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幸せな毒娘 Vol.50 韓国、男性、ロマンチック、成功的

JayooByul2025.01.23

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世界的に話題となりネットフリックスの加入者を大幅に増やしたという韓国の人気ドラマ「イカゲーム」のシーズン2が出ましたね。私もシーズン1が出た時にはあまりにもの新しい展開に、平日仕事が終わった後も数日にかけて徹夜をしながら見終えた覚えがあります。最後の最後に黒幕の顔が明かされるまでは、ですね。
だってその俳優の実力がどうであれ、仮面の裏から不倫で大騒ぎになった俳優が出てきたらストーリーへの没入感がそがれてしまうのも当たり前じゃないですか。
彼が相手の女性に送っていた「내일, 너, 로맨틱, 성공적(明日、キミ、ロマンチック、成功的)」と言うカカオのメッセージは未だに知らない人がいないくらい有名なミームにもなっていました。

それだけではありません。シーズン1で活躍していた高齢の俳優はドラマが話題になりはじめて早々セクハラで有罪の判決を受けました。
芸能界にいる男性からの性犯罪—芸能界に限った話ではありませんが—よくある話ですが、被害者女性たちは一般人だったり、まだ力のない芸能人の卵だったりして、水面に浮かぶより消される場合が殆どです。彼の犯行は数年前の犯行ではありましたが、ネットフリックスとの契約であまりにも有名になった「おかげ」で自分が犯した過去の罪から逃れなかったのでしょうね。

しかしそれが世間に知られたのもイカゲームが公開された後のこと。「男性」ですから不倫くらいはどうってことありませんし、「まあ仕方がないか」で済ませたかも知れません。シーズン2のキャストが発表されるまではですよ?
シーズン2の予告編を見た私は目を疑いました。芸能人にはあまり詳しくない私が見ても、何か見慣れた顔がいるなぁと思ったのです。それで直接キャストの名前を調べる事にしました。そしたら麻薬で逮捕された男や、性犯罪に関わっている男の俳優の名前も出て来るではないですか。厳密に言うと、その中の一人は時効満了で裁判を続けることができなかったため、韓国の社会では犯罪者ではありません。他の一人は無罪判決となったので実際冤罪だったと言われますが、論点はそこではありません。

もし彼らの性別が「女性」であったとすれば—「俳優」ではなく「女優」や「女性のアイドル」だったとすれば—果たしてこのような華麗なスクリーン復帰が果たせたのでしょうか?
例え、彼女本人になんの罪のない冤罪だったとしても、大衆の前に出ることはできなかったでしょう。それが韓国に生まれた女性たちの宿命ですから。

中でも麻薬投与の疑いで有罪判決が下った男性を「麻薬中毒者の役」としてスカウトしたところはまさに視聴者をあざ笑っているのかのようにも感じました。経験者優遇?というものでしょうか。きっと時間が経てばなんでもかんでも忘れていく韓国の国民情緒を分かっているからでしょう。
その通り。人々は「色々あったけど、演技力だけは認めるしかない」、「フェミニストたちが何を言おうが、逆にノイズマーケティングになっている」などと言い、シーズン2も何の苦もなく大成功。しかし、その「時間が経てばなんでも忘れる」と言う寛大さは男に限ってだけ発揮されます。

韓国には20年も前に麻薬をした疑いで全ての活動から降ろされて未だに復帰できていない、一時とても有名だった女優さんがいます。うつ病などで薬物乱用をしたとし、素晴らしい才能を持ちながらもステージに立てなくなった女性のアイドルだっています。不倫だって、冤罪だって同じです。リベンジポルノの生存者になったとしても、女性がこの業界でキャリアを続けていくのは難しいでしょう。

イカゲームは大勢の俳優の中からわざわざ炎上して大衆から忘れられていってもおかしくなかった人々を選びました。そして世界的に名前を知らせる場となる大きな作品を、不倫と言う倫理的な過ちを犯した男・実際に有罪判決を受けた犯罪者・運良く犯罪者にはならずに済んだ男・冤罪で炎上した男等を含め、あらゆる問題を抱えている男たちのキャリアのバックアップの土台に使ったのです。涙なしでは見れない強い男同士の絆ですね。

ですが、その連帯は今に始まったことではありません。韓国の有名な芸能人の中には、飲酒運転で人を殺したあとも平気な顔で芸能界への復帰を果たした男もいれば、未成年者だった嫁をレイプした後無理やり結婚させDVを続けていた男もいました。普段なら犯罪となるセクハラ発言も、「放送だから」と言い、しかもそれは「セクドリブ(性的なアドリブの略、下ネタ)」のような軽い冗談と見做され、「キャラクター」として売り出すことに成功した男もいます。

私は男もこうなんだから女性犯罪者だとしても簡単に社会復帰できるようにしてほしいと言っている訳ではありません。でも男はどんな罪を犯してもすぐ大衆に容認され、女だけが厳しい基準で問われる社会と、男性の犯罪者と女性犯罪者どっちも自由に社会で活躍できるような社会、二択しかないと言うのならば迷わず後者を選びます。
男にさえ生まれれば麻薬経験も経歴となる韓国の社会。その恐ろしいとも言える男性たちの連帯から女性たちの人権を勝ち取るためには一体どうすればいいのでしょうか。

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JayooByul

JayooByul(じゃゆびょる)

JayooByul (ジャヨビョル)日本のお嫁さんとオーストラリアで仲良くコアラ暮らしをしています。堂々なるDV・性犯罪生存者。気づいたらフェミニストと呼ばれていました。毒娘で幸せです。

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