国のお墨付きで、巨万の個人情報がベネッセに⁈ 〜「JAPAN e-Portfolio」に要注意〜
2018.10.11
沖縄知事選挙、玉城デニーさんが圧勝した。台風の影響も乗り越え、これ以上基地は要らない‼︎という民意が出した結果だ。オール沖縄の勝利だった。
佐喜真陣営は、選挙戦終盤には「携帯電話料金を4割削減します」などと、なりふり構わぬ演説内容まで盛り込んでいた。若者の票を一票でも獲得しようとした苦肉の策だったのだろう。会社の上司が部下を投票所まで連れて行き、候補者名を書いた投票用紙を撮影して報告させたケースもあったという。
「秘密投票」のはずが、記入した投票用紙まで撮影・報告させるとは。選挙管理委員は、投票会場でスマートフォンの撮影を許しているのだろうか。この国の選挙も、どこまで公平・公正に行われているのか、疑わしくなってくる。「総務省指定」と刻印されたスマートフォンに、プライバシーが国に牛耳られていることを日々感じている。
プライバシーが牛耳られていると言えば、ベネッセの情報網だ。学校教育とは切っても切り離すことはできないところまで入り込んでいる。生徒一人ひとりの住所、名前、電話番号、メールアドレス、五教科の模擬試験の点数から、志望校、学習実態、将来の職業に至るまで、「教育活動」の一環として、学校側が介在して個人情報を提供している。
もうこれ以上ベネッセに登録する個人情報はあるまいと思っていたら、更に恐ろしいほどの個人情報集約に狙いを定めていることが、先日分かった。2021年度の大学入学者選抜実施要項の変更予定により、高校側が作成する調査書の様式が変更される。それに伴い、いまの高校一年生から調査書の様式変更に対応を進めていこうと、「JAPAN e-Portfolio」https://jep.jp/(電子ポートフォリオ)を利用しようという話が持ち上がっている。
この電子ポートフォリオ、文部科学省入学選抜改革推進委託事業で、ベネッセが協力して、大学(関西学院大学、大阪大学、神戸大学、関西大学、早稲田大学、大阪教育大学、同志社大学、立命館大学)と整備を進めたという。
調査書の様式変更で大きく変わるのが、枚数制限だ。これまではA3用紙に1枚だったのだが、その枚数に制限がなくなり、備考欄に学習成果をたくさん記入できるようになるとか。クラス担任が所見欄を文章で記入していくのには、手間暇がかかる。一年生の頃からその生徒のことをよく知っているならまだしも、異動してきていきなり三年生のクラス担任になった場合、その生徒の一、二年生の頃の頑張りを、つぶさに
記入するのには限界がある。
そこで、今回提案された電子ポートフォリオというのが、生徒自身が頑張ったことを、その都度入力して、備考欄の材料をたくさん書きためていこうというものだ。一見、生徒の頑張った姿がたくさん集まって、よさそうに見える。クラス担任も調査書作成が楽になりそうな雰囲気だ。
たが、入力する内容、入力先を考えると、手放しで喜べない様相を呈している。生徒が入力する項目を挙げてみると、例えば、部活動の場合に入力する項目は次の通り。大会名、主催者名、開催年月日、開催場所、大会規模、予選・審査の有無、参加人数、参加校数、団体・個人、参加形態、順位・成績、記録、試合のふりかえり等。
学校行事の場合は、日時、場所、行事名、内容・趣旨、自己の役職、職務の内容、何を学んだか等。この他にも、資格や検定なら、主催団体名、実施会場、資格・検定名、資格取得年月日、合格・不合格の結果、検定を受験したふりかえり・・・と言ったところか。
ボランティア活動の場合も、日時、場所、行事名、内容・趣旨、何を学んだか等の入力が要求されそうだ。これらを、生徒自身がスマートフォンかPCを使って、その都度入力し、その都度、担当の教員が承認・登録するというシステムだ。
これらは、いずれ調査書にリンクすることを想定しているのだろうか。調査書には生徒の名前、生年月日、性別、現住所、高校三年間の成績(履修科目、取得単位数、評定等)や、遅刻・欠席・早退の回数・理由、クラス役員名や生徒会役員名、部活動等が含まれる。これらが電子ポートフォリオとリンクするとなると、個人情報ここに極まれりだ。
教員が入力作業をするためにも、ID・パスワード等の事前登録が必要だそうだ。教員名、学校名、担当教科名、担当学年、担当分掌名等を入力してから作業画面に入り込んでいくという。なぜ書類作成のために、ベネッセに教職員が自分の名前はもとより、学校名、担当教科名、担当学年、担当分掌名等を登録しなければならないのか、甚だ疑問である。
ベネッセにしてみれば、全国各地から莫大な個人情報が、まさに「濡れ手で粟」状態で手に入り続ける。ベネッセ側が何もしなくても、勝手に先方が詳細な個人情報を入力してくれるのだから、笑いが止まらないだろう。
これ、文部科学省の事業だ。国のお墨付きで、巨万の個人情報が一社に集中するシステム。過去に情報漏洩してしまった企業であるにもかかわらず、それが許されている。以前、日本学生支援機構の奨学金滞納者のリストが防衛省に流れていることが問題視されていた(経済的徴兵制)が、それを遥かに上回る問題が、いままさに進もうとしている。
ごく小さい活字で、個人情報の利用目的・範囲について、申し訳程度に書かれていた。以下はその内容だ。
「JAPAN e-Portfolio」に登録いただいた個人情報は、以下の目的で利用いたします。本コンソーシアムが個人情報及び学びのデータについては、文部科学省から委託した事業の実証研究を目的とし、以下の範囲において利用いたします。
・サービスの利便性向上を目的としたアンケート調査。
・個人が特定できないように匿名化した上で、調査・統計の集計データ化として利用。
・「JAPAN e-Portfolio」の利用を表明した大学において、平成30年度(平成31年度入試)より、入学者選抜における評価、参考データ、統計データ等での利用。
※各大学の利用方法は、募集要項等に明記されます。
※「JAPAN e-Portfolio」を利用する大学は、本サービス上で順次告知します。
最初から、データの利用が謳われている。この「JAPAN e-Portfolio」、使いたくないと拒んだらどうなるだろう。管理職から使うよう命令されるだろうか。自分以外の教員が登録することになったら、一人で拒むのにも限界がありそうだ。「生徒のため」を振りかざして、利用するよう促されることも考えられる。
教育という名の下に、生徒・教職員の個人情報が提供されようとしている。どこまで抗えるか、心許ないが、闘えるだけ闘おうと考えている。