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LPC官能小説第20回「彼は靴先、ヒール、踵から伸びるくるぶしを指先で撫で…」

鍬津ころ2017.12.27

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 お正月二日目。
 目覚まし時計とスマホのアラームをダブルで鳴らして、私は六時に飛び起きた。

 目当ては初売りセールの福袋。
 去年オープンしたファッションビルに、日本初出店の靴ブランドが入っているの。グランドオープンのときに試着したら、めちゃくちゃ履き心地がよくて、どの靴も超おシャレ。

 すっかりファンになっちゃった。
 だけど、とても手の届くお値段じゃなかった。
 ところが、今日売り出す福袋は、サイズ別の二足セットでなんと二万円ポッキリ!
 通常のバーゲンだって、一足二万以下には落ちないってのに、これは買いでしょ。

 そんなわけで、八時前にはビルの前に伸びる行列に混ざって、白い息を吐いている私。
 空気は冷たいけど、冬空は青く晴れて、なんだ かいいコトがありそうな予感。
 開店時間になると、エントランスの両側に並ぶスタッフの最敬礼に迎えられて、私達は中になだれこんでいった。

 お目当ての福袋、ごく一般的なサイズの私には、ライバルがいっぱい。
 スーパーのタイムサービスに群がるオバサン並みの気合いで、なんとか一袋確保した。と、その拍子に、前にいた女の子の強烈なひじ打ちを食らってしまう。
「うわっ!」
 人だかりから、店の出口と反対側に吹っ飛ばされた私は、陳列棚の裏に尻もちをついていた。
 スタッフもお客も、福袋を捌くのに夢中で、私に気づいていない。

 壁を支えに起き上がると、手がドアに触れた。これ、バックヤードに抜けるドアよね。
 もしかして、福袋の中をチェックするチャンス到来!?

 幸い、鍵はかかっていない。
 私は隙を見てバックヤードに忍び込んだ。
 誰かに見つかったら、トイレと間違った、と言い張るつもり。

 だだっぴろい廊下のあちこちに、テナントの在庫らしき段ボール箱やディスプレイ道具らしきものが積み上げられている。
 私はその陰にうずくまり、早速福袋を開く。
 現れたのは、さくらんぼみたいなピンクのピンヒール。
 ゆうに九センチ以上ある。
 今まではいたことのない高さだけど、ほれぼれするほど優美なフォーム。踵や甲の曲線がクラシカルなので、色から連想するほどギャルっぽいイメージはない。
 なんて官能的で、美しい靴!
 私、ためらいもせず、その靴に足を入れた。

 ふわり。
 そう形容するしかないほど、爪先から踵へと上がるラインは、私の足を柔らかく受け入れる。
 角度はもちろん、インソールと甲のアーチが絶妙。
「はぁぁ……」
 私は思わず、ため息をつく。
 このハイヒールなら、シンデレラに負けないほど、踊り続けていられそう。
 なんだか、脚線まで美しくなったような気がする。
 分厚いニットのスカートをお尻までたくしあげ、左足を五〇センチほどの高さの段ボール箱に上げて、足元を確認せずにいられなくなった。
 そのとき。

「何、やってるんですか?」
「!!」
 私、ショックのあまり体勢を崩して、積み上げた箱の脇に、倒れ込んだ。
「ちょっ、大丈夫ですか!?」
 コンクリートにぶつける直前、肩と頭を支えてくれたゴムの塊のように張り詰めた筋肉。
「は、はぁ……えぇえッ!?」
 天井の証明で逆光になってはいるけれど、間違えようもない。
 いかにも裏方っぽい灰色のツナギに、ボタンが弾け飛びそうなマッチョボディを押し込み、片膝をついて私を抱きとめているのは……
 四条丸駆クン!?

「あ、すみません、私、その……」
 この状況で、トイレと間違えたとは言いにくく、口ごもる私。
 けど、彼は私の下手な言い逃れなんか、耳に入らないみたいだった。
「……ああ、このピンヒール、貴女が当てたんですか……素晴らしいですよね、この曲線」

 彼、片方の手を、床に投げ出された私の足元に這わせる。
 革越しなのに、背中がゾクゾクするほど官能的な感触。
 彼の目に、明らかな欲情のきらめきを見てしまったからかもしれない。
「僕、今シーズン、このモデルが一番好きで……福袋に回されなかったら、自分で買おうかと思ってたんだ……」
 そう囁きながら、彼は私が履いている靴先、ヒール、踵から伸びるくるぶしを、指先で撫でる。
「……ッ!?」
 触れられた部分から沸き起こる、強烈な刺激に、私は息を呑む。
 今まで、足をどうこうされた感じたコトなんて、一度もなかったのに。

「とりたてて奇抜なデザインじゃないのに、ここのハイヒールは本当にセクシーで……初めて見たときは……」
 そう言うと、顔を赤らめて口ごもる彼。
 言葉がなくてもわかる。そうでなくてもパツパツのツナギの股間は、ガチガチに膨れ上がっているんだもの。
「君の綺麗な脚に、本当によく似合う……僕は、この靴が、こういう人に履かれるところが見たかったんだ……」

