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第22回「”正義”というものが、男の手中で暴力に変わる恐れを感じます」

野沿田よしこ2016.08.30

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 私の名前はよしこ。でも“よしこおばさん”となってこそ“私”であると人は言います。なぜ“おばさん”なのか?誰かの“おばさん”というわけではな く、 “おばさん”=加齢具合を表現しているわけでもありません。私の行動が“おばさん”以外では成しえないものであるからです。私の趣味は人の恋愛話、セック スの話を聞くことです。と、いってもガールズTALK的に盛り上がり話し、その場で共に聞くようなスタイルでは楽しめないのです。あくまでのぞき聞き、の ぞき見すること、百歩譲って1対1で根掘り葉掘り的なTALKが好きなのです。
 “人の話を聞く”“心の中や状況を探る”という力はどうやら“おじさん”“お兄さん”“おじいさん”には装備されていないようです。“お姉さん”と呼ば れ る人達には盗み聞きする根性がないようです。そして“おばあさん”には興味と能力はあっても、盗み聞きできるほどの聴力がなかったり、長時間粘れる脚力が なかったり。でも、体力的にまだその余地がある。それが“おばさん”なのです。 
 と、いうことで、22回目の「よしこおばさんは見た!」よろしくお願いいたします。
 わたくしは普段、国道沿いのフレッシュネスバーガーに座り、聞き耳を立てのぞき聞き、のぞき見をいたしておりますが、たまには意図しないタイミングで現場に遭遇することがあります。先日もそうでした。大好きなカレーを夜通し煮込み、至福のひとときを味わおうとスーパーに向かおうとした時でした。30メートル先に殺気を感じたのです。それは近づくとさらに強くなり、その中心に40代の女性と80代の男性がいることを目視しました。2人の間には自転車。女性の方と思われるその自転車は、一触即発の2人の間に入る仲介人のように争いの中心にぽつねんと置かれています。
 私は、なるべく聞かないよう、見ないように通り過ぎようとしておりました。  私は意外にオンオフを分けるタイプです。なぜなら、盗み聞き、そして盗み見るというのは全身の力を注ぐ行為なのでございます。霊能者がむやみに霊視しないで力を温存するのと同じような理屈でございます。しかし、私もこの道のプロ。この2人の姿を見ずに通り過ぎることはできませんでした。それほどまでに見る価値のあるものでした。
 女「おいあんた!私が女だからそんな言い方すんだろう!」  男「黙れ糞女!おまえじゃなくたって同じだ!!」  どうやらスーパーに入るために、自転車で車道から歩道に車線変更した女性に  自転車なら歩道を走るな!と、男性が大声で怒鳴ったという状況のようでした。
 女「スーパーに自転車で入ろうと歩道横切っただけだろう!歩道には誰もいなかっあじゃないか!」  男「歩道を自転車は走るなってルール知らないのかおら!」  女「あなたさぁ、“おい糞女、歩道を自転車で走るなおらっ!”なんて言い方、男にもすんのか?!」  男「女だろうが男だろうが、言うに決まってんだろう。」  女「ほら、来た。あっちから来る男に同じこと言ってみろ!」  男「あー言ってやるよ!!」
 20代のサラリーマン風の男性がのんびりと自転車をこいでやってきました。
 男「歩道ですよ〜気をつけてくださいね〜」  女「ぶあはははは!あんなふざけてんの?「気をつけてくださいね〜って」なんだよ!」  男「糞女てめえこっち来いや」  女「じいさん、笑わせてくれるね。はははっは」
 勝負あり!女性に軍配が上がりました。見て見ぬふりをする人達が足早に通り過ぎる中、私はその一部始終を見て、聞いていました。私は小さく拍手をしました。
 女性や子供には大声を張り上げられるのに、男性には何も言えない男っていますよね?私もこれまでに何人も遭遇しています。電車の中でマナーが悪いと怒鳴るおやじ、でもけして足を広げ、ふんぞり返る男性には注意はしないもの。先日は、自転車で歩道を全速力で走るおやじ(60代)が、女子学生の群れに突進し、その後にいた男性2人組の前では自転車を降りるおやじを目にしました。
 “正義”などとはほど遠いストレスのはけ口として、公共の場所で女性に大声を上げ、拳を上げる男性が増えているような気がします。そして”正義”というものが、男の手中で暴力に変わる恐れも感じます。
 人を公共の場所で注意する気分とはどんなものか。そんなことを考え、何か男性に注意してみようと、小さな公園でしばらく注視していると、70代の男性が唾を吐きました。私は  「つばをはかないでください。ここは公園ですよ」  と声をかけました。すると  「あんた公園警備隊か?」  と真顔で意外なことを言われました。  「いいえ。私はただの住民です」  そういうと男性は、  「ごくろう」  と言って、ゆっくり帰っていきました。
 男性って、なんなんだ。
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野沿田よしこ

野沿田よしこ(のそえだ・よしこ)

年齢敢えて不詳。私の名前はよしこ。でも“よしこおばさん”となってこそ“私”であると人は言います。なぜ“おばさん”なのか?誰かの“おばさん”というわけではなく、“おばさん”=加齢具合を表現しているわけでもありません。私の行動が“おばさん”以外では成しえないものであるからです。
私の趣味は人の恋愛話し、セックスの話しを聞くことです。と、いってもガールズTALK的に盛り上がり話し、その場で共に聞くようなスタイルでは楽しめないのです。あくまでのぞき聞き、のぞき見すること、百歩譲って1対1で根掘り葉掘り的なTALKが好きなのです。
“人の話しを聞く”“心の中や状況を探る”という力はどうやら“おじさん”“お兄さん”“おじいさん”には装備されていないようです。“お姉さん”と呼ばれる人達には盗み聞きする根性がないようです。そして“おばあさん”には興味と能力はあっても、盗み聞きできるほどの聴力がなかったり、長時間粘れる脚力がなかったり。でも、体力的にまだその余地がある。それが“おばさん”なのです。 

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