ハラスメントはどうしてなくならない?
2018.12.20
先日、高速バスで1時間あまりの地方都市に出かけてきました。スキー場もある、山あいの町です。日曜の朝の高速バスターミナルはにぎやかでした。全国あちこちに向かうバスが次々に到着しては、リュックやスーツケースを引いた人たちが乗り込んでいきます。
仕事とはいえ、お天気もよくて、久しぶりのバス旅気分でうれしくなりました。
この日は自治体主催の一般市民向け「セクハラ・パワハラ すっきり講座」。
「すっきり講座」か~・・・ということで、内容と目的がわかりやすいタイトルを考えました。
「ハラスメントはどうしてなくならないの?~問題の現状とその正体、私を守るコツ~」
自治体ではいろいろな講座や事業がありますが、一般市民に向けた講座は当日にならないとどのくらい人が来てくれるかわかりません。
それでもこのテーマで、師走の日曜日だというのに、20人(スタッフもいれて)ほどになりました。
男性が半数、これはちょっと意外。参加したのはどうしてかな?・・・。世代は30代~70代まで。こういった講座では、個人的な問題を抱えている人、当事者がいることも考えられます。企業から来ている人もいたようです。
このテーマで、この人数なら、それなりのつっこんだ話もしやすい雰囲気です。
セクハラもパワハラも、人が引き起こしてくれるこの手のやっかいな問題は、都市部だから、のどかな地方都市だからと、地域差なんて関係ないですから。ご存じのとおり、どこでだって、誰にだって、いつだって起きている問題です。静かで穏やかにみえるこの町にも、潜んでいるはず。残念だけど、ないわけがない。
顔が見えて、長年のつきあいが深くて、地元のしがらみや関係性が強い土地柄にこそ、見えにくさや顕在化しにくい風潮があるといえる。あることも言えず、あったことをないことにされたり、被害をうやむやにされていることが、残念ながらある、ある、ある・・・といえるでしょうね。
だけど、しょっぱなからそうはつっこめません。
女性講座や女性セミナーだったら、ハラスメントに限らず、ストレートに本音を話しあったりオフレコで盛り上がったりしながら、シスターフッドやつながりを感じる時間が生まれていくのが面白いところです。地域を問わず。「女」どうしの安心感で、事例ひとつをとりあげても、「うん、うん、ある、ある」って、わ~っとつながりやすいし、そこにある問題を共有する「すっきり」感が生まれやすいです。
でも、男女が混在しての研修ではなかなかそうはいきません。正直、すご~く気を使います。
セクハラや性暴力で「女」が被害にあっているのは事実です。でもすべての「男」が加害者ではありません。女であれ男であれ、ひとくくりに扱われると不快ですよね。
性差に関係なく加害者・被害者がいること、しかも今回はパワハラも含めて、問題や事実を客観的に扱うよう、慎重になります。
ハラスメントが何なのか、事実を知って理解してもらうこと、自分なりに納得して考えてもらわないと研修の意味がありません。
ここからは講座内容で扱ったことです
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改正均等法の「事業主に対するセクハラ防止措置の義務化」から20年が過ぎました。
さまざまなハラスメントがつながって問題提起されています。
それは、セクハラから始まりました。言葉が生まれたこと、物事に名前がついたこと、それが問題として認識されていったこと。
セクハラ、パワハラ、マタハラ、モラハラ、レイハラ、ネトハラ、SOGIハラ・・・
平成元年「セクシュアル・ハラスメント」は流行語大賞新語部門金賞に選ばれるというブームに始まって、平成最後の今年は「#MeToo」に終わるというオチのよさ。
#MeToo運動は「TIME’S UP」に動いている世界の中で、日本は110年ぶりの性犯罪の刑法改正程度という現実です。こういう問題に対しては、ミリ単位でしか動こうとしない国、ともいえますね。
ただ、2018年は日本でも遅ればせながら#MeTooでセクハラ問題が再燃しましたよね! ダントツ検索上位に挙がったのが
