未処理データの山を、こっそり2割くらい来年に持ち越して、仕事納め。
今年の忘年会もしょっぱかったねえ、なんて不景気な会話で締めくくった。
去年は彼氏が押さえてくれた露天風呂付きの部屋で、海から昇る初日の出を……拝むはずが、天気はサイアクだった。しかも、年越し客でてんてこまいの旅館のサービスは散々だったから、それほどいい思い出じゃない。
だから、夏と同じように実家に引っ込んで、紅白でも見てようと思ってた。
こんな年越しじゃ、ダメ!
大晦日の夕暮れ、家族分の年越しそばとエビ天をぶら下げて歩きながら、唐突に思い立った。
子供の頃は毎年行っていた近所のお寺。ちょっとでも明るい未来のため、二年参りと洒落込むことにしたの。
有名でも立派でもない小さなお寺だけど、除夜の鐘を撞かせてくれるのよね。
凍てついた冬空に白い息を吐きながら、老若男女が列を作っている。
私は102番目。ギリギリセーフ。
急だったから誘える人もなく、もちろんナンパされる、なんてこともない。
もちろん、ってどうゆうことよ!
自分につっこみながら、私はライトアップされた鐘楼をぼんやりと仰ぎ見る。
そこでは、若手の僧侶が数人、鐘木の綱をいじったり鐘楼の石段を掃いたりしていた。下っ端はどこもタイヘンよね。
口の中でそう呟いた私、鐘楼のふちにひょこんと顔を出したひとに気づいて、愕然となった。
短い髪をツンと立てた、お坊さんにしてはハードなヘアスタイル。キリリと上がった眉の下、柔和な瞳がライトに輝く。
その眼差し、まさか、だけど、あまりにもソックリ。
今年一年、私の心とアソコをかき乱し続けたアスリート・四条丸駆クンにしか、見えなかった。
私、思わず列を離れてた。
「あらっ、おトイレ? 場所、取っておいてあげようか?」
前に並んでたおばさんの言葉も無私して、私は走った。列を通すまで寺門は閉鎖してるけど、記憶の通りなら、脇門は開いていたはず。
期待と眠気が入り交じる、ざわついた雰囲気の中、鐘楼以外が闇に沈んだ冬の境内に、一瞬背中がゾクリとした。
勇気を出して目を凝らすと、闇の中、ほのかに白い何かがひらめくのが見える。光に引かれる動物みたいに、私、そっちへ走って行った。
思わず掴んだのは、真っ黒の法衣。厚い胸といかつく盛り上がった肩は、法衣で覆いきれないのか、胸筋の割れ目が衿合わせから覗いてる。
「……やっぱり……」
ため息のような声が出た。
「みつかっちゃった」
夜目にも白い歯を見せて、いたずらっこみたいに、彼は笑った。
彼の放つエネルギーは、大晦日の寒さを忘れさせてくれる。
彼、私を法衣の中に抱きこんで、境内の隅にある大きな庭石の裏に隠れたの。
どうして、そんなトコに?
と、私は聞かない。
だって、彼のアソコ、他のどこよりも熱く昂って、私の腿を押してるんだもの。
適当な普段着で出て来ちゃったから、暗闇でよかった。
なんて思いながら、私、彼の性急な愛撫に身を任せる。フリースをまくり、お腹から胸へと辿るてのひらが、とてもあったかい。
「……っ、ふっ!」
ブラの中で乳首をこすられると、どうしても声が出ちゃう。
「声を出したら、お寺の境内でこんなバチ当たりなコトしてるのが、皆にバレちゃうよ」
彼は背後から抱きしめた私の耳を噛んで、そう囁いた。囁きながらも、胸への愛撫はやめない。どころか、いっそう私を煽るように、ヒップの割れ目を股間の昂りでツンツンする。
あぁ、ダメダメ、そんなことされたら、もっと大きな声が出ちゃうぅ!
「んんっ、んぅーーーッ!」
大声で喘ぐかわりに、私は自分のてのひらで口をふさぎ、低く呻いた。
自らしているのに、彼に無理矢理されているみたいで、目の奥に火花が散るほど興奮しちゃう。
そんな私の姿に、彼の鼻息が荒くなった。
有無を言わさない力で、桃の皮を剥くように、スキニーパンツを下着ごと降ろされる。
「んふぁ……!」
庭石に片手をついて身体を支える私のお尻の割れ目に、弾力のある熱い塊が押しつけられた。彼、法衣の隙間から、いつの間にかソレを掴み出していたの。
私、ソレがするん、と前の方へ滑るほど、濡れきっていた。
視線を下げると、股間から二人分の情欲が湯気になって、漂っているのがわかった。
恥ずかしい! 恥ずかしいのに、よけいに感じちゃう!
声を出せず、ふぅん、ふぅん、と息だけでヨガりながら、私は彼に応えて前後に腰を揺する。
密着したヒダと彼の分身が、チュクチュク音を立てる。後ろからクリちゃんの根元を突かれるのが、もうたまらない!
「んはぁ……はぁああっ!」
早く突いて!
私は涙目で、彼を振り向く。
彼はさっきと同じ目を、荒々しい雄の欲望で光らせて、私の首に歯を立てる。それも、快感。
私は淫らな牝獣そのものになって、彼の分身を、呑み込もうと腰をくねらす。
先っぽが、ヒットする。
ああ、それだけで奥まで貫かれたような悦楽が走る。もっと、もう少し角度をつけて、激しく、強く、突いて。
突いて! 突いて……!
……ごぉおおおおおおーーん!
そのとき、くぐもった鐘の音が鳴り渡り、クリアな響きを膨らませてから、鎮まっていった。
私、庭石にすがりついて、放心していた。
パンツの中は恥ずかしいほど熱っぽかったけど、ふと手をやった首には、なんの痕跡も感じない。クリスマスの奇跡は、大晦日には起こらなかったみたい。
ごおおん、ごおおん、と鐘の音は続く。
そっちの突くじゃないっつうの!
私、性懲りもなく自分に突っ込みながら、ため息をつく。
あーあ、結局除夜の鐘も撞けなかったなあ。
だけど、鐘の音を聞いているうちに、これじゃいけない! という気持ちが、また、頭をもたげてきたの。
妄想もいいけど、自分から行動しないと、運は開けないよね!
来年は、出会いを求めて一人旅でもしてみよう。温泉だって、お正月シーズンじゃなければ、もっと楽しめるかもしれない。
私、それなりにご利益をもらった気分で、鐘の音が響く懐かしい街並を歩いて行った。