嘲笑ヤジのほうが明らかに激しい場面に出くわして、暗澹たる思いになったことがある。政治の分野での男女平等がまだまだ遠いのは数だけではない、と実感した。
23日午前に鈴木あきひろ議員が「早く結婚すれば」発言ひとつを認め、会派を離脱した。鈴木議員と未だ名乗りでない他の議員にとって、セクハラヤジなど日常茶飯事であり、まさか1年生議員の塩村議員へのヤジがこんなに大問題になるとは予想していなかったはずだ。ネット上のヘイトスピーチに辟易していたが、ネット時代の底力に久々に感じ入った(あ、ネット上連載させていただいている身の上ですみません!)。
いや感じ入るだけでなく、セクハラヤジの何が問題か、弁護士のはしくれとして解説をせねばならない。と意気込んでいたところ、佐々木亮弁護士が的確に解説してくださっているので、紹介する。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/sasakiryo/20140620-00036549/
法的側面はこれでばっちり。ヤジには、「出産は女性の問題」という固定観念が露骨だ。「こんなとこで質問してないで、結婚して出産でもしろ」ということだろう。それは問題だっ!と抗議するひとが何万人もいるなんて、ほっとした。
ところが、「こんなべっぴんさんなのだから、結婚できないとは思えない」、「恋のから騒ぎ」に出ていた塩村都議が「そんな野次を本気にするとは思えない」といった言説もあれば(http://blog.livedoor.jp/columnistseiji/archives/51587375.html)、塩村都議の過去の言動を取り上げて都議に不適格だとの匿名の書き込みもあふれている。
「結婚できないと思える」「べっぴんでない」人であれば、セクハラの被害としてゆゆしきことであるが、塩村都議は違うってこと?恋愛について開けっぴろげに語っていたんだから、セクハラごときにめげるはずもない?
どこかで聞いたことがある。耳にタコができるほど。
セクハラや性犯罪の法廷で、加害者の加害行為よりも、被害者が性的に奔放だったかどうか、セックスアピールがあったかなどがいつのまにか主題になってしまう。
あれ、そこですか、争点は…。そうではないでしょう。これまたフェミニストにとっては古典的な問題。これもおいおい取り上げたい。