LPC官能小説第27回「厚いてのひらと、節くれ立った、だけどすごく器用そうな指先に…」
2018.11.27
紅葉シーズンも終わり頃。
同期のコに誘われて、勢いでOKしちゃった『古都で楽しむなりきり舞妓はん体験!』に出かけた私。
元は本物のお茶屋さんだったという、優雅でゴージャスな木造の日本家屋に案内されて、可愛い和菓子や香り高い抹茶のおもてなしを受けながら、カタログで着物選び。
行く前は、いまさら舞妓はんもないでしょ、なんて後悔していた私も、すっかりテンション爆上がり。
華やかな刺繍入りの真紅の半襟がついた長襦袢を着せてもらってから、本格的なヘアメイクとお化粧が始まる。
地毛ではえぎわを演出してからかつらを乗せると、いつもの自分とはまるで別人。
やわらかな刷毛で、デコルテから首の後ろまで、真っ白な下地を塗られる気分はとっても官能的。
隣りの同期ちゃんも、ちょっと目を潤ませて興奮しているみたい。
太く短い眉に、目尻の紅。実際の輪郭より小さく、ぽってり塗られた口紅と同じ色。
それから、
「ほな、お着物着付けてもらいましょか」
これが”はんなり”か、と感心する柔らかな口調で、女性スタッフが言った。
同期ちゃんと別れて、四畳くらいの小部屋に案内される。
まず目に入るのは、衣桁にかけられた振り袖。
古都の青空を思わせる、目の覚めるような青地に、楓や銀杏の紅葉が舞う、季節感たっぷりの柄がステキ。
今だって、かなり現実離れした日本人形みたいな私。この振り袖に身を包んだら、どうなっちゃうんだろう。
そのとき。
「ようこそ、おこしやす。今日はよろしゅうお頼もうします」
太く柔らかな声と同時に、襖が開いた。
振り返ると、ツンツンの短髪に、肩も腕もいかつく盛り上がった、濃紺の作務衣。
衿の合わせ目から覗く、豪快に盛り上がった胸板がセクシーすぎるこの男性は、
「……駆、クン……」
今は海外で活躍中のはずの、あの四条丸駆クン、その人じゃない!?
呆然とした私のつぶやきは、彼の耳には届かなかったみたい。
彼、当然のように慣れた仕種で衣桁から振り袖を外すと、
「ウチは着物も帯も、舞妓はんがほんまに使いはったものをつこてます。この帯、女衆には扱われへんので、ボクら男衆が締めさせてもろてますのや」
なんて、流暢な関西弁で言いながら、私の肩に着せかける。
花街では男性スタッフのことを”おとこし”って呼ぶのか、なんて豆知識に感心する私。
それから、厚いてのひらと、節くれ立った、だけどすごく器用そうな指先の感触に、ドキッとする。
うっとりしていたのも、つかの間。
「……ふぐっ!」
胸の下あたりに、絞め殺されるかと思うほどの力で、細い紐を巻き付けられた。
「しっかり踏ん張っといてくださいよぉ、だらりの帯はこんなもんやあらしまへんからね」
「ひぃぃ……」
タオルや晒しを巻かれ、紐二本で寸胴体型に締めあげられて、もうしゃがむことも、腰をひねることもできそうにない。
「でもお客さん、いまどきのお嬢さんと思われへんような、ええ雰囲気ですね。お支度のしがいがありますわ」
背後から、容赦ない力とは裏腹な優しい声が響く。
「……そ、そんな……はぁッ!」
飴とムチみたいに、次の瞬間、内蔵が口から飛び出しそうなほど、ギュッと締め込まれた。
「はい、ここからが、我慢のしどころですよってな」
「……ッ、く、うう……ハイ……」
歯を食いしばって頷くけど、彼が縦横無尽に帯を操るたびに、私の足はフラついてしまう。
履き慣れない足袋のおかげで、畳の表面をうまく掴むことができない。
「あかんなあ、お客さん、フラフラやないですか」
笑い混じりに言われても、どうしようもない私。
「ここに、キュッと力を入れて!」
「ひゃんっ!?」
彼、いきなり前に回した手で、私の下腹、というかワレメのすぐ上あたりを、パンと叩いたの。
軽い感触なのに、奥までジンッと響いて、背中に震えが走った。
さっきまでの息苦しさに、たまらない甘酸っぱさが混じり始める。
「んんっ、んぅう……」
「そうそう、お腹の奥ぅを、ギュッとして……」
彼の言うがまま、私は両腿を擦り合わせ、アソコの奥を絞るように力を込める。
触れられてもいないのに、快感が目覚めて、ざわざわと全身を浸していく。
帯を締められていく感覚が、アソコの感覚とシンクロする。
まるで、私自身が帯になって、彼を締めあげているみたい。
「はぁ、はぁあッ!」
「もうすぐ、ですよって、気張ってください!」
「は、はいぃ……」
きゅんきゅん、ギューッと、締めつける。
結び目から悦びの雫が滲みだして、彼の指先を濡らす、ような感覚。
目の奥に火花が散る。
いつしか、カクカクと揺れる腰を、彼の逞しい腕が支えてくれている。
その腕に自分の手を突っ張って、私、喘ぎながら仰け反った。
もう、ダメ。奥の方で、快感が爆発寸前。
幾重にも巻き付けられた帯さえ、吹っ飛ばしてしまいそう。
「ほな、いきますか?」
そんな私を甘やかすような、彼の囁きに、
「イく……っ、イ、きますぅーーーッ!」
かすれた声で答えながら、淫乱舞妓はんは達してしまった。
そのはずだった。
「はい、ようお気張りやしたなぁ、お似合いですよ」
だって、駆クンも、しわがれた声でねぎらいの言葉を。
……しわがれた、声!?
思わずガバッと振り返ると、作務衣を着た男性は、白髪のおじいさん。
金襴緞子の絨毯のような帯と、よく格闘できたな、と思うほど小柄だった。
今回は、どこから妄想だったか、わかりやすいな……。
ため息をついて、そう思う私。
着付け体験が強烈すぎて、それからの撮影や散策体験は、あまり印象に残らなかった。
だけど、これが最初で最後ってわけじゃない。
今度はひとりで、舞妓はんよりアダルトな、芸妓や花魁体験に挑もう。
そう決心しながら、古都を後にしたのだった。