 熱っぽく続けながら、彼は私をそっと床に横たえ、私の足元に顔を伏せた。
 私のくるぶしに、彼が前歯を当てて力を込める。
「ひぃ……んッ!」
 鋭くも甘美な刺激が、キュン!とお腹の奥に突き上げた。
「靴って……人間だけが使う道具のひとつだよね……相性や出来の善し悪しで、その人の人生だって左右しちゃう……スゴイ、よね」
「っ、そ、そうかも……ッ、だけど、あ、ああんっ!」
 くるぶし、靴から出た足の甲。そして靴の中に指を突っ込んで、彼は私の足、正確には靴に包まれた部分を執拗に愛撫する。
 彼の靴フェチが伝染したように、放っておかれっぱなしの私の上半身までが、その愛撫に翻弄されている。

 くるぶしは、クリちゃん。
 足の甲は、ヒップのお山。
 靴の中を探る指には、アソコの中をまさぐられているみたい。

「んんッ、ぅそぉ……なんでこんなあ、あ、いい、イイイっ!」
「この靴と、君の相性が最高なんだよ……ああ、そっちのヒールを、僕のココに……グリグリって……」
 頭の中にピンクの靄がかかって、まともに考えられない。
 言われるがまま、彼に掴まってない方の足を伸ばして、その股間にヒールの先を当てる。グリグリと、力を加える。
「おぉっ、凄い、すっごい……! 出る、もう出ちゃう、ヒール汚しちゃう……っ!」
 彼、裏返った声で善がりながら、今にも弾けそうに張り詰めた股間を、自分からヒールの先に押しつけてくる。
 ウソでしょ。
 あの駆クンが、こんなハイヒールフェチだったなんて。意外すぎるけど、自分でもびっくりするほど興奮してる。
 私、足元だけ彼に嬲られている異様な状態なのに、自分のバストを揉みしだいて、乱れ狂ってるの。

「イクの!? もうイキそうなの!? いいわよ、私のキレイなヒールに、くっさいザーメンいっぱいぶっかけてイッちゃいなさぁい!」
 SMの女王様みたいなセリフを口走りながら、私は両腿で彼の頭をはさみつけ、自分の股間へ引きよせた。
「だけど、靴だけじゃダメよ! 私のココも上手に舐めないと、そのおチ○ポにヒールで穴開けちゃうんだから!」
 それまで思いついたこともないセリフが、流れるように迸る。

「おっ、オォッ、上手にしますぅ……れろぉ、しますからぁ……ピチャピチャ……穴開けないでぇ!」
「んんーーーッ! そぉよぉ! もっと上手によぉ、ヒールと同じくらい、クリちゃんにもご奉仕するのよ、アッアッ……あぁぁっ……」
 身体を「く」の字に折って、床に横たわった私は、股間に駆クンの頭を挟み込んだまま、恥知らずな善がり声を振り絞る。
 さっきまで靴を舐めていたことなんてどうでもいい。
 彼の舌先が私のクリトリスを吸い、その奥へ侵入して愛液を啜る、その快楽だけが全て。

 私のヒールと私のアソコに全てを支配された彼が、私の命じるままに、エクスタシーを連れてくる。
 それだけが全て。
「ンァアー……ッ、イっくぅう……っ!」
「お、オレも、オレも一緒に……一緒にイかせてッ!」
 その瞬間、彼の自称が「僕」から「オレ」に変わった。
 私、目の奥に火花が散るほど興奮した。

 駆クンとの、思わぬ靴フェチを仮想体験(?)させてくれた、ハイブランドの九センチピンヒール。
 ショッキングピンクの官能的なソレは、確かに福袋に入っていて、私のモノになった。
 だけど、大誤算。
 さすがに、履き心地はバツグン。とはいえ、細すぎ、高すぎのヒールには、ほんの数歩動いただけで、爪先と足首が悲鳴をあげる。
 多分、ハリウッドセレブなみに筋肉や体幹を鍛えないと、履きこなせない。

 今のところ、福袋の戦利品は、新年最初の妄想のよすがとして、オナニーのオカズにするしかないのだった。
 ちなみに、二足目はちょっと流行遅れの豹柄のローファー。こっちは、毎日の通勤に大活躍なんだけどね。

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鍬津ころ

鍬津ころ(くわつ・ころ)

札幌出身、東京在住。山羊座のO型。アダルト系出版社、編集プロダクション勤務後、フリーの編集者&ライター。2011年『イケない女将修行~板前彼氏の指技vs官能小説家の温泉蜜筆』でネット配信小説デビュー。近著『ラブ・ループ』(徳間文庫)。馬、鹿、ジビエ大好き飲んだくれ系アラフォー女子。タバコの値上がりには500円までつきあう覚悟。 

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