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人権推進と平等の観点からの女性政策を!

打越さく良2018.08.20

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まさか安倍3選必至?
 第二次安倍政権は何度政権がふっとんでもいいくらいの不祥事・大問題が相次いだ。森友加計問題、厚生労働省データ改ざん問題、その挙げ句の高度プロフェッショナル制度の強行、災害対応よりカジノ法案を優先し強行、自民党を利するだけの参院選挙改革法案の強行、自衛隊日報隠蔽問題…(多分、まだ全部書き出せていない)。せめて9月の自民党総裁選では別の人物に代わってほしい。今年5月6月ころの各社の世論調査では、石破元幹事長と小泉進次郎筆頭幹事長が首位を争い、3位に安倍首相というものが多々あった(毎日新聞の5月の調査時事通信の6月の調査)。ところが、今や安倍三選は揺るがないようである。なぜだ…と天を仰いでつぶやく。虚しい。

 それも、総裁選の争点は、人々の関心事である「景気雇用」「高齢者向けの社会保障」etc.ではなく、全然優先してほしくない改憲だという(「政策の優先度、「憲法改正」最下位」朝日新聞デジタル2018年5月1日21時39分 )。アベノミクスとかつて華々しくぶちあげたはずなのに、そのあたりでは成果があげられないことから、ならば、9条改憲などといえば勇ましい、いいね!というのりだろうか。

キラキラフレーズで曖昧にされた女性関連政策
 かつてはアベノミクスの重要な柱であったはずの「女性の活躍」もどこにいったのか。女性関連政策は再び主流ではなくなったのか。女子受験者を減点していた東京医科大学の不正入試問題。前財務次官のセクハラを最終的にはセクハラと認めたものの当初「(前次官が記者に)ハメられて訴えられたんじゃないかとか、ご意見はいっぱいある」「セクハラ罪という罪はない」等、セクハラを許さないという断固たる姿勢を示すどころかの麻生財務大臣…。「女性の活躍」の看板のメッキが剥がれていっている。

 女性の生きづらさ、息苦しさは解消されていない。女性は活躍だのと言われなくても、過分な負担を課されず生き方を制約されなければ、それぞれのライフスタイルを選択し、自己実現をしていくはずだ。政権は、活躍とか輝くといったキラキラフレーズを使わなくていいから、差別解消、セクハラなどの人権侵害の防止を徹底すべきなのだ。憲法にある、性別による差別の禁止や両性の本質的平等という、手堅い文言を手放すべきではない。そういった骨太の、本質をつく言葉は忌避され、平等ではなく「均等」、さらに曖昧に「男女共同参画」などといった言葉が使われ、ついに、第二次安倍政権下では「男女共同参画」でさえかすれ、「活躍」「輝く」といったキラキラフレーズで曖昧にされてきた。そんな曖昧なフレーズのもと、どんな展開があったかといえば…。そういえば、14年10月に立ち上げられた「すべての女性が輝く社会づくり本部」は、当時の有村治子女性活躍担当大臣の肝煎り目玉政策として、「日本トイレ大賞」を掲げた。女性が活躍できるよう「暮らしの質」をあげると…大真面目に…。いや、性別にかかわらず排泄はするだろうに。さすがにこの賞は1回で終わったようではある。

 安倍政権の女性関連政策の主眼は、平等や差別解消を実現し、多様な女性たちの自己実現をサポートすることにあるとは到底底思えない。狙いは、人口減少が見舞われる日本が経済力を維持していくために、これまで働き手と目されていなかった女性も動員していかねばならない、ということなのだ。そもそも「女性の活躍」は、「経済再生」に向けた「3本の矢」のひとつとして打ち出されたのだから。

働く女性の待遇・環境改善は…
 もっとも、なんであれ、女性個人のためにもなるなら結果オーライではある。女性の活躍推進法(2015年成立)は、安倍政権の女性活躍政策の目玉となる立法であるが、同法の主眼は、就業率の上昇。労働人口の減少を背景に、女性の就業率は上がる。働く女性の55.8%が非正規労働であり、非正規労働者の賃金水準が正規労働者の約4割程度ということからして(平成29年国民生活基礎調査)、待遇の改善、賃金格差の解消にも取り組んでほしい。また、女性が第一子出産前後の就業継続率は未だ5割弱。男性も過労死寸前に長時間労働が当たり前では、ワンオペ育児の負担が女性にかかる。

 そうして、仕事を諦めるほかならない女性がまだまだいるのだ。この状況を改善すべく、保育所を整備するほか、男女問わず長時間労働を是正し育児の時間も確保できるようにしなければならない。しかし、待遇の是正や環境改善は後回し。それどころか、この7月、多くの反対がある中成立した「働き方関連法」の高度プロフェッショナル制度は、更なる長時間労働を促しかねない。全く逆行している。

