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<寄稿>東小雪さん 最悪のセックス・最高のセックス

東小雪2015.06.18

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私の性を不自然って言わないで!

 これまで私は、セックスの話題を意図的に避けてきました。それは「レズビアン=ポルノ」「レズビアン=過剰に性的な存在」という世間一般のオヤジイメージが嫌だったからです。「同性愛は「ベッドの中のこと」ではなく人権の問題なんだ!」とお伝えしたかったということもあります。5年前にレズビアンであるとカミングアウトして以来、人前でセックスの話をしないことで「普通」っぽく見えるように意識してきた部分があります。それくらい社会に流通する「レズビアン」のイメージに偏りがあると、私は感じていました。もともとセクシーな要素が少ない私が、意識的にそうしているにも関わらず、この5年の間「どんなセックスをするんですか?」と公の場で聞かれ続けてきました。テレビ番組の収録でも、名刺交換のすぐ後にも、人権講演の質疑応答でも聞かれたことがあります。
 セックスのこと、聞きますか? 20代の女性に、名刺交換の直後に!? 人権講演の質疑で!?
 異性愛者の女性に聞くのはさすがにセクハラという認識があるのでしょうが、レズビアンの私には「聞いてもOK!」と思われるようなのです。行政もLGBTの人権に関して取り組むようになった昨今、さすがに前述のような嫌な思いをすることも減り、過剰にセックスの話を避けるのもなんだか違うなと思うようになったタイミングで、今回の原稿をご依頼いただいたのでした。
 さて、「最悪のセックス・最高のセックス」というお題をいただいてから書き始めるまでに、ずいぶんと悩みました。その間中、私の頭から離れなかったのは、実の父親から受けた性虐待のことだったからです。
 「全ての性暴力は暴力であって、セックスではない」
 頭ではそう理解しているのに、「最悪のセックス」と聞いた私が性虐待の被害をイメージしてしまうのだから、やりきれない。それがなんだかとても悲しかった。少し前に流行ったアメリカのドラマ『Lの世界』に「金星のレズビアン」(女性としかセックスしたことがないレズビアンの意)という言葉が出てきて、当時虐待の記憶が解離していた私は、レズビアンの友だちと「私たちは金星!」などと言い合っていたものです。しかし父からの性虐待の記憶が戻ってからは、なんとも言えない気持ちになってしまうのでした。性暴力は「セックス」ではないはずなのに!
 男性とセックスしたことがあるレズビアンもそうでないレズビアンも、何も変わらない。
 ましてや性暴力を受けたことがあるレズビアンもないレズビアンも、本当に何も変わらない。
 頭ではわかっていても何故だかこだわってしまう部分があって、私は未だに過去の被害と格闘しているような気がします。
 ここからは最高のセックスについて。私と女性のパートナーのセックスは、間違いなく最高のセックス! 自由で、自然で、最高にカッコいい!と私は思っています。私とパートナーは、したいときに、したいだけ、うんと自由に、うんと自然にセックスします。したいことはして、したくないことはしない。セックスについてなんでも話し合います。過去の悲しい出来事も、今のふたりのカラダについても、これからのお互いの生き方も、全部すっぽり話し合う。
 そんなセックスができるようになったのは、ふたりがこれまでの人生の中で、「性」に悩んできたからかもしれません。自分のセクシュアリティはおかしいのではないかと悩み、隠し、否定される経験。自分の「性」を踏みにじられ、自分自身を大切にすることができずに、自傷行為を繰り返した経験。「性」に悩み、傷ついてきたからこそ、「私の性は私のもの」「私がいつだれとセックスするか/しないかは、私自身が決める」ということが、いかに大切なことかを理解できるようになった。だからそんな私たちがするセックスは、何からも自由で、自然で、最高のセックスだと感じています。
 そして今度は、信頼できる人から精子を提供してもらって、「セックスしないで」妊娠しようとしています。
 「同性愛は不自然だ! だから同性婚を認めてはならない。だから同性愛者は子どもを持ってはならない」「精子提供で子どもを作るなんて不自然だ」という「同性愛なんとなく不自然説」を耳にすることがあります。しかしその一方で、「排卵日だからと義務でセックスするのがとても苦痛...」という妊活中のヘテロカップルのお悩みもよく目にします。
 「あのぉ….その苦痛なセックスをするのは自然なんですか?」と私は言いたい! 「したくないセックスは絶対にしない」を信条に生きている私は、「もし苦痛なら異性カップルもスポイトで入れてみたら?」と思うのですが、いかがでしょう?
 「どうやってできたか」は子どもにとっては全く関係のないことで、それよりもその後どのように育てられるかの方がよっぽど問題だと思うのです。夫婦間で「このセックスは苦痛に思っている」とか、そういった大切なコミュニケーションが取れていないのに、はたして子どもが育てられるのか...? 余計なお世話かもしれませんが、最近「レズビアンの子どもは可哀想」などと余計なことを言われるので、あえて書いてみました。
 心から尊敬できる相手とお互いの性を大切にして、家族を作る。それは私にとって、とても大切で、そしてとても自然なことなのです。

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東小雪

東小雪(ひがし・こゆき)

株式会社トロワ・クルール取締役。1985年、石川県金沢市生まれ。元タカラジェンヌ/LGBTアクティビスト。東京ディズニーシーにて初の同性結婚式を挙げ話題に。テレビ・ラジオ出演、講演、執筆など幅広く活動中。TBS系列『私の何がイケないの?』、テレビ朝日『ビートたけしのTVタックル』、NHK Eテレ『ハートネットTV』、TOKYO MX『モーニングCROSS』などメディア出演多数。著書に『なかったことにしたくない 実父から性虐待を受けた私の告白』(講談社)、『ふたりのママから、きみたちへ』『レズビアン的結婚生活』(共にイースト・プレス)がある。LGBT初のオンラインサロン「こゆひろサロン」運営。
元タカラジェンヌ東小雪の「レズビアン的結婚生活」
Twitter @koyuki_higashi
オンラインサロン「こゆひろサロン」

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