反対をよそにカジノ法成立
7月20日、カジノを含む総合型リゾート実施法が、自民公明日本維新の会などの賛成多数で可決成立。今国会での成立は「必要ない」76%という世論の法案(朝日新聞2018年7月15日22時20分)だ。西日本豪雨災害が続き誰の目にも緊急の対応の必要性が明らかというのに、河川や道路復旧を所轄する石井啓一郎国土交通大臣は、あろうことかカジノ法案審議にはりつけ。なぜ災害対応でなくこちらを優先しなければならないのか、意味がわからない。
ちなみに、安倍政権が、世論を口実にいっこうに閣法として提出しようとしない選択的夫婦別姓を導入する民法改正案については、反対が全体でも29.3%(賛成は42.5%。内閣府平成29年度家族の法制に関する世論調査 )。もっと反対が多いカジノ法案は豪雨災害対応よりも力をいれてまで強引に迅速に成立させてしまう。参院定数6増の改正公職選挙法など、衆参の審議時間は9時間15分のみ。党利党略との批判が強く、世論調査では「反対」が49.8%、23.3%の「賛成」を大きく上回った(時事ドットコムニュース)。にもかかわらず、強行採決…。めまいがする。
データの異常、虚偽答弁、文書の改ざん、記録の廃棄
今通常国会における政権による国会軽視は、これらの法案に限るものではない。国会軽視、いや、国会愚弄いうべき事態が続々と噴出した通常国会であった(「政権の強引さ、際だった」朝日新聞デジタル2018年7月21日5時2分 笹川翔平記者、河合達郎記者 )。厚生労働省の調査データの異常値、森友学園との国有地取引をめぐる財務省の虚偽答弁、文書の改ざん、交渉記録の廃棄、「存在しない」とされた陸上自衛隊のイラク日報「発見」、加計学園の獣医学部新設計画をめぐり首相が加計理事長と面会し「いいね」と述べたという、首相の答弁と食い違う愛媛県の文書…。ありえないことが次々と起こった。行政が公正に行われているか、民主的にチェックできなければ民主主義は成り立たない。虚偽答弁や文書の改ざんなど、民主政の根幹を揺るがす。それがあまりにも頻発された上、重要法案が数の力で成立していく。財務省の責任のとりかたはあまりにも軽い。麻生太郎財務大臣は辞任しないどころか、閣僚席で冷笑的な態度をとり続けた。
内閣がいくつもふっとんでもおかしくない不祥事ばかりだったというのに、安倍総理が自民党総裁選で三選するのだろうか。悪夢だ。しかし悪夢が実現しそうな予感がする。記録的な大雨になると気象庁が発表した7月5日夜、安倍首相を囲む自民党議員らによる「赤坂自民亭」なる写真を脱力しながらながめていると、この緩さのまま三選させてしまうのかとおののく…(「豪雨前の赤坂自民亭『慎んだ方が良かった』自民・森山氏」朝日新聞デジタル2018年7月10日20時30分)。西村康稔官房副長官は、「和気あいあいの中、若手議員も気さくな写真をとり放題!」とツイートし、「この非常時に懇親会!」等と炎上した。被災地への想像力がないのだろうか。
「和気あいあい」には上川陽子法務大臣が「女将」としてにっこり収まっている。その翌日の7月6日にはオウム真理教の元幹部7人の死刑が執行された。前日にはもう準備が出来ていたはずで、その報告を上川大臣は安倍首相にしただろう。それが、もしや、「和気あいあい」の「赤坂自民亭」で?少なくとも、話に出た?ゾッとするではないか。
バルネラブルな人々の視点での政治こそ
それにしても、被災地が心配である。西日本豪雨災害前の記事だが、「避難所の女性トイレは男性の3倍必要 命を守る「スフィア基準」が被災地を心配する人々により多く拡散された。カジノはいらない、トイレ、特に女性トイレを!と思った人は多いはずなのに、国会は、スフィア基準にそった避難所などより、カジノ法案を優先…。
前財務次官のセクハラ発言についても、麻生財務大臣は5月14日に「おわび申し上げる」とは言ったものの、それ以前は「はめられた可能性」について「否定できない」、「セクハラ罪という罪はない」など、権侵害であるセクハラの深刻さを否定しようというがごとき発言を繰り返した。にもかかわらず、大臣のポストのままだ。
ギャンブル依存症を拡大するおそれのあるカジノ法、家族が過労死した遺族たちの懸念をよそに成立した高度プロフェッショナル制度を含む働き方改革法。バルネラブルな人々の目線での政治がほしい。依存症になりかねない人々、過労死まで追い詰められかねない人々、セクハラに声をあげにくい人々、トイレを我慢しているうちに健康を損なう被災地の女性たちetc.の目線に立った政治。それこそ、政治だろうに…。