 2016年2月中旬に投稿された「保育園落ちた日本死ね!!!」というブログに共鳴する女性は多かったが、同月、国会で安倍首相は「匿名である以上、実際に本当であるかを、私は確かめようがない」と突き放した。政権の表向きの看板とは裏腹に、女性の苦しみ、葛藤に何らの共感もなく、必要な支援をする気もないことが露呈された。政権に突き放されたのは、1人のブロガーのみならず、私たち自身ではないか。そう気づいた女性たちは、「保育園落ちたの私だ」というプラカードを掲げて、国会前に立ち、1週間で2万7682人分の署名を集め、政府に届けた。同年、「保育園落ちた日本死ね!!!」は流行語大賞をとるほどの注目度であった。しかし、現在もなお待機児童は減っていない。その要因は様々であるが、保育士の待遇改善なども必要性が指摘されている。ああ、トイレ大賞に使った税金を保育士待遇改善にあててほしかった…。

 安倍政権の「活躍」は多様な選択を尊重するものではなく、女性に対し、産めよ育てよ、介護せよと、家庭に留めその中での責任を負えと誘導したいというサインも発している。その点はこのサイトでも取り上げてきたので、参照していただきたい(「特別の教科」道徳のねらいとは…」 、「家族規範の教科はSOSの出せない親には逆効果」 )。

 家族を尊重せよ助けあえという24条改憲案は、戦前家族が国家の権力機構の末端に位置づけられ、女たちが妻として夫に従属し、母として子を「陛下の赤子」に育て上げるよう説かれたことを想起せざるを得ない。復古的な傾向のみならず、自己責任を強調し、家族にケアを押し付け、福祉を切り捨てていくネオリベな志向とも合致する。女性は、DVをふるわれながらも、耐えて家族を尊重せよ、助けよと迫られるのではないか。

 さらに、「自然」な単位としての家族とは、「祖父母・父母・子」の縦の「3世代」であって、そこから外れた、ひとり親家庭やゲイやレズビアンカップル等は除外することは明らかである。それは、来年度中学の道徳教科書などに描かれた家族が3世代で、ひとり親家庭や同性愛カップルは登場しないことからも予想できる。月刊誌の寄稿で、LGBTのカップ支援の政策について、「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり「生産性」がないのです」と否定した杉田水脈議員に、自民党は「十分に注意するよう指導した」と表明するに留め、処分はしなかった。やはり、「多様性を受容する社会」などという曖昧な文言では生ぬるいのだ。人権や差別解消を打ち出しているかどうかがキモなのだとつくづく思う。

 18年度の生活保護費見直しで、母子加算を平均2割カットしてしまったことも、ひとり親だからこそ必要となる経費を考慮せず、厳しい家庭をサポートするより切り捨てようとしているとしか思えない。
 いつまでも実現しないので私のライフワークになってしまった選択的夫婦別姓についての政権の態度も今さら繰り返さないが(「選択的夫婦別姓、諦めません!再び、訴訟へ!」 等)、人権や平等の観点にたっているのであれば真っ先に実現する女性関連政策のはずだ。

 6月26日、二階自民党幹事長が「子どもを産まないほうが幸せじゃないかと勝手なことを考える人がいる」と発言した。女性の自己決定は、少子化による国力の衰退を憂う国家としては、「勝手なこと」なのだ。このような与党・政権の掲げる「女性の活躍」が、女性を個人として尊厳のあるものとみなさず、家族、ひいては国家に奉仕せよというテーゼなのではないか、という懸念が、杞憂であってほしい。

 ともあれ、女性の社会進出と、ケア責任の押しつけは、両立しない。それを自己責任で突き放しても、無理なものは無理。それでも自己犠牲を求めるには、「家族の絆」を強調しよう、「勝手はいかん」と言っておこう…。安易すぎる。そろそろ、こんな政策では女性は輝けない、正攻法の人権推進と平等の観点からの政策をしなければ、と気づくときではなかろうか。

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打越さく良

打越さく良(うちこし・さくら)

弁護士・第二東京弁護士会所属・日弁連両性の平等委員会委員日弁連家事法制委員会委

得意分野は離婚、DV、親子など家族の問題、セクシュアルハラスメント、少年事件、子どもの虐待など、女性、子どもの人権にかかわる分野。DV等の被害を受け苦しんできた方たちの痛みに共感しつつ、前向きな一歩を踏み出せるようにお役に立ちたい!と熱い。
趣味は、読書、ヨガ、食べ歩き。嵐では櫻井君担当と言いながら、にのと大野くんもいいと悩み……今はにの担当とカミングアウト(笑)。

著書 「Q&A DV事件の実務 相談から保護命令・離婚事件まで」日本加除出版、「よくわかる民法改正―選択的夫婦別姓&婚外子差別撤廃を求めて」共著 朝陽会、「今こそ変えよう!家族法~婚外子差別・選択的夫婦別姓を考える」共著 日本加除出版

さかきばら法律事務所 http://sakakibara-law.com/index.html 
GALGender and Law(GAL) http://genderlaw.jp/index.html 
WAN(http://wan.or.jp/)で「離婚ガイド」連載中。

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