今にも雪がちらつきそうな曇り空。
私は今日、友達に誘われて雪国のかまくらイベントを見物に来ていた。
といっても、合コンの人数合わせみたいなもの。男女四人ずつの団体だから動きは鈍いし、寒いし、想像以上の人混みだしで、私のテンションは下がりっぱなしだった。
雪道の両側には、かなり大きなかまくらがぽつぽつと並び、豚汁とか甘酒と染め抜かれた幟が立てられている。
かまくらの合間にも似たような屋台が並び、まさにお祭り。初対面の男のコと、何とか盛り上がる話題を探すより、適当にブラブラしている方が楽しいくらい。
なんて、あれこれ目移りしているうちに、私、グループとはぐれてしまっていた。
さすがに心細くなって、辺りをキョロキョロする私の鼻先に、ひらり、と粉雪が舞い降りてくる。
思わずストールの前をかき合わせた私。
そのとき、
「あー、降ってきちゃったね、よかったら入らない?」
後ろか声をかけられた。
ゆっくり振り向くと、ひときわ大きなかまくらの中から身を乗り出して、私に微笑む
ーーー四条丸駆クン!
フリースの上に、会場になっているスキー場の名前を染めた半纏を着ているだけなのに、全然寒そうじゃない。分厚い筋肉に覆われた身体から、眩しいほどの熱量が発散しているからだ。
ネックウォーマーをターバン風に頭に巻いて、ツンツンしたヘアスタイルを半分隠しているのがお洒落。
灰色の冬景色を背後に、彼がいるだけで、そこだけ春たけなわみたいな温かさを感じた。
灼けた肌が、お陽様みたいに、触れるそばから雪片を融かしていく。
ーーーか、か、かあっこいいい!
私の全身も、カッと熱くなった。
胸が詰まってろくな返事もできないまま、私は手招かれるまま、かまくらの中に入る。
薄暗い丸い空間は、想像よりずっと温かかった。
入り口から左右の壁に、向かい合うように雪が椅子形に固められて、敷物が何枚か重ねられている。
その間には、小さな火鉢。
天井まで二メートルくらいありそうなのに、彼の存在が、その空間をいっぱいに満たしているみたい。
「ほら、横に座ったら?」
彼はそう言うけど、どこもかしこも彼の存在感が詰まっていて、弾かれてしまいそう。
ためらう私は、次の瞬間、
「きゃっ!?」
腰を掴まれ、彼の膝に乗せられていた。
「しょうがないなぁ、じゃあ特等席においで」
なんて、いっそう蕩けるような笑顔で言われたら、手足がグニャグニャになっちゃっても、しょうがないじゃない。
彼は、膝の上に私を横抱きにすると、顔を近づけてくる。
何度も触れ合う、粉雪のように軽い、甘いキス。
だけど、その熱さはまるで、冬の花火。
チュッチュッ、とついばみ合う音が、火花のように目の奥で躍る。
ウソみたい。
ディープキスより気持ちイイなんて。
「……ふぁぁ……」
思わず、うっとりした鼻声が出ちゃう。
彼は、そんな私のダウンジャケットの前を開いて、温かな手を差し込む。
さっきのキスみたいに、胸の先をクルクルとついばまれる。
「あぁぁ……!」
たいした刺激じゃないはずなのに、腰がビクビク跳ねるほど感じてしまう。
私、ここまで敏感だったっけ!?
「……雪のせいだよ」
今度は私の耳を甘噛みしながら、彼が言った。
そうなの?
雪の日って、淫らな気分になるの?
雪国の人達って、皆そうなの?
そうなのかもしれない。
さっきから、お尻に当たる彼のモノは、レギンスとデニムを重ねていてもはっきりわかるほど、堅く大きくなっている。
「……雪のせい、なんだ……」
私、熱に浮かされたような気分で、鸚鵡返しにそう言った。
それから、ストールを彼の肩に巻いて二人の姿を隠すと、彼の股間を解放した。
「……ッ、熱いぃ、融けそう……っ!」
私、彼の首にかじりついて、欲情の赴くまま、腰を振る。
腿まで剥き出しにした私のワレメを、同じように露出した彼のモノが直にこすっているの。
ヌチュヌチュ、恥ずかしい音が止まらない。
クリの根元と、入り口をゴリュゴリュと攻められるごとに、強烈な快感が全身を貫く。
まるで、子宮の底まで突き通されているみたい。
灼熱の棒が、私の中の雪の城を、みるみるうちに融かしていくの。
「もっと! もっとキスして……入り口とクリに、チュッチュしてぇ!」
「いいの? 入っちゃうよ? 君の一番奥に、亀頭でキスしちゃうよ?」
涎と一緒に、はしたない言葉を垂れ流す私を、いっそういやらしいセリフで煽る彼。
そんなの、もう、たまらない。
「イイッ、入れたい……奥に、子宮にチュゥして、早く早くゥッ!」
勢いを増す雪の気配も、外の喧噪も、自分がどうしてココにいるのかも。
何もかも忘れて、私は彼を求める。
そして。
ズプッーーー
ーーー入った!
背を反らせて、私はエクスタシーの叫びをなんとか呑み込む。
目の前が真っ暗で、身動きもできない。
コレが、四条丸クンの……、と、いうには冷たいというか、カタすぎるというか。
思わず、瞬き。
滅茶苦茶に腕を振り回すと、ズボッ、という感じで身体の自由が戻った。
目の前には、マンガみたいな人型の窪みがついた、雪の山。
何かの理由で崩れてしまったかまくらの名残なのか、これから作られるかまくらなのか。
過去と未来、私はどっちの空間で、彼に出会ったんだろう。
どうせ妄想、そうわかっていても、考えずにはいられない。
「あ、いたいた。こんなとこで雪塗れになって、何してるの?」
雪の山を前に、佇む私の肩を叩いたのは、合コン参加者の一人。ヒョロッとした眼鏡の社労士クンだ。
かっこよくも、セクシーでも、お陽様みたいでもないけど、モコモコダウンと毛糸の帽子にスノーシューを装備した姿には、どこかホッとするような現実味があった。
「あはは、ボーッとしてたら雪山に突っ込んじゃった! はっずかしー!」
大袈裟に笑い、雪を払い落とす。
「朝早かったから、疲れたんじゃない? ロッジで飯にしようってなったから、早く行こうよ」
社労士クンは笑い飛ばしもせず、雪を払うのを手伝ってくれる。案外ジェントルマンなんだ、と見直す私。
私の現実、今年はもう少し、いい感じになるような気がした。