3月8日は国際女性デーです。
1975年に国連が制定した記念日ですが、この日はどんな日かご存知ですか?
「国際女性デー」の歴史は大変古く、起源は1900年代はじめまでさかのぼります。急速な産業発展と共に人口が爆発的に増え、都市に人が集まり、働く女性が増加した20世紀初頭。女性の権利に対する意識が広がっていった時代です。
そんな時代背景のなか、1908年ニューヨーク市で、選挙権、賃金向上、労働時間の短縮を求めて、15000人の女性たちがパレードを行いました。さらに翌年の1909年には前年のパレードを記念し、アメリカ社会党が「ナショナル・ウィメンズ・デイ」を制定したのです。この日を境に、アメリカでは1913年まで2月最後の日曜日が、ナショナル・ウィメンズ・デーとされていました。
1910年、第二回職業婦人国際会議がコペンハーゲンで開催されました。ここで、ドイツの政治家でフェミニストのクララ・ツェトキン(1857-1933)が、国際女性デーの考えを提唱しました。
「毎年同じ日に、全ての国で、女性の要求を主張する日にしよう」と。
その翌年には、オーストリア、デンマーク、ドイツ、スイスで初めて国際女性デーが3月19日に行われました。ここで、1万人以上の人々が働く権利、教育の権利、選挙権、女性差別撤廃を求めて声をあげたのです。
女性デーの動きはヨーロッパに留まりませんでした。1913年、ロシアで初めての国際女性デーの運動がおこりました。戦争反対の声をあげ、女性たちの結束を求める日として、国際女性デーが3月8日に制定されました。ロシアでは今も、3月8日は女性の日として、国民的な休日とされています。この日は、男性たちは早起きして市場に花を買いにいき、娘や妻、母たちに花をプレゼントする日です。
ものすごーく短縮しながら国際女性デーの起源を説明しましたが、そうなんです、国際女性デー、単なる「女の日」ではなく、女たちの闘いの歴史が背景にある、熱い熱い記念日なのです。そして今でも、この日に、世界中の女性団体、また政府が、大きな一つのテーマをもとに様々なイベントを行っています。
・・・・とはいっても・・・・日本では、なかなか3月8日は国際女性デー! という記念日、なかなか広まっていないような・・・・。未だに女性の議員率が世界最低レベルを記録し、男女の賃金格差は問題であり続け、女性の貧困はさらに深刻化し、家事労働を女性の方が圧倒的に担っている現状を考えると・・・まだまだ私たちは、声をあげなければいけないのではないかしら・・・と思うのだけれども。
ところで、国際女性デーでは毎年、テーマを掲げます。その大きなテーマに沿って、各国各地域の女性団体や行政がイベントを行うのですが、今年のテーマは、
「Equality for women is progress for all」というもの。
直訳すれば、女性に対する平等は全ての人々への進歩。
もっと意訳すれば、「女性差別してたら、滅びるよ」
・・・ですよね!?
というわけなのですが、今回、この記事を書くにあたり、日本でこのテーマがどのように紹介されているかを知り、本当に驚きました。国連ウィメン=UNWomenは、女性のための国連機関ですが、この国連機関を支援する国連ウィメン日本協会というところが、高々と「国際女性デーのテーマ」を、このように掲げていました。
「女性の進歩は、世界の人々の進歩です」
Equalityを敢えて「進歩」と訳しています。
女性の進歩は世界の進歩。
さぁ、繰り返し言ってみよう! 女性の進歩は世界の進歩! ・・・意味わかんないですね。何を言っているのか、わからないテーマになってしまっています。女性の進歩って、なんすか?
いったいなぜ、このような意訳にもならないような、誤訳を敢えてするのでしょう?
「平等」という言葉が強すぎるから? だとしたら、誰にとって、どう「強い」のか?
日本には「男女共同参画」という不思議な言葉もありますが、これも「男女平等」という言葉を嫌う議員たちの手によって、無理矢理生み出された言葉だと言われています。「平等」という言葉を、とても恐がり、タブーのようにしたがる日本社会。国際女性デーの歴史がとても遠く、そして私たちは、まだまだ自分たちの声をあげきれていないのではないか、あげにくくなっているのではないか・・・と考えずにはいられません。
写真は国際女性デーを提案したクララ・ツェトキンが印刷された昔のドイツのお札です。ドイツでは、フェミニストがお札になるのね!
追記:3月10日に国連ウィメン日本協会のHPを確認したところ、いつの間にか訳が「女性が平等を享受することは、全ての人々にとっての前進である」と書き換えられていました。本コラムの指摘に耳を傾けていただけたのでしょうか? しずかーに、何事もなかったかのような、書き換えです・・・。一言、言い訳でもしてくれればいいのにね。
(text はち)