メンタルヘルスと性の解放・・・パリ在住のアーティスト前田英里さん「不適切な展示会」に行ってきました
2024.11.12
パリ在住アーティスト前田英里さんの作品展「不適切な展示会」に行ってきました。
なにがどうしてだからそれなのに「不適切」なのか。「不適切」なカラダを持ち、「不適切」な思考を手に、「不適切」に楽しむ女たちの性と精神が、陶器で表現されるという芸術。初めて味わう世界でした。すごいです。
「反抗期がなかった良い子だった」前田さんが、フェミニストアーティストとしてパリで活躍していく過程、その過程で生み出される数々の作品は、1つ1つ、その芸術的な美しさは言うまでもなく、「こんな風に私は世界に抵抗し、そして世界を形づくっている」という意思にあふれています。
私はこれまで前田さんの作品をInstagramを通してでしか見ていなかったのですが、そして画面を通じて見るだけでも強いものを感じていたのですが、実際、陶器の作品を目の前にすると・・・幾重にも複雑なレイヤーでの情報が一気に私に入ってくるような・・・身体ごとの体験でした。
前田さんとは1年ほど前に知人を介して知り合いました。
私たちが扱っているバイブレーターを陶器で再現した作品に衝撃を受けたのです。
女の体を堅い陶器で描く。その柔らかな肌質や、つやつやとした肌まで再現しつつ、そこに強い怒りと愛を感じるような・・・だけどどこかユーモラスで、軽い。
「女とはこうあるべき」「20代の女ならこうあるべき」「30代の女ならこうあるべき」・・・いろんな「あるべき」に、心の底からうっせーーーーーーーーーんだよーーーーーーーーーーーー! という声までを、形づくり、焼く。「プレジャー」を形にしたらどうなるのだろうと、焼く。釉薬の加減が時にエロティックになまめかしく、時に静けさを表現したりと・・・陶器って面白いんですね。と、にわかに、陶器によるモダンアートに魅せられるような気持ちなのです。
上記の写真は、プレジャーグッズとのコラボでつくられた「オーガズムを具現化した」作品です。ラブピのバイブレーターを提供させていただきました。ね、面白いよね。
そしてこれは、「SIDE EFFECT」(副作用)という作品。前田さんのテキストを引用します。
「アートの中で、タバコは歴史的に反抗や自己破壊の象徴として描かれてきました。この作品ではタバコを依存症の象徴として用い、習慣が繰り返されるサイクルや、その繰り返しが心の健康にどう影響するのかを表現しています」
日本では夏になると当然のようにビールの宣伝が街中に溢れますが、それはフランスでは「禁止」される行為だそうです。アルコール依存症の方々への配慮でもありますが、一方日本では、「酒を飲んでストレス解消されよう!」ということを社会が肯定し、商業として強くアピールするのが環境のように当たり前になってはいます。でも、そもそもなぜアルコールなの? 当たり前のようにアルコールが宣伝される環境が是とされているのはなぜなの? そんな新しい疑問や気づきを与えてくれます。
「Lipstick Monster」
美の基準でがんじがらめにしようとおいかけてくる「あいつら」に対してのうっせーーーーーーーーーんだよーーーーーーーーーーーー!がユーモラスに表現される作品です。
気持ち悪くて、怖くて、笑える・・・そんな世界を一人で築きながら、前田さんが経てきた時間の重さ、思考の強さを質で実感するような強いアート体験になりました。陶器のアートの世界、質と重量を伴う現代フェミニストアート、これからの作品もとても楽しみです。
ぜひぜひぜひぜひみなさん、観に行ってください!!
https://www.erimaeda-art.com/
「不適切な展示会」
会期: 2024年11月1日~11月30日
Open 11:00 / Close 20:00 11月30日は18:00クローズ
住所:東京都渋谷区神宮前1丁目11-6
時間:11:00~20:00
入場料:無料
前田英里さん(https://www.erimaeda-art.com/より)
前田英里(Eri Maeda)は、日本出身で現在パリに在住するアーティストです。リベラルアーツの学士号を取得後、グラフィックデザインの専門教育を受け、さらにマーケティングやブランディングの分野での経験を積みました。これらの経験を通じて、陶芸が強力な芸術表現の手段であることを発見。日本で陶芸の実践を始めました。
彼女の作品は、ストックホルム、ミラノ、パリ、ロンドンといった国際的な場で展示され、特にロンドンでの公共スペースでの展示では、多くの観客が作品に触れ、ボディ・ニュートラリティに関する重要な対話を促しました。
前田の作品は、社会的変化や個人的な成長を反映し、観客に深い考察を促します。陶芸の枠を超えて、新たな文化的対話を生み出すことに専念し、影響力のある作品を追求しています。