「女性活躍促進」と掲げながら!?
10月2日、第4次安倍改造内閣が発足した。女性閣僚は1人のみ。安倍政権は、「女性の活躍」とか掲げていませんでしたっけ…。とツッコむのも今さら感はある。「女性の活躍加速」とかいいながら、選択的夫婦別姓を盛り込んだ1996年に法制審が答申した民法改正案要綱を閣法として提出しないままの政権なのだから。しかし、やはりツッコもうではないか。
内閣府男女共同参画局のwebページに掲げられた「すべての女性が輝く社会づくり本部」による「女性活躍加速のための重点方針2018」は、「あらゆる分野における女性の活躍」を謳う中で、「あらゆる分野における女性の参画拡大・人材育成」も挙げ、政治分野については、政治分野における男女共同参画の推進に関する法律を踏まえ、(略)女性の参画状況、環境整備の状況・経年変化に関する「見える化」を一層推進し、分かりやすい形での情報提供や国民への意識啓発を行うなどとある。うん?企業に対しては女性役員候補者育成のための取組などとあるのに、なにか曖昧?民間に促すなら政府がまず率先して政府に女性を抜擢すべきではないか。「情報提供」や「意識啓発」など生ぬるい。というか、数少ない女性閣僚をあろうことかたったひとりにしてしまうなんて、意識啓発にも逆行する事態である。
世界では…
これに比べて6月にスペイン社会労働党のペドロ・サンチェス首相が公表した内閣の17人中11人が女性(「スペイン新内閣、女性閣僚17人中11人」BBCニュース2018年6月7日)。この連載でも何度も引用した気がするが、カナダのトルドー首相が2015年に組閣した際新内閣30人を男性15人、女性15人とした際、「なぜこれほどまでに男女平等を重要視した組閣となったのでしょうか?」と問われて、たったひと言、「2015年だから」と答えたときの清々しさ…(「カナダの新首相が、閣僚を男女同数にした理由がカッコよすぎる」ハフィントンポスト2015年11月9日16時41分)。この彼我の違いにめまい。
「2人分、3人分」?
安倍首相は10月2日の記者会見で、片山大臣に「2人分、3人分の発信力をもって仕事をしてほしい」と述べた。さらにロイターの記者から「今の時代を考えると、ちょっと少ないとは思わないのか」と質問されても、「確かに各国に比べて内閣における女性の比率が少ないということは認めざるを得ない。まさに日本は女性活躍の社会がスタートしたばかりで、これからどんどん入閣する人材が育ってくると思う」と述べたという(J-CASTニュース2018年10月2日19時39分「女性閣僚、片山さつき氏1人だが…「存在感は2人分も3人分も」と首相説明)。
はい?女性は1人で2人分も3人分も働け、そうであれば男に伍していると認めてあげる、とでも?女性には未だいい人材がいないとでも?「役員に増やせと言われてもいい人材がいなくてねえ」と民間だって言い訳に応用すること必至。「入閣する人材」って、あー、たとえば、財務省前事務次官のセクハラ問題について被害女性に攻撃的な発言をした麻生財務大臣とかですか…。第4次内閣でも相変わらず麻生氏は財務大臣…。そして、たったひとりの片山さつき大臣は、生活保護バッシングの急先鋒。早速「国税口利きで100万円」との文春砲も浴びている。なぜよりにもよって…。「女性閣僚なんていてもねえ」と思わせるための片山さつき起用か…というのは被害妄想か。いずれにせよ、「女性の活躍促進」の看板のメッキが剥がれていく。
曖昧な言葉でなく「男女平等」「差別解消」
だいたいなぜ女性を増やすのか。人々は性別その他既に多様なのに、ある性別に偏った人材ばかりで政治や企業の判断を牛耳っていたら、多様性を尊重しない、偏った判断ばかりで政策や企業活動が行われ、人々がどんより生きづらい社会になってしまうからではないか。それでは社会だって活性化しない。
ということをなぜ言わなければならない事態なのだ、女性の活躍を啓発するとかドヤ顔してのたまう国に?ん?やはり「女性の活躍」なんて曖昧な言葉は駄目なのではないか。女性に極端に家事育児責任を課したままで、でも2人分3人分も働けということすらいえる「女性の活躍」では。「男女平等」「性差別の解消」といったズバリな言葉ではなく、「均等」、さらには「男女共同参画」と曖昧にされてきた。それでもまだ気に入らないとばかりにさらに曖昧に「女性の活躍」。曖昧な言葉ではなく、平等、差別禁止といった言葉を取り戻さなくてはいけないのではないか。
一体どうしたら…と絶望的になりそうなところだが、第4次安倍内閣にき、改造を「評価しない」が50%で「評価する」が22%に過ぎず、「女性の閣僚はもっと多いほうが良かった」が54%(「そうは思わない」31%)、麻生財務省の留任を「評価しない」が54%(「評価する」29%)との世論調査(朝日新聞2018年10月15日20時51分)とのこと。朝日新聞以外の各紙の世論調査でも、改造によるご祝儀支持率上昇の効果はみられなかった。人々の判断には期待が持てる。時代は前進するはず。諦めずに、進もう。