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「平成は戦争のない時代」だったのかもしれないが、次に来るのは・・・

深井恵2019.01.10

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昨年12月、民意を無視して辺野古の埋め立て工事が始まってしまった。忸怩たる思いで、土砂が流し込まれるニュース映像を見ていた。「まだ負けてはいない。何も言わなくなった時が負けだ」と、組合の学習会で沖縄の仲間が言っていた。

年末、滅多に見ない歌番組を見ていたら「カモン ベイビー アメリカ」と連呼しながら歌って踊るDA PUMPの『U.S.A.』が何度も流れてきた。DA PUMPはもともと沖縄出身のグループだった。辺野古のことを思うと、ブラック・ジョークにしか思えなかった。いま、辺野古はどうなっているのだろう。報道もパタリと止んだ。

「歌って踊ってアメリカ」と言えば、昨年見た県の高校総合文化祭のことを思い出す。総合文化祭は、文化部で頑張っている高校生たちの発表の場で、合唱や楽器の演奏、俳句や短歌、絵画や書道の作品展示など様々な文化活動が披露される。

その中に、バトン部のステージがあった。そのバトン部の演技では、バトン代わりにライフルを持って、投げたり回したりして踊る演目があり、血の気が引いた。

西城秀樹のヤングマンに合わせて、アメリカの星条旗をデザインした衣装を身にまとい、ライフルを投げ回し、にっこり笑顔で演技する場面もあった。

さすがに、ライフルは本物ではなく模型だったが、高校生が武器を持って楽しげに振る舞う姿は、そう遠くない日本の姿なのかもしれない。「平成は戦争のない時代」だったのかもしれないが、「戦争の準備をした時代」だった。

年末、週刊誌SPA!が「ヤレる女子大生ランク」という、女性の人権を踏みにじる企画をして大炎上した。呆れてものが言えないと憤っていた。

年が明けて、今度は西武百貨店の新聞広告とネット動画が炎上していると友だちからメールが届いた。HPを開いてみて驚いた。「女の時代、なんていらない?」で始まるその動画、新年早々、実に不快な動画であった。少々長くなるが、以下に文章を引用する。

女だから、強要される。
女だから、無視される。
女だから、減点される。

女であることの生きづらさが報道され、
そのたびに、「女の時代」は遠ざかる。

今年はいよいよ、時代が変わる。
本当ですか。
期待していいのでしょうか。

活躍だ、進出だと
もてはやされるだけの「女の時代」なら、
永久に来なくていいと私たちは思う。

時代の中心に、男も女もない。
わたしは、私に生まれたことを讃えたい。
来るべきなのは、一人ひとりがつくる
「私の時代」だ。
そうやって想像するだけで、
ワクワクしませんか。

わたしは、私。

この言葉を被せた映像で、なぜ女性が真っ白いクリーム(パイ?)の塊を投げつけられ、浴びせられなければならないのか。全くもって意味不明だ。低俗なアダルトビデオの、精液を浴びせられる女性を連想して不快だ(それが狙いか?)

「女だから、強要される」は、紛争下での性暴力被害を訴え、被害者を支えてきたナディア・ムラドさんとドニ・ムクウェゲさんがノーベル平和賞を受賞したことを意識したのかもしれないし、「女だから、減点される」は、東京医科大学等の女性差別入試を意図しているのかもしれない。一見、時代を反映した問題提起であるかのごとく受け取れる。

しかし、なぜ「女であることの生きづらさが報道され、そのたびに、『女の時代』は遠ざかる」ことになるのか。「女であることの生きづらさが報道され」るのは、女性が生きやすくなるためには欠かせないことだ。どんどん報道してもらって結構だ。報道され、その理不尽さが指摘され、女性の思いが共有されることで、「女の時代」は近づいてくる。

「今年はいよいよ、時代が変わる」は、新元号を意識したものか。元号が変わったところで、女性のおかれた状況は何も変わらないだろ。「活躍だ、進出だともてはやされるだけの『女の時代』なら、永久に来なくていいと私たちは思う」は、「女の時代」なんか永久に来なくていいというメッセージにしか聞こえない。

「もてはやし」で終わらずに、真の「女の時代」にするには、女性が活躍し、進出し、それが定着していかねばならない。この広告からは、「実は、女性には活躍も進出もしてほしくない」という本音が透けて見える気がしてならない。

「時代の中心に、男も女もない」と、中心になったことのない女に言わせてほくそ笑んでいる男が、この文を作ったのか。「そうやって想像するだけで、ワクワクしませんか」と、パイを投げつけられても微笑んでやり過ごす「大人の」女。そんな女の時代なら、本当にいらない。

幸い(?)西武百貨店は自宅の近所にはないので、買い物に行くことはない。いや、近所にあったら、直接抗議に行けたところだが、行けなくて残念だ。近くを訪れた際には、「あなたの店では買い物をしません」とだけ、伝えに行こうかな。

新年早々、あまりに不快な動画を見てしまったので、口直しに(?)『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』(サッサ・ブーレグレーン作、枇谷玲子訳 2018年5月31日発行 岩崎書店)を読んだ。男女平等の先進国、スウェーデンの本だ。

主人公の少女エッバが新聞の四コマ漫画を探していて、世界の権力者たち(G8ジェノバサミット)の写真が目に入る。世界の権力者に女性が一人もいないのはおかしいと気づくところから物語は始まる。そうして、友だちと「フェミクラブ」を作り、いろいろなことを調査して学んでいくというお話だ。

作者のサッサ・ブーレグレーンは、「フェミニズム」という言葉を、「フェミニズムとはまず、男性と女性の間に、不平等があることに気づくこと」としている。

「フェミクラブ」で主人公たちは、女性の権利獲得の歴史を学び、フェミニストの詩人のことや、女性が選挙権を手に入れるまでに35年もかかったことなどを知る。そして、女性だけでなく男性の生きづらさにも気づき、「お父さんを家にいさせて」「お父さんを解放して」と行動を起こしていく。

「フェミクラブ」のモットーはこうだ。

わたしはわたし、そのままの自分でいさせて!
ぼくはぼく、そのままの自分でいさせて!

西武百貨店の「わたしは、私」と、フェミクラブの「わたしはわたし」。同じ言葉の響きでも、その中身の差は歴然としている。

世界保健フォーラムが発表したジェンダー・ギャップ指数の男女平等ランキング。第3位のスウェーデンと第110位の日本。道のりは遥か遠いが、猪にあやかって、戦争のない女の時代をめざして、猛進するしかない。

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