「おっぱいさわっていい?」
これ、有名なセリフになりました。ところが
「セクハラ罪という罪はない!」そう、これも有名になりました。
加害行為のあほらしさ、そのハラッサーにもあきれるけど、日本のトップレベルにいる人の堂々とした加害者擁護、かばい方、その姿勢、態度の方が問題でしょ。
ところが、その擁護発言を正当化するために、政府がすぐさま閣議で答弁書を決定しています。
「セクシュアル・ハラスメントとして処罰する旨を規定した刑罰法令は存在しない」
こういうところはすばやい行動力。これって、擁護発言者を擁護するためですよね。法整備はなんだかんだと後回ししてきたのに。いったいなんのためのセクハラ規定なんやねん、とため息です。
確かに、均等法のセクハラ規定は、事業主にセクハラの配慮や措置義務を規定しているものです。日本には「セクハラ罪」はないのです。
で、他の国のセクハラ対策を見てみると、アメリカ(公民権法)、フランス(刑法典/労働法典)、イギリス(平等法/ハラスメント防止法)、台湾などは「禁止」や「刑事的処罰」が決めてあります。こういうことにはあえて目を背けているとしか思えません。
子どもたちも被害にあっていることは、知っていただきたいことです。
スクールセクハラの現実。身近な人から、学校や家庭の中にある性被害、性虐待の現実。
なぜ、子どもが狙われるのでしょう?
「相手が先生だから、抵抗できなかった・・・」(『スクールセクハラ』から)
その言葉をどう受け止めますか?
この被害者心理を理解できますか?
「性」にまつわる被害特有の問題だから、誰にも言えない気もちを・・・
ハラスメントは、単なる「いじめ・いやがらせ」ではありません。
「暴力的な攻撃・人権を侵害する行為」と言わないから、「その程度のこと」とあしらわれて、受け流されてきたのです。
その暴力性、攻撃性、人権を無視した行為によって、被害者は恐怖と無力感と孤立感で、
心身を病んでいったり、周囲からの二次被害でさらに苦しめられる現実があること、そこも理解してほしいところです。
被害者にとって、痛みの回復になるのはどんなことか、一緒に考えてみてほしいのです。
「私」ができることは何かを考えてみてほしい。
もし、自分の身に暴力的なことがふりかかったとしたら?
自分に何が起きているか、気づけますか?
危険を察知して、自分を守る体制をとれますか?
大事なことは、「問題」に気づけるか、どうか。そして、
問題の正体に気づくこと
問題の正体を見抜くこと
「自分を守るコツ」は
暴力的な人に巻き込まれないこと
どんな暴力も認めない、許さないこと
自分を大切にする「権利意識」が自分を守るのです。
権利意識とは自己肯定感、自己尊重感です。
自己尊重感が高いほど、自分の直感、感覚で動くし、自分を守る行動をとれるから。
先日の報道、厚労省審議会が職場のハラスメント対策に、ハラスメントは「許されないものである」と法律に明記する方針を固めた。労働組合などが求めていた「行為自体の禁止」は見送るが、抑止効果につなげる狙い。(2018年12月7日報道参照)
これも一歩前進ととるのか。なんでこういうところで粘るのか、やっぱりミリ単位でしか動こうとしないよなあ、とスッキリ感はもてません。
2時間ぶっとばしで話した「すっきり講座」。参加者に皆さんには休憩があればよかったですね、ごめんなさい。講座データもリニューアルしたので、機会があればまた。
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ところが、帰りのバスで、講座での「しまった!」ことを思い出して猛反省!
講座中、男性から「避妊しないセックスも性暴力?」。なんていい質問! これはあとでぜひ取り上げましょう、と言いながら、時間がとれなかった。あ~、なんて惜しいことをしてしまったのか、悔やんでも遅かりし。
半数が男性で、まさにそこ! 逆に女性として「聞きたい」「知りたい」「教えてほしい」「男の本音」を知るチャンス、避妊しないセックスに対しての男女の気もちを知り合う時間が・・・。(;´д`)
あ~~もったいないことしちゃった・・・
どこかで挽回するチャンスがほしい!