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UK SAMBA~イギリスのお産事情~ 第8回「脱衣健診はいけんし、違憲!」〜学校から始まる医療の支配〜

おざわじゅんこ2024.09.30

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藪からスティックになんですが少し前に学校脱衣健康診断(以下学校健診)が話題でしたね。こちら、ドンピシャ#MeToo案件ですよね。

文科省からのお知らせ
2024年1月文部科学省初等中等教育局健康教育・食育課長は児童生徒等のプライバシーや心情に配慮した 健康診断実施のための環境整備について通知を出しました。 (参照)
児童生徒とその保護者が健康診断に対し不安・不満を持っていることを受けての通知です。

健康診断ってなんだろう
そもそも健康診断とは一体なんでしょう。集団健康診断は近代植民地主義が台頭し軍事化が進むなかたくさんの国で始められました。日本軍の徴兵制度ではプライバシーのない場所での性器の検査も行われていました。意図的に屈辱感を与え尊厳を奪い、性を武器にする、残虐な日本軍の最初の工作なのかしら。(参照)

ひとのからだを並べて調べて測って甲乙つける、それは人間をモノ扱い・動物扱いしているから起こること。機能を調べるのは兵隊として役に立つかどうかのチェックです。戦前は赤ちゃん審査会なるものがあり、そこではより体重が重い乳幼児を「誉れの赤ちゃん」と呼んだり、乳幼児に優劣をつけることがまかり通っていました。(参照)

戦後も学校で健康診断が続けられた理由はいろいろです。公衆衛生には市民の健康の向上と同時に身体を管理し情報を利用する、という魂胆があります。個人個人の不調や心配に応える医療ではなく全体を調べて傾向をみる、つまり一人一人の人間が数として見られています。

現在わたしが暮らすイギリスでも、小学1年生と6年生の児童の身長・体重が学校で測定されています。着衣です。保護者は、前もって理由含む説明を書面で受け、その測定を許可するかどうか、意思表明する機会があります。こちらでもかつては日本のような内科健診もあったそうですが80年代には終わったと聞きます。(参照)現代の日本の学校脱衣健診のことを話すと、こちらの友人はとても驚きます。

さて、2024年の日本の学校健診。いまでも肯定的に、もしくはあまり批判なく続いているようです。学校健診ではどのような疾患を見つけることが出来ているのでしょうか。心疾患や側弯症、皮膚状態のスクリーニングと多岐にわたるようです。何をスクリーニングしているかの説明は出来ているかもしれません。しかし実際にその疾患の情報や、検査行程、異常が見られた際の治療のオプション、治療の効果などの説明は保護者にも生徒本人にもされている様子がありません。

からだのことを調べるときは、結果によって介入が変わるときのみ、その検査が提供されるべきでしょう。たとえば私たちが風邪をひいているとき体温を測るとすれば、もし高熱だったら解熱剤を飲むなり医療にアクセスするなりなにか次の段階を考えているからでしょう。結果がどうであれ何もするつもりがないときに調べることには意味はありませんよね。

脱衣にこだわる理由もいろいろあるようです。学校健診は脱衣ですると虐待を見つけられる、とまことしやかに言われます。しかし、長岡京市の一般質問によると2022年までの5年間で学校脱衣健康診断の結果新規の虐待発見件数は0だそうです。(参照)

そもそも家庭で虐待があるとき、身体的な虐待によるあざやキズがあらわれるまえに、精神的もしくは言葉での虐待が子どもの精神を追い詰めます。教育現場で、虐待は身体的怪我よりもまず子どもの精神的トラウマ、つまり言動の変化や注意力の低下などから見えるものです。(参照)

また、「より正確な診断のため脱衣が必要」ともよく聞きます。(参照)着衣と脱衣で診断に違いが出る、とよく聞く割にはその違いが数値化されたデータは見当たりません。

相次ぐ医師による性暴力事件
わたしは岡山出身なんですが2021年に開業医の男が性犯罪(盗撮)の疑いで逮捕されました。その際、学校健康診断の様子をペン型隠しカメラで盗撮していたことが分かり男は有罪に。(参照)
以降、岡山県下の全学校健康診断は着衣でなされているそうです。

つまり岡山では2021年までの脱衣での健康診断と2021年以降の着衣健康診断で診断件数に違いがあるのかが比較できる絶好のチャンスです。保健課などの行政は脱衣と着衣の健診結果の比較をする必要があります。

