お天気が心配だったけど、幸い雲の晴れ間から穏やかな秋の陽が射す土曜日。
学生時代からの友達二人と、地元の小さな神社のお祭りに行った。
もちろん全員、浴衣姿。昔はイオン辺りのセット売りではしゃいでたけど、もうオトナ。今年は、藍色に絞りのトンボ柄を白く染め出したシブ可愛い浴衣に、帯も自分で結んで、友達にも大好評。
「ヤバいよ〜誰が見てもカワイイって!」
「ナンパとかされたら、後で合コン幹事だからね!」
「わかってるって! 昨夜打ち合わせしたじゃん」
そう。今夜の目的は、ハッキリ言ってナンパ待ち。望みは薄いけど、お祭りを楽しんで、ついでに男のコと遊べたら五倍お得じゃない?
3対3が理想だけど、個別に声をかけられたら離脱上等、恨みっこなし。その代わり、後日合コンを設定すること。そんな打合せを決めてから、宵宮に挑んでるってわけ。
参道に並ぶ屋台を冷やかしながら、拝殿へと進む。
夕闇が降りる中、拝殿前の広場では、お神輿の宮入りが行われていた。
頭領の指示で、八人ほどの担ぎ手が、お神輿から担ぎ棒を抜いていく。初めて見る光景。昼間、大勢の掛け声の中で揺れながら進んでいたときより、神々しく感じるから不思議。
左右のバランスを保ったまま、重い担ぎ棒を抜くのは大変な作業らしく、頭領はひっきりなしに荒い声をあげていた。特に、左の棒を担当しているがっしりした背中に、叱声が集中してる。経験が浅いのか、そのたびに首をすくめるのが、夜目にも可愛い感じ。
何かの拍子に、彼がこっちを振り向いた。
「……ウソぉ……」
思わず声が出た。
他の担ぎ手より、頭ひとつ大きい長身。ダボシャツがはち切れそうな、筋骨隆々のボディ。真っ白な股引が、ムチムチした大腿筋に巻きついていて、なんだか神々しい。
それでいて、”参ったな”って感じに眉尻を下げた表情が少年みたいに可愛くて、どうしよう、彼、四条丸クンじゃない!?
あの特徴的なヘアスタイルに、捻り鉢巻きを巻いていたから、気づかなかったの?
呆然と見守るうちに、本体だけになったお神輿が、しずしずと蔵の方へ運ばれていく。
その後を、担ぎ棒を抱えた彼らが続く。他の棒は2人がかりの太く長い木の棒を、彼は1人で悠々と持っている。
気づいたら、友達とはぐれていた。拝殿の裏の、屋台の灯りも届かない薄暗い場所。
お神輿はとうに蔵に収められたらしく、ねぎらいのお酒に沸く担ぎ手達の歓声が、遠く流れてくる。
さっきは、金色に輝くお神輿とお祭りの賑やかさに酔って、見間違えたのかな。
ため息をつきかけたとき、
「どうしたの、友達とはぐれちゃったの?」
すぐ後ろ、頭のずっと上から、ほどよく太い、いい声が聞こえた。
飛び上がって振り向く。
見間違いじゃなかった。
いなせな祭り装束の、膝上までの短い半股引がまぶしい、四条丸走。
「さっき、宮入りのとき、目が合ったよね」
「……あ、すごくカッコよかった、です……すみません!」
「なんで謝るの?」
そう言って、彼は笑った。蔵と屋台などの建材があるだけの暗い一角が、その笑顔でパッと明るくなったみたい。
「珍しく、シブくてかっこいい浴衣が似合うコがいるな、って思ってたんだ」
「えー、そんな……」
「トンボって、獲物に向かって一直線に飛ぶっていう、武士やスポーツマンには縁起のいい柄なんだよ」
いきなりの褒め倒しに、頭がボーッとする。足が地についていない感じ。
と、思ったら、実際に浮いていた。
彼に姫抱きにされ、ブルーシートを被せた建材の山の上まで運ばれていた。
「サラサラして気持ちいい生地だね……」
分厚いてのひらが、浴衣の表面を撫でる。
