ここ何年かで、すっかりお馴染みになったフードフェスティバル。
去年は女友達と行ったんだけど、皆ナンパを意識して、食欲をセーブしまくり。結局ナンパもされなかったし、欲求不満しか残らなかった。
だから、今年は一人で来たってわけ。
そんなに派手な催しじゃない。地元の商店街主催だけど、普段は手が出ない老舗の天ぷらや、A5級の和牛が、屋台で食べられるんだから、満喫しなきゃ損じゃない?
小春日和の日曜日、午後の会場はけっこうな人手だった。
ネットで紹介でもされたのか、明らかに地元民じゃないカップルやファミリーも、楽しそうに列を作っている。
辺りに漂う、美味しそうな香り。
朝ご飯を抜いてきた私のお腹は、香りに反応してグーグーとうるさい。
ちょっと張り切りすぎたかも。メインの鰻やステーキの屋台に、並ぶ余裕がない私。
会場を見渡すと、隅の方に、いかにもよくある感じのフランクフルトの屋台。
他にお得な地元グルメがたくさんあるんだから、当然そこには行列どころか人だかりもなかった。
とりあえず、あそこでお腹の虫を黙らそう。
鉄板の上には、数本のフランクフルト。どう見ても、焼きたてじゃない。
屋台の人は、鉄板の向こうでこっちに背を向けてしゃがみこんでいて、ツンととがった髪の毛先しか見えなかった。
新しく焼いてほしくて、私、声をかけたの。
「あのー、すみま……」
「あっ、ハイハイ!」
「……せぁああッ!?」
ヘアスタイルで気づくべきだった。
気軽な返事と一緒に立ちあがってこっちを向いたのは、彼。
可愛い系マッチョの有名ラガーマン・四条丸駆クンだった。
いくつXがついたLサイズかわからないけど、分厚い筋肉に覆われたムキムキボディは、ダボシャツのゆったりしたラインに隠されている。
晩秋の陽射しを真夏と錯覚させるような、赤銅色に灼けた額には、ねじりハチマキ。
まるでフーテンの虎さんスタイル。
カッコイイというより、圧倒的に、可愛かった。
「……そんなに、ニヤニヤしないでよ」
「えっ!? あ、私、そんな……」
我に返ると、拗ねた子供みたいな顔つきの彼と、目が合った。
ちょっと尖らせた口許が、やっぱり、たまらなく可愛いの。
「また、ニヤニヤする! もう、フランクフルトあげないよ!」
見上げるような長身の彼が、腕を組んでそっぽを向く。袖口から、フランクフルト10本分はありそうなたくましい腕が覗く。
可愛さとたくましさのハイブリッド。
これが、彼の魅力なのよね。
「ああん、ごめんなさい! 微笑ましくて、つい……」
媚びるような、それでいてお姉さんぶるような、我ながらあざとい口調。
だけど、彼は機嫌を直してくれたみたい。
目を細めて口許をゆるめた、小さな笑顔。やっぱり、初心な少年みたいに可愛い。
「しょうがないな、じゃあ、あげる」
そんな微笑で手招きされて、私、吸い込まれるように屋台の中に回り込んで行った。
「はい、フランクフルト!」
「フ……ッ!!」
屋台の下にしゃがみこまされた私の前に、ボロンと放り出されたのは、生きて血の通ったフランクフルト。
彼、これも特大サイズの、脛まであるステテコの股間から、彼自身のフランクフルトを掴み出したの。
「美味しいよ、ほら。サービスだから、どうぞ」
彼は、悪戯っぽい表情で、ソレを振る。
フランクフルトにしても、超特大のソレが、周りの温度を上げるような、雄の匂いを放っている。
「……んぁあ……」
鰻より、ステーキより、美味しそう。
私、下半身からせり上がる食欲のままに、大きく口を開いた。
クポッ、チュボッ、れるれる……
「お、おっ、食われちゃう、食われちゃうよっ!」
私の舌遣いに合わせて腰を揺らしながら、彼が舌足らずな善がり声をあげる。
周囲の誰も気づかないのが不思議なほど、私は大胆に彼のフランクフルトを貪る。
ううん、本当は気づいていて、誰も気にしていないのかも。
だって私、フランクフルトを食べてるだけだもん。
熱くて、スゴイ弾力があって、先っぽからエキスが滲み出てくる、最高に大きなお肉の塊。
「……すっごい、スケベな顔……俺の、そんなに美味しい?」
息を弾ませて、彼が私の頭を撫でる。
「ぉほ、ほいひぃ……んごい、おいひぃい……」
涎を零しながら、答える私。
喉奥に当たる、いくらしゃぶっても舐め回してもなくならない、フランクフルト。
本当に、美味しいの。
「んふぁッ!?」
次の瞬間、ヘンな声が出た。
ジクジクと熱い股間に、鋭い刺激か来たの。
「さ、サービスだよ……もっと、俺を味わって……っ」
目線を下げると、雪駄履きの彼の素足の指先が、私の股間に分け入ってる。
ミニスカの下は、畜熱素材の薄いスパッツ。だから、下着一枚隔てるのと同じくらい、その感触がリアルに伝わる。
器用な親指と人差し指が、アソコを探り、過敏な肉の芽をキュンと摘むの。
「フんんっ!」
そこ、ダメ。
脳天まで快感が駆け抜けて、頭の後ろに火花が散る。
私、地面に膝をつき、彼の腰にすがりついていた。
彼の、チクワくらいありそうな足の親指が、私のワレメを掻き回す。
早くイッてくれないと、私自身が、フランクフルトみたいにこんがり焼かれちゃいそう。
ジュププッ、と何度も大きく吸いあげては、必死で喉を絞る。
「そんなに、俺の肉汁が、欲しいんだ?」
彼の言葉攻めに、ためらう余裕もなく、ガクガクと頷く私。
早く、早く出して。
美味しいお肉のエキスを、この喉の奥に。
アソコがよすぎて、何が何だかわからなくなってしまう前に、早くーーー
「……せっかちなお姉ちゃんだねえ」
「……はい?」
私の目の前に差し出されたのは、棒に刺さった、ごく普通のフランクフルト。
屋台の主は、季節柄当然の、ダウンジャケット姿のお兄ちゃんだった。
「早く、早くってさあ。どんだけ腹減らして来たんだよ。もう一本いっとく? サービスするよ」
正気のときなら、悪くないレベル、と思ったかもしれない。
だけど、四条丸駆クンのフランクフルトの後では、こんなの、ポークビッツとしか思えなかった。
「あー………、どうも〜」
愛想笑いもおざなりに、私は逃げるように、屋台から離れたの。