学校での健康診断では子どもの安全を完全に守ることは不可能です。(参照1)(参照2)この岡山の事件がありながら他県ではまだ脱衣健康診断が続いていることは驚きです。

学校保健安全法という法律が1958年に制定されています。学校環境の安全と児童生徒職員の健康保持促進が目的の法律です。学校安全計画の策定などと同時に児童生徒等の健康診断の項目があり毎年健康診断を行うことが義務付けられています。(参照)
性暴力被害が出続けているのに学校健康診断が脱衣で続いている、これは、この安全を守るための法が侵されているとしか言えません。ちゅうかこの安全法ってのがなんかしらん個人を尊重してなくて違憲な予感。

子どもの意思の尊重
学校・教育の場で子どもの意思が尊重されないことが通常化していることは、まったく由々しき事態。君が代斉唱、国旗掲揚の強制、ブラック校則、丸刈り校則などと同じく、権力に従う自分の頭で考えない大人を作るための装置です。(参照)

本来、教育とはなんでしょう。個人の権利、一人一人のからだは己だけのものであり、自分がしたいことだけをする権利がある、ということを教えるべきでしょう。(参照)しかし現在の学校は子どもに人権を教えているでしょうか。人権を教えるどころか実際には子どもの自己決定権は日常的に無視され奪われています。

身体的自己決定権の喪失がその後の産科医療でも繰り返される
そのようにして大人になった私たち。自分のからだに起こることを誰かに決められても異論を唱えない人間になってしまいますよね。医療の言うことをホイホイ聞いてしまう、その表れが産科医療に多く見られます。参照.P38-39)

日本の産科医療で特徴的なものの一つが「内診」です。内診とは女性器の中に医療者が(清潔な手袋をはめた)指や超音波器具などをいれ、妊娠中や出産時に子宮口の変化や妊娠の経過を見るために提供される医療介入です。
日本出身の女性と話していて気になるのは内診をしょっちゅうされていること。そして内診されてはいるものの、その診察の結果を知らされていない、もしくはなぜ内診をされたのかその理由も知らない人が多いことです。また、医療者が内診をする理由も、エビデンスに基づいているものでなくただの慣例であることが多く衝撃です。
内診は、理由なく慣例でされるべきものでしょうか。誰かの性器に自分以外のだれかが触れることは明確な合意・許可があるときのみ、起こるべきです。性的な関係のときでもそうです。
医療者と医療利用者の関係を対等にすることは簡単ではありません。力関係が不均衡だからこそ医療には明確な説明と情報に基づいた許可(コンセント)が必要です。理由の知らされていない、許可していない医療を与えられることは、受け手にとっては暴力にもなり得る。産科暴力、産科医療で起こることはすべて性暴力になり得る、ということの所以です。

自分のからだは自分のもの。学校健康診断、学校という場所で医療という名のもとにからだの自己決定権を奪われた子どもは、その後の人生でおのれのからだをどうやって守っていけるでしょうか。また、自分以外の人のからだに対する尊重や境界・バウンダリーをどうやって理解できるようになるでしょうか。
トラウマと暴力の連鎖を断ち切るために、自分と周りの人を傷つけ続けないために、必要な医療を必要な時にだけアクセスできる社会にしたいです。こちらの素っ頓狂な学校脱衣健康診断は海外メディアでも取り上げられとります。(参照)

2023年夏、イギリスのテレビ局BBCがジャニーズ等芸能界の性搾取を扱いました。(参照)こちらは日本で性暴力がいかに蔓延しているかを国際社会に知らしめ、国連人権委員会ワーキング・グループ「ビジネスと人権」でも取り上げられるきっかけになりました。(参照)とはいえメディア含む芸能ビジネスの反応はひどい。国際社会からの注目なんてへっちゃら、そんなもの鼻で笑うかのようですよね。ちゃちな救済もどきでごまかし、ビジネス内の性暴力を止める気などさらさら無いとしか思えない。声を上げた被害者が社会から苛烈なバッシング・二次加害を受けています。(参照)

性暴力は世界中で起こっています。被害者がその場で声を上げるのが困難なとき、声を上げても消されてしまうとき、わたしたちは世界とつながって立ち上がることができます。いままで立ち上がってきた数々の性暴力被害者と一緒に、これからの世代が同じような扱いを受けないために、うちらも声を出しましょう〜。

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