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幸せな毒娘 Vol.51 オッパが容認したフェミニズム

JayooByul2025.03.21

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韓国には「オッパが容認したフェミニズム(오빠가 허락한 페미니즘)」と言う言葉があります。

オッパとは直訳すると「お兄さん」を指す言葉ですが、韓国では恋人関係の彼氏を含め、比較的に距離の近い目上の男性を呼ぶときに使われる言葉です。反面、この言葉は男性たちがまだ経験の浅い女性に偉そうに振る舞ったり、マンスプレイニングをする際によく自分を指す言葉としても知られています。そのため、韓国では話頭を「オッパが…」、「オッパは…」等の言葉で始める男を表すオッパムセという言葉もできました。オウム(앵무새:エンムセ)のようにオッパと言う単語を無限に繰り返すという意味です。

このようにオッパという言葉は韓国のフェミニストの中ではとてもネガティブなイメージがあります。なのでオッパが容認したフェミニズムとは、男の機嫌を伺いながらフェミニズムに対して懐疑的な態度を取る女性や、フェミニズムについて「それはちゃんとしたフェミニズムではない」とあれこれ口を出す男性に使う言葉です。

Black Lives Matterは黒人のため、

労働者組合は労働者のため、

障碍者人権運動は障碍者のため。

当たり前な事ですが、やたら「皆のためであるべき」と干渉される人権運動がありますね。それはフェミニズム―女性運動です。私は他の人権運動家に向かって「白人やアジアンの人権は気にしないのか!」、「雇い主も大変なのだ!社長のプレッシャーは気にしてないのか!」、「非障碍者にも配慮すべきだ!お前らは非障碍者嫌悪者なのか!」等を叫ぶ人を見たことがありません。当たり前です。どう考えたって屁理屈ですから。しかし何故フェミニズムに関しては「男の人権も大事だ」と声を上げる人がこんなにも多いのでしょうか?何故多くのフェミニズムイベントは他の人権運動と連帯しながら開催される事が多いのでしょうか?それは女性の人権が「女性」単独の権利として認められてないという反証ではないでしょうか。まさに女性は男性抜きでは何も決めてはいけないと言っているかのようです。

アメリカの女性水泳選手だったライリー・ゲインズ(Riley Gaines)を覚えていますか?トランスジェンダー選手のリア・トーマス (Lia Thomas)に対抗し、女性のスポーツや女性スペースを守ろうと先頭に立ち戦った女性人権運動家の中の一人です。リアは男性として試合に出た時はパッとしない成績を出していましたが、急にホルモン治療を受けトランス女性として女性水泳試合に出場―かつてない成績で一位を取りました。人の多様性を尊重し、ありのままの自分で活躍できる場を与えること。言葉だけ聞くととても理想的で素敵な世界観です。しかしその間、多くの(生物学的)女性選手たちは性暴力被害を訴えていました。彼女たちは更衣室で週に18回も、リアの前で強制的に服を着替えなければなりませんでした。それを嫌だと感じる生徒に大学側は「男性の前で自然に服が脱げるよう」教育という名のカウンセリングを提供していたといいます。そして彼女らの訴えをトランスヘイター的な考え方として一蹴したのです。それは被害者に責任を転嫁するとても悪質なガスライティングでした。

そんなにポリティカルコレクトネスを重要視し、多様性を尊重しようとする人たちが、何故「男性の身体に拒否感を持つ女性もいる」という事は尊重出来ないのだろうか。去年の今頃、ライリ―と15人の大学の女性選手たちは全米大学体育協会(NCAA)が女性を差別したと連邦裁判所に告訴しました。それでも人々は彼女たちをトランスジェンダーを尊重しない自己中心的なフェミナチ、魔女呼ばわりしながら貶しました。

それから一年、アメリカの新しい大統領となったトランプ氏が破格的な宣言をしましたね。トランスジェンダー女性が女性のスポーツに参加する事を禁じるという声明でした。トランプ大統領は女の子たちを(生物学的)男性の侵略から守り、より公平で安全な環境を提供する事を誓いました。ライリーを含めた多くの女性たちはその法律が発表される場をトランプ大統領と共にし、満面の笑顔を浮かべ喜びの声を上げていました。*

そのニュースを見た瞬間、私は何かやるせない気持ちになってしまいました。21世紀になっても、未だに

女性が嫌な思いや不安を抱かない日常を過ごしたい。

正々堂々とした競争をしたい。

こんなに基本的な権利を訴えることすら「女性」たちには許されていないのだと。白人男性の力を借りなくては女性は人間としての尊厳すら守れないのだと。ある記事の「生理をする性別」という表現に対して、「女性という言葉があるよ」とハリーポッターの作者 J・K・ローリングさんが指摘しただけで、世界の人々に叩かれ、脅されていた時とは大きく変わったこの状況をどう考えればいいのでしょうか。女性が女性のために声を上げている時には皆が怯えてばかりで前に立つことすら出来なかったのではないか。

女性たちの戦いはまだ始まってもいません。アメリカはアメリカ。多くの国々ではまだまだ「女性スペース」を巡って激しい議論が続いています。

果たしてトランス女性の人権は女性スペースをシェアする事で守られるのでしょうか。
「他の女性と同じスペースをシェアしたい」気持ちは何故いつも「男性の身体を持った人と同じスペースをシェアしたくない」気持ちより優先されなければならないのでしょうか。

既に答えの出ている様々な疑問が私の脳をよぎりますが、私はその答えを口に出せる権力を持って生まれてないので敢えて言わずにして置きます。

*https://www.abc.net.au/news/2025-02-06/trump-signs-ban-on-transgender-athletes/104903598

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JayooByul

JayooByul(じゃゆびょる)

JayooByul (ジャヨビョル)日本のお嫁さんとオーストラリアで仲良くコアラ暮らしをしています。堂々なるDV・性犯罪生存者。気づいたらフェミニストと呼ばれていました。毒娘で幸せです。

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