前回書いたが、 インターネットプロバイダAOLを武器として狩りに勤しんでいたわたし。
90年代後半から00年代初頭のネット上には、 肉食なんだけれどもちょっとシャイな男たちが生息していた。 と同時に、彼らのほとんどはどこか肉体的にコンプレックスを抱いた男たちでもあった。 まあわたし自身も、黒いマンコにコンプレックスを抱いていたのだが。
男たちのコンプレックス… 3高(高学歴・高収入・高身長)がもてはやされていた時代でもあったから、 エリート銀行マンなんだけれど背が小さいのを気にしていた男。
経営している店が順調で全国展開を仕掛けているんだけれど、早漏過ぎる男。
めちゃめちゃイケメンのショップ店員なんだけれど、チンコが小指よりも小さい男。
ネット上での男たちは至って普通だった。しかしリアルに会ってみると、極端に申し訳ながってみたり、威丈高に振舞ってみたり…両方に振り切れ気味が多いように感じた。 肉体的コンプレックスを抱え現実は大変なんだなと思うものの、そこに愛情は無いから(笑)、サッとセックスしてはいさよーなら。 ネタ帳に書く程度には話は聞いたけれど、それ以上のサービスはするワケも無く。
逆に、女性の良さをネットで教えて貰った。
次こそはと思いながら男を狩ることに勤しんでいたが、なんとなくモヤモヤした気持ちを抱えていた時、たまたまバイセクシュアルだというお姉さまとチャットで意気投合した。
男に対するモヤモヤを話している時、試してみる?と誘われた。お姉さまに。いともすんなりと。
「そうか!女同士でもセックスできるのか!」
これまで考えたことが無く、映画『アナザーカントリー』『モーリス』は大好きだったけれど、自分が同性同士のセックスをする当事者になり得るという意識が全く欠落していたわたしだった。
「はい!はい!しますします!是非お願いします!」 それからワクワクの日々だった。 それこそネットに感謝。 たくさん知識を得て。
仕事の出張で札幌に来たお姉さまは、とてもスリムな東洋美人だった。 ごはんとお酒を楽しんだ後、お姉さまの投宿先へ。天蓋付きのロマンチックなベッドがあって。
そこから目眩く時間。 青く浮き出る血管が美しい乳房、まさにたわわに実る果実の如く。 掌に伝わるその重さに驚きながらも存分に堪能。 なんでしょうこれ、めちゃめちゃ興奮した。
同じヴァギナなはずなのに全然違うのにも驚いて。でも、そのヴァギナがエロくてエロくて、わたしはまさに蜜を楽しむ蝶。 我が筆力では安い官能小説以下にしかならないので詳細な描写は辞めるが(笑)、めちゃめちゃ楽しかった。 思い出しただけで濡れる。
これまで経験してきた男とのセックスとは全く違う世界で。 肩肘張らず気持ちよくなって欲しいと思ったし、気持ちよくなりたいと思ったし。 わざわざ膣を締めなくても良かったし、腰を必死に降る姿を滑稽だななんて思うことも無かったし。 ふたりでリラックスしながら朝まで夢中で素敵な時間を過ごす、マジこれセックスですか??
目の前で新たな世界の扉が開き、人生の可能性をものすごく感じたわたしだったのだ。
こんな経験をしたならば、そこからわたしは女性とのセックスにハマって行くはず、だが、 ガチなのはなぜかこの一回だけになっていた。
こわくなったのだ。
何から? 何だろう。
このまま甘い蜜の虜になってしまうことにこわくなったのだ。
セックスの現状に満足していないから狩りをしていたのに、 満足してしまったからあとは喪うだけ、、、 そんなことに怯えてしまったのではなかろうか、当時のわたしは。
快楽のブラックホールに飲まれてしまい自分をハンドリングできなくなるのではと、こわくなったのではなかろうか、当時のわたしは。
もう男とセックスできないかもということに怯えてしまったのではなかろうか、当時のわたしは。
まだまだだったな(笑) いやー青かったな(笑)
ネットだから、 名前を消してしまえばもう会うこともない。 お姉さま、元気かしら? かわいいクリトリス健在かしら? そう思っても会えない、それがネット。
急にさびしくなってきた。 ものすごく昔の話なのに。
蜜の甘さを思い出し、 やさしいセックスを夢見る、夏の終わりに。 わたしもヴァギナもやさしく過ごせる秋の夜長になりますよう…