さすがにひんやりしてきた夜の空気の中で、その手はカイロみたいに熱量を放っている。ただ撫でられているだけなのに、うっとりするほど気持ちよかった。
熱い手が、当然のように、浴衣の衿の間に侵入してくる。
もう片方の手が、じりじりと裾を割る。
抵抗なんて、できるわけがなかった。
「女のコは、浴衣着るときにパンツはかないって、本当?」
「……確かめて……みて……」
いつもなら言えない大胆なセリフが、自然に口をついて出た。
彼は、言われた通りに確かめると、
「ウソつきには、お仕置きだな」
そう言いながら、今度はいやらしく、ニヤッと笑った。
「……だって、だって、あ、やぁ、んんっ!」
彼の”お仕置き”に、声が止まらない。
褒めてくれた浴衣は、上も下もすっかりはだけられ、お互いの汗でシワシワ。下に着ていたブラカップ付きのタンクトップも胸の上まで押上られ、直接揉まれ放題。パンティは、立てさせられた両膝の辺りまでずらされて、彼、そこに顔を伏せてるの。
浴衣を着てるのに。向こうの蔵と境内には大勢の人がいて、お祭り最終日が最高に盛り上がっているのに、そのすぐそばの暗がりで、
「あぁ、そこイイ、そこぉおお!」
クリちゃんを強くしゃぶられて、そんなことを口走ってる。
「そんなに悦んでたらお仕置きにならないよ……そうだ、自分でオッパイ揉んでごらん」
「……え、ヤダそんな、恥ずかしい!」
「恥ずかしいからお仕置きなんだよ。上手に揉めたら口でイかせてやるから、ほら!」
最後、ちょっと乱暴な口調で言われて、背筋がゾクゾクした。
その声に操られるように、はだけた浴衣の中のバストを、両手で包む。震える指で、ぎこちなく、左右を揉む。
「ん……うんん……」
いつものオナニーとは全然違う、不思議な感覚。
「よーし、ちゃんとできたな」
「ひぅうううん!」
満足げな言葉と同時に、またアソコを責められたから、無防備な声が出た。
今度は舌を中にねじ込んで、広げるようにグリグリされてる。
さっきビンビンにされたクリちゃんが、指先で細かくしごかれてる。
「あぁん、あ、どうしよ、イイ、すごいイイ、全部イイ、イイのぉお……」
自分の胸を揉みながら、夢中で善がり続けた。
オッパイも、中も、クリちゃんも、たまらない。
浴衣のお洒落も、友達も、お祭りも、なにもかもどうでもよくなる。
彼の熱い舌と指。それに多分、胸をいじめてるのも彼。だって、クリちゃんと同じように、乳首をしごかれて、ズクズク、疼いて疼いてたまらない。
「ンアーッ、なにそれ、イく、イっちゃうぅう!」
彼、中に唾液を送り込んできたの。射精されたみたいな刺激を、次の瞬間、ジュジュッと吸い上げられて……こんなクンニ、初めて。
本当に、もう、イッちゃう……!
「……イこうよ!」
いくらアスリートだからって、もう少しムードのある言い方してもいいんじゃない?
抗議しようと振り向いた。……振り向いた?
彼、私に覆いかぶさって、愛撫していたはずなのに。
「何ボンヤリしてるの? お神輿しまうの面白かったけど、もう終わったでしょ。屋台で何か食べに行こうよってば!」
と、言い募るのは、見慣れた友達の顔。
「けっこう長い時間、ここにいたけど、結局ナンパとかされなかったねー」
「暗いからじゃない? 屋台の方行けば、まだ何かあるかもしれないし」
友達に引っ張られるように、のろのろと歩き出した。
サラリとした浴衣の生地には、汗をかいた感触もない。お神輿の宮入りを見物したのは現実みたいだけど、どこから妄想にハマりこんでたんだろう。
でも、どっちにしろ。
声をかけるなら、イッた後にして欲しかったな。
何も知らない友達に、恨みがましい視線を向けながら、下駄を鳴らして拝殿の前から遠ざかっていった。