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TALK ABOUT THIS WORLD ドイツ編 いろいろないろ

中沢あき2025.01.27

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先月は日本に居た。私は自分の仕事やら両親の手伝いをする傍ら、我が子は実家から数駅の幼稚園に2週間半通った。一年前もお世話になった幼稚園で、ゆえに顔馴染みのお友達や先生が迎えてくれ、前回は後半に毎日泣きべそをかきながら通っていた我が子も今回はあっという間にクラスの中に入り、一年前は「〇〇ちゃん」と呼び合っていたお友達を「みさこが〜」「さつきが〜」と呼び捨てで呼んでいて、今どきの幼稚園生はもう女子高生みたいな話し方をするのか!?と、現代の子ども事情をアップデートした私だった。

普段はドイツの公立幼稚園に通う我が子だから、日本の幼稚園のルールは厳しく感じるかもしれない、と当初は心配していたが、そもそもこんな数週間のみの体験通園をさせてくれた幼稚園だけあって、そのおおらかな教育方針にほっとしたのが前回の事。それどころか真冬でも裸足でどろんこ遊びをする年少組の子どもたちを見て、基本的に北国とはいえ、東京の真冬とそれほど変わらない気温でもモコモコに着膨れしているドイツの子どもたちより元気だなあとひそかに驚いた。
都会の幼稚園とはいえ、園庭で柿の収穫をしたり、園外に借りている畑でダイコンやジャガイモの収穫を体験させてくれたりとそれなりの自然に触れることもさせてくれるし、幼稚園なので保育時間は午後早くまでだが、ドイツの幼稚園より1時間ちょっと早いくらいで、あとは毎日開園しているから、ドイツの幼稚園のように突然「明日は半分閉鎖します」の通知に怯えなくてもいい。ちなみに日本滞在中も数度、ドイツの幼稚園の方からは保護者向けの人員不足による閉鎖のお知らせが届いて、やれやれと思った。

我が子がドイツで通う幼稚園はドイツでは一般的なインクルージョン教育で、各クラスには3歳から6歳まで年齢層が一緒になり、親の出身国や言語や宗教、文化や肌の色も様々な子どもたちが一緒になることは当然で、そのほか、我が子のクラスには知的発達の遅い子どももいたりする。今回日本で通った幼稚園もまたインクルージョン教育を実施している園で、さすがにドイツのように肌の色の違う子どもたちが多く混ざることはないが、たまたま親が日本人以外である子どもが複数いたり、世間一般でいう「発達障害」なのだろうなと思う子どもたちもいた。我が子のクラスにいたUちゃんは、そういう「マイペースさん」である。
おおらかな教育方針とはいえ、団体行動をしなければならない場面でこうした「マイペースさん」をフォローするのは先生にとってなかなか大変なことだろう。我が子いわく、Uちゃんが他の子を叩いた、とか、急にどっかに行っちゃうんだよねーと話すのを聞いていたが、授業参観の時も他の子どもたちが一緒に立ち並ぶ中、別のところに行ってしまうUちゃんを見て、ああー、またUちゃんが行っちゃったよーと、やれやれ、しょうがないなあ、といった感じで呟く子どもたちを見て、でもその話し方がなんというか、あきらめと共にUちゃんに対する愛も感じられて、ほほえましかった、なんて言ったら私は考えが甘いだろうか。
ちなみに前回はもう一人、同じような行動の子がクラスにいたのだが、その子は転園したのか今回はいなかった。対応する先生は本当に大変だ。いつも無理やり連れ戻すわけでもなく、根気よく呼びかけたり、またはある程度は放っておいたり。その対応の仕方もその時々で考えているのかなと感じた。

さて、他にも月毎のお誕生会があったりクリスマス会があったりと行事もたくさん体験しながら、2週間半はあっという間に過ぎた。最後の日、お迎えに行ったら、Uちゃんのおばあちゃんと一緒になった。お母さんがワーママで忙しいらしく、Uちゃんのお迎えをするおばあちゃんとは園庭開放の時などに顔を合わせていろいろとお喋りをしたことがあった。出てきた我が子を見てUちゃんのおばあちゃんは「去年に比べてとっても大人らしくなったわねえ、うらやましいわ」と言うから、いやいやUちゃんも大きくなって成長してますよと返していたら、その場にいた担任の先生がそういえば!とちょっと興奮気味に話し出した。

今日はCちゃん(我が子)の最後の日だから、皆に話したんですよ「みんなは来年から小学校に行くから、もうこの園にはいないでしょ?だからCちゃんとも今日で最後なんだよ」って。そうしたらUちゃんが「でも心はみんなつながってるんだよ!」って言ったんです!

「ええー、そんなすてきなことをUちゃんが言ったの!?」とその場にいた大人たちは全員声を揃えてUちゃんをほめた。すごいねえ、Uちゃん、そんなことを言えるなんて!

その話を嬉しそうに聞くUちゃんのおばあちゃんや大人たちをよそに、子どもたちはいつものように駆け回っている。そんな子どもたちを見やった先生の目は心なしか、ちょっとうるんでいるように見えた。現場で苦労することも多々あるだろう先生の気持ちはこういう瞬間に報われたりするのかな、そうだといいなとそっと思った。

日本滞在中はテレビっ子だった子どもが見ていたテレビ番組の歌を最近よく聞いている。NHK Eテレの番組「あおきいろ」のテーマソングの「ツバメ」だ。いつも夕食の支度などでバタバタしながら横目でしか見ていなかったから何の番組なのかよく知らなかったのだが、子どもが口ずさむその歌が気になって調べたら、SDGsをテーマにした番組なのだそうだ。番組タイトルの「あおきいろ」は、『「あお」と「きいろ」は、ちがう色だけど、2つかさなると同じ「みどりに」なる。 いろとりどりな命がかさなり、ひびきあうことで、ともによろこび、ともにたすけあい、ともに生きていく。 そんな「共生マインド」を育む(NHKホームページより)』という意味なのだそうだ。

1月20日、ドナルド・トランプが再び大統領になった。そして早速大統領令を発動し、これまでの多様性政策を撤廃するという。どんな政策にも陽と陰の面がある。が、是正ではなくて撤廃とは、さすがトランプは極端だ。ため息をつく気にもならなくて、ただ冷えた心でラジオのニュースを次々に聞いていく。

マジョリティもマイノリティも、お互いの権利を主張することが対立とならない方法ってないんだろうか?この「ツバメ」の歌を聞くとなぜか涙ぐんでしまうのは、歳とってセンチになっただけじゃないと思う。

©︎ : Aki Nakazawa

2025年の幕開けはあんまり明るくなさそうだなあと思うこの頃ですが、年末に日本で見た紅白歌合戦で知った「青と夏」という歌をドイツに帰ってからも繰り返し聞いています。若い世代がこんなに希望がある明るい歌を歌っていて、それを聞いて励まされる人がたくさんいるのなら、まだ捨てたもんじゃないなと、そんな小さな希望を感じています。

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中沢あき

中沢あき(なかざわ・あき)

映像作家、キュレーターとして様々な映像関連の施設やイベントに携わる。2005年より在独。以降、ドイツ及び欧州の映画祭のアドバイザーやコーディネートなどを担当。また自らの作品制作や展示も行っている。その他、ドイツの日常生活や文化の紹介や執筆、翻訳なども手がけている。 

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