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スクールフェミ「 高止まりしたままの女子中高生の自殺 〜私たちに何ができるか〜」

深井恵2025.03.25

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小中高生の自殺は2011年以降300人台で推移していたが、新型コロナウィルスの感染が拡大した2020年に499人に急増して以降、コロナ禍が収束した後も500人前後で高止まりしている。全世代での自殺者数は減少しているのにもかかわらず、少子化が進んでいるのにもかかわらず、である。

厚生労働省自殺対策推進室が警察庁自殺統計原票データをもとにして作成した「小中高生の自殺者数年次推移」(2024年(暫定値))によると、小中高生は、統計がある1980年以降で最多の527人となった。内訳は女子288人、男子239人で、初めて女子が男子を上回った。特に、中学・高校生の女子の増加が目立つ。女子中高生に一体何が起きているのだろうか。

文部科学省が自殺の原因として把握しているのは、女子は「健康問題」がトップ。健康問題の中で一番多いのは、うつ病だという。だが、うつ病になる原因は明らかにされていない。原因は何もなくて、うつ病にはならないだろう。うつ病の人の声として、「人間関係に気を遣いすぎ」「他人にどう見られているか気になる」「進路先に悩む」という主な理由が挙げられている。

このうつ病の人の悩み、ジェンダーが影響及ぼしているのではないだろうか。まず、「人間関係に気を遣いすぎ」についてだが、気を遣うようにしつけられるのは、女子の方が多いのではないかということだ。子どもの頃、気の利かない女の子はダメだと、言われたことのある女性は多いのではないだろうか。筆者自身も「あんたは気が利かない。そんなんじゃダメ」などと母から言われた覚えがある。同じことを母は弟には言っていなかった気がする。女は気を遣って当たり前。常に気を遣うことを要求されながら育つ。学校でも家庭でも気を遣っていれば、疲れるのも当然なことだ。

次に「他人にどう見られているのか気になる」というのも、根っこは同じ気がする。「見られる性」が女性について回っている。容姿を気にせずにはいられないというか、いや、「容姿を気にさせられすぎている」と言うべきか。モデル体型のように痩せていることを「よし」とする風潮は、一昔前よりは収まったようだが、それでも、見た目が「かわいい」「美しい」ことを社会から要求されている気がする。

 三つ目の「進路先に悩む」というのも、男子より女子に多くのしかかると思われる。女子の方が、進路先に制限がかかりやすいと言えるからだ。都心部では四年制大学への女子の進学は当たり前になっているようだが、地方ではまだまだそうではない。「女の子だから短大で良い」とか「女の子だから就職すればいい」とか。兄弟がいて、経済的に制限がある場合、女子のほうにしわ寄せが来て、本人が望まない進路を選択せざるを得なくなる。

筆者自身も高校3年生の時、地元の国立大学一校しか受験させてもらえず、「落ちたら、就職」と言われた。弟には「男だから県外の大学くらい行かなきゃ」と母は言っていた。大学院に行きたいと伝えたときには、「大学院に行って、これ以上何を学ぶ。さっさと働きなさい」と言われた。弟には「男だから大学院くらい出てないと」と、母はあっさり大学院進学を認めた。経済的に困窮を極めていたのにもかかわらず。

同じような状況がまだまだ残っているのではないかと想像する。コロナ禍後、物価高が続き、経済的に厳しい家庭も少なくないだろう。経済的な理由から進みたい進路に進めない女子中高生が増えているのかもしれない。あくまで、想像の域を出ないが。経済的な困窮は、栄養不足にもつながる。栄養不足も、うつ病の要因の一つだ。育ち盛りの中高生が栄養不足になれば、心身の発達に悪影響が出るだろう。

健康問題には、望まない性的接触、妊娠、中絶・出産も含まれているのではないかと危惧される。本人の意思に反した合意のない性的接触は、女子中高生の心と体に多大な影響を及ぼすだろう。望まない妊娠を知ってしまったらなおさらだ。うつ病にもなりかねないし、進路変更を余儀なくされるかもしれない。

しかし、これらの理由は、何も今に始まったことではない。残念ながら、この国では昔からある問題だ。では、ここ数年で女子中高生がより一層生きづらくなった要因は何なのか。コロナ以降に広がって定着したものが、その要因として考えられそうだ。考えられるのは、タブレット端末・スマートフォン、経済格差、そして室内で過ごす時間の増加だ。

誰しもがカメラ(スマートフォン)を常に持ち歩き、いつどこで誰から盗撮されるかはわからないご時世。実際、盗撮の検挙数は増加の一途をたどっている。写真を撮られてネットにさらされる危険は増すばかりだ。AIを使ったいかがわしいコラージュ画像も出回っているという。以前はアイドルの画像を加工したものが主流だったが、最近は卒業アルバムなどを使って実名や住所まで掲載されてしまう事例まで出てきている。

室内にいる時間が長くなれば、タブレット端末でスマートフォンを用いて、人の人権を踏みにじるようなよからぬことに使ってしまうケースも増えるだろう。室内にいる時間が長くなれば、先程述べた望まない性的接触に及ぶ危険性も高まる。

 一日に何十通も来るSNSをチェックするのも一苦労だろう。返信しないわけにはいかないこともあるだろうし、書き込み内容によっては、炎上することもある。一度ネット上に掲載されれば、そう簡単には消せないデジタルタトゥーとなってしまうこともある。

これらを解決するには、どうすればいいか。特効薬は見当たらない。女性の人権を蹂躙せず、尊重する人権感覚を醸成すること、ジェンダー平等教育を地道に続けていくことしか、解決の方策はないのではないだろうかと考えている。

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