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ネットを中心に話題になっているので、ご存知の方も多いと思いますが、敢えてLPCでも取り上げたいと思います。
山梨県山梨市が、上野千鶴子さんの講演会を中心にしました。税金を使った講演会に呼ぶ人物として相応しくないという約10件の抗議メールなどを理由に、新市長の望月清賢氏が判断したという。
164人の参加希望者があった講演会のタイトルは「ひとりでも最期まで在宅で」。恐らく、喉の渇きを癒すように、上野さんの言葉を待ち望んでいる女性たちが、たくさんいたはず。ふだん家族のケアで外になかなか出られない女たちが、きっと日を数えるように待ち望んでいたはず。そういうタイトルだし、そういう話を求めている女たちが、この国にはたくさんいるというのに・・・。
朝日新聞の報道では、反対意見が「約10件メールなどで寄せられた」とある。(ちなみに産経新聞では「複数寄せられた」と曖昧な表記でした。あたかも、「抗議がいっぱいきてます~」、みたいな雰囲気を大切にしているようです)
抗議の内容は、上野さんの過去の発言や過去の書籍の「タイトル」(!)についてだったとか。
お悩み相談に寄せられた中学生男子の「性欲解消方法」について、「熟女にお願いすればいい」と言った回答が問題になったり。80年代に書かれた「セクシィ・ギャルの大研究」「スカートの下の劇場」といった上野さんのご著書の「タイトル」・・・もう一度言います、タイトル! が問題になったとか。
この件については上野千鶴子さんご自身が、ブログで経緯と対応について記されている。
この中で上野さんは、市長に抗議の意志を伝えていること、そして今後法的対応をとることもできるということ、また山梨市民に対しても、
「住民監査請求を監査委員にあてて出すことができます。その対象は⑴上野に支払うことになるであろう違約金、⑵ポスターやちらし等広報にかかわる費用、⑶会場のキャンセル料その他、中止にともなって発生する費用の合計額です。市の財政にそれだけの損害を与えたことで、市長を訴えることができます」
と、声をかけています。
その上で
「上野は予定通り18日に講演する用意があります。その日は山梨市民のみなさんのために空けておきましたから。
それを宣言して、山梨市の対応を18日当日までお待ちすることにしましょう。
わたしの側からはもっとも寛容な対応だと思っておりますが、これに望月市長はどう対応なさるでしょうか? ボールは市長の手にあります」
山梨市長、上野さんが日本一、ケンカに強い女だって、知らなかったのかもしれない。
そしてもしかしたら・・・フェミニストだってことも、知らなかったのかもしれない。というか、フェミニストが何かとか、ジェンダーとか、そういうこと、何も知らなかったのかもしれない。分からないのかも知れない。
で、ネットでちゃちゃっと見た「中学生に熟女に頭下げろと言っている!」「なに! スカートの下だとぉおおおお!」と、頭もチンコもカーッときちゃっただけなのかもしれませんね。・・・お気の毒に。
山梨市長。年齢は上野先生よりも一歳年上の1947年生まれ。上野さんと同世代の男です。山梨県HPの「市長のページ」では、
「新たな挑戦には勇気と努力が必要です。私は、新しい発想で市民の皆様や現場の声をお聞きしながら、市政を着実に前進していきたいと考えています」と市長としての抱負を語っていらっしゃる。
あーあ、上野さんとのケンカには、勇気や努力なんて、何の役にも立たないよ。徹底的な、論理的思考で、なぜ上野さんが「ふさわしくない」のか、説明しないと勝てませんから。
さぁ、みんなでこのケンカ、見守りましょう。
ちなみに市長への手紙を求めているページがありますので、皆さん、送ってみませんか?
ところで、今回のニュースは「上野千鶴子」さんが対象になったことで、大きなニュースになっていますが、このようなケース(市民団体が企画した講演会やイベントが直前に「市民からの抗議」という理由で中止に追い込まれる)は、00年代からあちこちで聞かれるようになりました。攻撃の対象になるのは、女性の生き方を考える講座や、ジェンダーに関する講座のものが多いと言われています。
「抗議をうけた」「講師にも迷惑がかかるから」などという理由で、リスク回避の体で、こういう「言論弾圧」が行われてきています。大変、深刻な問題です。
(text はち)