ーー新カレゲット! 優良物件だぞ〜!
スマホをブルッと震わせたのは、田舎の友達からのLINE。
ラブラブムード満載のスタンプ付きだ。
ちょ、マジか!
去年、空振りに終わった夏祭りに出かけた面子の1人。あんなショボい街で優良物件に出会うなんて、奇跡でもなきゃ、ありえない。
私なんか、カレシいない暦丸二年なのに。
唇を噛み締めて、ジェラシーの念を返信しようとして、思い直す。
頃はエイプリルフール。
ちょっとしたウソなら許されるんじゃない?
ーー私もすっごい優良物件押さえたとこ! 今日、初めてウチに来るんだよ〜!
ゴクン、と喉を鳴らしてから、送信ボタンをタップ。
大丈夫。お盆まで帰省しないし、その間に別れたことにすればいい。
ちょっと惨めだけど、見栄を張りたいお年頃なんだもん。
誰もいない、来る予定もない部屋の中で、私はため息をついてスマホを放り出した。
ツッコミが来たらどう返信するか、しっかり考えておかなくちゃ。
ぼんやりとベランダの窓に目をやる。
アパートの裏にある中学校のグランドは、桜の花盛り。
どこもかしこも満開ってやつかあ。
もうひとつ、ため息が漏れそうになったとき、
ピンポーン!
玄関の呼び鈴が鳴る。ビクンと飛び上がる私。
春たけなわの日曜日、宅急便の心当たりもない昼下がりに、一体誰が!?
まさか、まさか、まさか。
心臓の鼓動が、ひとつの言葉になって轟く中、私は玄関に向かう。
ドアスコープを覗き込むと、魚眼レンズに歪められた外廊下に佇むのはーーー
四条丸駆(しじょうまる かける)君!?
ウソが本当になっちゃった!?
チェーンを外すのももどかしく、私はすごい勢いでドアを開けた。
彼が、素早く一歩飛び退いたくらい。
さすが世界的アスリート、惚れ惚れするような身のこなし。
春の青空に映えるモスグリーンのシャツに、隆々と筋肉が盛り上がるボディが、ナチュラルに包まれている。ジャケットは茶色がかったベージュ。
まるで、逞しく育った若い樹木みたい。
呆然と立ちつくす私に、彼は糸のように目を細めて、くしゃっと笑う。
「お招きありがとう……初めてお邪魔する女の子の部屋に、何を持って行けばいいか迷ったんだけど、これ……」
輝くような笑顔と一緒に差し出されたのは、カスミソウを少し大きくしたような白い花のブーケ。
可愛らしい見かけだけど、その香りは甘く濃厚で、セクシーでさえある。
無意識に花束を受け取り、深く息を吸うと、熱い蜜を全身に浴びたみたいに、頭がクラクラした。
香りに魅入られる。
こんなこと、ちょっと前にもなかったっけ?
そんなことを思いついたとき、私はもう、部屋の真ん中で彼に組み敷かれていた。
「……がっついて、ごめん……でも、花の香りに包まれる君が、あんまりセクシーで……」
鼻先が触れそうなほどの近さで、彼が熱く囁く。
私、返事の代わりに彼の背中に腕を回した。
両手の指先がどこにあるかわからないほど、広く厚く、弾力に満ちた背中。
彼からも、花の香りがする。
首の後ろがワサワサすると思ったら、私、花束を枕にしていたの。
私の香りが、彼にも移ってるんだ。
そう思ったら、お腹の奥がカッと熱くなった。
言葉を探す余裕もなく、私、下から彼にしがみつく。両脚の間にある彼の右膝に、アソコを押しつけて、くねらせる。
「……っ!」
それだけで、舌の付け根が痺れるほどの快感が沸き上がった。
「君も、おなじ、なんだね……嬉しいよ」
彼はなあやすように左手で私の頬を包み、ゆっくりとキスしてきた。
「んぁ……ぅんん……」
クチュクチュと舌の表面を舐め合う、刺激的な深いキス。
同時に、大きな掌が私のバストを包み、膨らみ全体を大胆に捏ねる。
「……ふぁあッ!」
捏ね回される部分から、アソコにも負けない重い快楽が生まれて、鳥肌が立ちそう。
さらに彼は、ゴツゴツした膝頭を、私のアソコに分け入らせた。
下着越しに、ヒダを左右に分けるように、グッグッと刺激されるのが、たまらない。
「あ、ソレ、それ、すごく……」
「もっとよくなるように、君も動いてよ」
「そんなぁ……ッ、んくっ、ううっ、イイッ!」
私のはしたない下半身は、彼の言うがまま、はさみ込んだカタマリにクリを押しつける。
そのまま円を描いたり、前後にこすりながら、脳味噌が溶け出しそうに甘美な悦楽を貪った。
「……ねぇ、もぉ、欲しい……ココに、入れて、もっとイイの、入れてぇ」
私、オナニーを覚えたばかりの小娘みたいに、彼の膝にアソコを擦り付けながら、懇願していた。
「パンツ脱ぐ余裕もないんだ? じゃあ、こうやって……」
胸から離れた彼の手が、部屋着のニットワンピースの裾に入り込み、しっとり以上に濡れたショーツの股布を脇に寄せる。
「ずらしただけで、ズブッと根元まで入れちゃおうか?」
露骨なセリフが、まともな思考を焼き尽くすように刺激的。
「して、それしてっ! 根元まで、ズブッ、ズブッて、早く、早くうっ……!」
彼の肩に火照った顔を埋め、アソコを弄ぶ指先を追って腰をくねらせながら、私はとめどなく溢れる淫語を垂れ流す。
次の瞬間、子宮に届くほど深く貫かれる期待に、私は半分イキかけていた。
ズブッ!
じゃなくて、ブルッ。
LINEの着信音で、我に返った。
ーーMJD〜!? 超偶然! カレシ来た?
さっきの返信から、二時間以上経ってる。
どんだけ妄想に浸ってたんだか。
だけど、誘惑的な香りに包まれて、恥じらいをかなぐり捨てて快楽を貪った名残は、まだ全身に甘く残っていて。
なんだか、スッキリした気分だった。
ーー来ない! フラれたっぽい><
今度は泣き顔スタンプ入りの、ほぼほぼウソじゃない返信を送る。それから、さっきの妄想を反芻するために、私はベッドにもぐりこんだ。